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プログレおすすめ:Spock’s Beard「The Oblivion Particle」(2015年アメリカ)

公開日: : 最終更新日:2015/10/04 2015年, アメリカ, ヴァイオリン, シンフォニック, メロトロン ,


Spock’s Beard -「The Oblivion Particle」

第153回目おすすめアルバムは、アメリカのシンフォニック系のプログレッシブ・バンド:Spock’s Beardが2015年8月21日に発表した12thアルバム「The Oblivion Particle」をご紹介します。
Spock's Beard「The Oblivion Particle」
Spock’s Beardは、1990年代に、Neal Morse(ボーカル、ギター)とAlan Morse(ギター)の兄弟を中心にアメリカで結成されたバンドです。

2002年に、Neal Morseはバンドを離れ、イギリスのプログレッシブ・バンド:UK、Asiaに続くスーパーバンドとも謳われるTransatlanticを結成しますが、いっぽうで、Spock’s BeardはAlan Morseが残りバンドを存続し続けます。

当アルバム「The Oblivion Particle」は、2013年発表の11thアルバム「Brief Nocturnes and Dreamless Sleep」に続くアルバムで、Ted Leonard(ボーカル)、Alan Morse(ギター、ハープ、バンジョー、エレクトリック・シタール、マンドリン)、Dave Meros(ベース、ボーカル)、奥本 亮(Ryo Okumoto)(キーボード)、Jimmy Keegan(ドラム)に代わり、の5人編成に、KansasのDavid Ragsdaleがヴァイオリン奏者としてゲスト参加してます。

その音楽性は、 プログレ5大バンド:YES、GenesisやGentle Giantsなど、古き良き1970年代のプログレッシブ・ロックが持つエッセンスをふんだんに感じさせてくれるアンサンブルに、メンバーの大半がボーカル(ドラムのJimmy Keeganがメイン・ボーカルの楽曲も有り)を取るぐらいに、コーラスワークも素晴らしく、Kansasに代表させるアメリカ・プログレハードのメロディアスで大らかなポップさも大切にしている点と思います。より明朗さや爽やかさでは、Neal MorseによるTransatlanticも意識せずにはいられなくなりますが、

前作から加わったTed LeonardとJimmy Keeganがバンドにもたらすクリエイテビティとともに、音楽に新鮮さを失うことなく、進化し続けるバンドのアルバム
として、聴きたいアルバムです。

楽曲について

冒頭曲「Tides of Time」は、ドラマチックに奏でるオルガンとギターによるフレーズに魅了されるオープニングが印象的な楽曲です。アンサンブルを終始リードするオルガンに、トリッキーなシンセのソロ、アコースティック・ギターにメロトロンのパート、テクニカルなギターのフレーズにオルガンとギターのオブリガードのパートなど、叙情さとメタル系のエッセンスを織り込みながら、躍動的に聴かせてくれます。ピアノによるドラマチックさ、メタリックさもありながらもミステリアスさもある前作の冒頭曲「Hiding Out」(アルバム「Brief Nocturnes and Dreamless Sleep」収録)よりはいくぶんメロウでありながらも、素敵なアプローチと思いました。

2「Minion」は、同国のプログレッシブ・ロックバンド:BostonやKansasにも特徴的なコーラスワークではじまり、そのコーラスワークが楽曲の随所でキーとなり、テクニカルなギターをメインとしたアンサンブルが展開します。3分20秒前後のベッドを歪ませたシンセの短いフレーズに続き、リリカルなピアノが讃え、刹那さ溢れるヴァースの唄メロがアクセントとかと思いきや、そのヴァースの唄メロが、前半部のヴァースにシンクロするかのようなコード進行の妙には、当バンドが持つ独特のメロディセンスを感じさせてくれます。

3「Hell’s Not Enough」は、ミュート・ギターを交えながらアコースティック・ギターとメロトロンによるミドルテンポなアンサンブルが聴ける楽曲です。切々とミニマルに繰り返される第1ヴァース、しっとりと解放された第2ヴァース、激高するかのような第3ヴァースなど、Ted Leonardのハスキーでハートフルなボーカリゼーションの妙を存分に感じさせてくれる唄メロのメロディラインを聴くことが出来ます。静(第1ヴァースと第2ヴァース)と動(第3ヴァース)でメリハリを聴かせたアンサンブルの展開も含め、心に何度も問いかけるフックがふんだんに盛り込まれており、素敵な展開ですね。

4「Bennett Built a Time Machine」は、前曲3「Hell’s Not Enough」よりもアコースティカルさ、よりカントリータッチもある展開の楽曲です。ボーカルを取るドラムのJimmy Keeganの声質も合い間って、アメリカのネイティブさ、大らかさを強く感じさせてくれますが、ただそれだけで終わらせない。3分10秒前後からのメロトロンもまじめ、シュールでミステリアスな空気感を醸し出すパートをアクセントにしつつも、サイレンのように木霊するムーグ・シンセにオルガンのパートを挟み、前半部の大らかさのある展開に繋げる妙が堪能出来ます。

楽曲「Submerged」(前作「Brief Nocturnes and Dreamless Sleep」収録)にも垣間見せたいくぶんエキゾチックなエッセンスのある5「Get Out While You Can」に続き、6「A Better Way to Fly」は、Gentle Giantsを彷彿とさせる複雑なリズムを疾走感とともに聴かせる前半部に、ミステリアスなムーグ・シンセのソロの中間部を挟み、1960年代に活躍したThe Beach Boysを彷彿とさせるコーラスワークから尊厳なコーラスワークへと移行しクロージングする後半部まで、アルバム中盤のハイライトと感じさせてくれる展開が聴けます。

メヌエットのようなピアノの独奏にベースのフレーズが並奏するオープニングが印象的な7「The Center Line」は、クラヴィネットによる複雑なフレーズのリフに続き、クリーントーンを活かしたアンサンブルに、大らかで快活な唄メロのメロディラインのヴァースが素敵な楽曲です。4分30秒前後にトーンダウンさせ、リフレインとともにテンポアップさせていくミニマルなムーグ・シンセもアクセントに、いくぶん憂いを帯びながらも、コーラスワークも含め、どこまでも飛翔していくか如く、流麗な展開を堪能出来ます。

8「To Be Free Again」は、ストリングスも交えた音色の多彩さを繊細に聴かせるメロトロンが印象的な楽曲です。メロトロンにハードエッジの効いたギター、オルガンも含むメインのアンサンブルは、変拍子やリズムチェンジを交えながらも、他楽曲とは異なり、1つのテーマとなるメロディラインに一貫性を強く感じさせてくれます。5分30秒前後からの静寂さあるパートを何度となく聴けば聴くほど、その想いは強くなっていきます。多種多様なアプローチで魅せてくれる印象がありながらも、スキルフルな場面展開のスムーズさには舌を巻かずに入られません。

最終曲「Disappear」は、鳴り響くオルガンとアコースティカルなギターのストローク、伸びやかでメロディアスなギターのフレーズがアルバムのクロージングをいやがおうにも感じさせてくれるオープニングでありながらも、ヴァース直前に聴かれるアメリカのプログレハードの重鎮:KansasのDavid Ragsdaleによるヴァイオリンの旋律が仄かにも抒情性を讃え、緩やかに幕を上げます。贅沢とも云えるオープニングに、刹那さ溢れる唄メロのメロディラインと、輪唱とハーモニウムをうむコーラスワークが心地良く展開するヴァースは、周桑感を煽るようなムーグ・シンセによる性急なパートや独唱によるアカペラのパートを挟みつつ、メロディアスなギターのパートに導かれ、再度、クロージング直前で高らかに唄い上げられ、ピアノのフレーズとともにしっとりとクロージングします。

前作アルバムよりもピアノの音色の比重が少な目の印象にも、メロトロン、オルガンなどのヴィンテージな楽器が醸し出す1970年代のサウンド・メイキングは健在のままに、大らかさと明朗さやエキゾチックさのある唄メロのメロディラインは研ぎ澄まされ、サウンドのクリエイティビティが上がった素敵なアルバムと感じました。特に、どの楽曲もメインのパート直前に共通しうる「メインのパートに戻る起伏に富むスキルフルなアンサンブル」は、次の楽曲へ聴く心地を後押しするような心躍らせる爽快さを感じさせてくれるんです。

[収録曲]

1. Tides of Time
2. Minion
3. Hell’s Not Enough
4. Bennett Built a Time Machine
5. Get Out While You Can
6. A Better Way to Fly
7. The Center Line
8. To Be Free Again
9. Disappear

コーラスワークやテクニカルさのYes、メロウさやダイナミックさのGenesis、より複雑さのあるコーラスワークやリズムのGentle Giantsなどが好きな方におすすめです。また、アメリカらしさのある大らかな唄メロのメロディラインには、初期Neal Morse在籍時の名作5thアルバム「Ⅴ」に心を馳せる方にも、Transatlanticを好きな方にもおすすめです。

当アルバムを好きになった方には、同メンバーで制作した前作11thアルバム「Brief Nocturnes and Dreamless Sleep」もおすすめです。前作アルバムで展開されたアレンジに留まらず、より拡げていこうとする姿勢が強く感じると思います。

アルバム「The Oblivion Particle」のおすすめ曲

1曲目は、6曲目の「A Better Way to Fly」
メロディラインやリズムの展開も含め、個人的にアルバム中で最も起伏さあるプログレッシブな展開が愉しめると感じたからです。特に、7分前後のコーラスワークの妙は、他楽曲と異なりThe Beach Boysをふと脳裏に思い浮かべてしまいました。ただ、それも束の間に感じたかのように、やりばのない想いが重なるかのようにリフレインとなるマイナー調のコーラスワークへ移行し、気が付けば、ただただ心が掻き毟るかのような場面の展開が素晴らしいです。

2曲目は、3「Hell’s Not Enough」
コーラスワークよりもアンサンブルの比重と、巧みなボーカリゼーションによる静と動を繰り返すだろうヴァースの唄メロの3つのパートが素敵と感じたからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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