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プログレおすすめ:Midlake「The Courage Of Others」(2010年アメリカ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2010年‐2013年, アメリカ, ヴァイオリン, フォーク, フルート


Midlake-「The Courage Of Others」

第186回目おすすめアルバムは、アメリカのプログレ・フォーク系のバンド:Midlakeが2010年に発表した3rdアルバム「The Courage Of Others」をご紹介します。
Midlake「The Courage Of Others」

Midlakeは、2000年に、アメリカはテキサス州のデントンにて、コンポンザーのTim Smith(ボーカル、アコースティック・ギター、フルート、リコーダー、ピアノ、キーボード)、Eric Nichelson(アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、12弦ギター、オートハープ、パーカッション)、Eric Pulido(アコースティック・ギター、12弦ギター、ダルシマー、オートハープ、パーカッション)、McKenzie Smith(ドラム、パーカッション)、Paul Alexander(ベース、ファゴット)の5人でThe Cornbread All-Starsというバンドを結成したのが始まりです。

2001年発表の1stアルバム「Bamnan and Slivercork」では、1970年代の様々な音楽ジャンルの影響も豊かな音楽性を提示します。さらに、コンポンザーであるTim Smithは、1970年代のシンガー・ソングライター(アメリカのNeil YoungやJimmie Spheeris、カナダのJoni Mitchellなど)やイギリスのバンド:Fleetwood Mac、アメリカのトリオ:Crosby, Stills & Nashなど、1960年代末から1970年代初頭にかけて活躍したアコースティック主体のアーティストを聴き、その影響下で2006年には2ndアルバム「The Trials of Van Occupanther」を発表しています。

バンドのサウンドの特徴は、複数人で奏でるアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、12弦ギターを中心としたアンサンブルです。Tim Smithによる憂いを帯び願いを込めるように唄うかのようなボーカリゼーションとフルートやファゴットなどの木管楽器をアンサンブルに加えたサウンド・メイキングに加え、メジャー調の楽曲では、いわゆる「木漏れ日フォーク」、マイナー調の楽曲では、特に1970年代のプログレッシブ・ロックやサマー・オブ・ラブ期のアート・ロックを下敷きにしたプログレ・フォーク系のエッセンスを感じさせてくれます。

当アルバムでは、ギタリストとしてMax Townsley、ハープシコードにJesse Chandler、ヴァイオリン奏者にFiona Briceを迎えて、マイナー調の楽曲にサウンドとしての奥行きと幅や彩りを加え、
これまでで最も憂いを帯び琴線に触れる楽曲が多いアルバム

に仕上げられていると思います。当アルバムを最後に脱退してしまう全楽曲のコンポンザーであるTim Smithによる一人称が中心のリリックと、アコースティカルで繊細なバンドのアンサンブルから醸し出す詩情溢れるラスト・メッセージに耳を傾けていきましょう。

楽曲について

12弦ギターによるリリカルで綴れ織りのフレーズに導かれはじまる冒頭曲1「Acts of Man」には、Tim Smithによる唄メロのメロディラインとうすらうすらと「木漏れ日フォーク」からより深淵へと緩やかに落ちていくようなアンサンブルにただただ身を委ね聴き入ってしまうタイムレスな感覚を憶えます。そう、1970年代のシンガー・ソングライター隆盛期に溢れていたセンシティブさが聴き取れ、複数のアコースティック・ギターや12弦ギターと、カウンターメロディで引き締めるベース、さらに、中間部寂しげな旋律を奏でるフルートのソロやハープシコードが彩るアンサンブルは憂いを帯びてどこまでも切なく儚さを讃えてます。

続く2「Winter Dies」以降も、まさに「木漏れ日フォーク」的な清涼さも感じる5「Fortune」を除けば、ほぼ全曲で儚さにうつろい途方に暮れてしまうぐらい胸が苦しくなる想いでいっぱいになってしまうサウンドスケープを魅せてくれます。

また、3つの楽曲(7「Children of the Grounds」、8「Bring Down」、9「The Horn」)ではエレクトリック・ギターの比重も高く、その儚さ溢れる想いが刺々しさを増したイメージで、10「The Courage of Others」ではサイケデリックさ溢れる後半部のパートで混沌寸前のイメージなど、アルバム後半部では、より色彩を拡げた楽曲が聴けます。

そして、最終曲11「In the Ground」でも当アルバムほぼ全篇で感じるサウンド・メイキングがクロージング直前の1音でも綴られ、終わることない寂寥さや周桑さに苛まれていくでしょう。

アルバム全篇、ほぼ複数のギターやハープシコード、フルート、リコーダーをアンサンブルに、1970年代のリリカルにもセンシティブさに心の脆さを感じさせてくれる感覚をプログレ・フォークのエッセンスで纏め上げ、どこまでも儚さ溢れる唄メロのメロディラインで綴られる楽曲で占められてます。世の中には、オルタテナティブ・ロックやポスト・ロックをはじめとし、憂いに満ちたアルバムは数多く溢れています。もちろん当アルバムもその類の1枚と思いますが、個人的には、イギリスのTravisが2012年に発表した4thアルバム「12 Memories」をはじめて聴いた時と同じくらいの衝撃を受けました。

歌詞は一人称(私)が多く聴き入れば途方に暮れ独り想い詰めてしまうかもしれませんが、聴き終えれば独り同じ気持ちにも心救われたとも感じられる琴線に触れる素敵なアルバムです。

[収録曲]

1. Acts of Man
2. Winter Dies
3. Small Mountain
4. Core of Nature
5. Fortune
6. Rulers, Ruling all Things
7. Children of the Grounds
8. Bring Down
9. The Horn
10. The Courage of Others
11. In the Ground

当アルバムを最後に脱退してしまうコンポンザーのTim SmithがJethro Tull、現メンバーは5大プログレバンドの1つ:Pink Floydなど、イギリスのプログレッシブ・ロックの影響があると語っていますし、フルートやファゴットなどの木管楽器をアンサンブルに加えたサウンド・メイキングから、イギリスのMellow Candle、Renaissance、Keith Cross & Peter Ross、Heron、Roger Morris、Mighty Baby、Jimmy Campbell、カナダのHARMONIUM、ドイツのCarol Of Harvestなどの英国情緒溢れるプログレ・フォーク系のアンサンブルが好きな方におすすめです。

また、プログレッシブ・ロックの中でも、プログレ・フォーク系をはじめて聴くという観点では、たとえば、イギリスのロックバンド:Winshbone Ashのようにプログレ・フォーク系のみならず、複数のギターの紡ぎ合いが好きな方にもおすすめですし、1970年代のシンガー・ソングライター(アメリカのNeil YoungやJimmie Spheeris、カナダのJoni Mitchellなど)やアメリカのトリオ:Crosby, Stills & Nashなどのセンシティブさや、オルタナティブ・ロックやポスト・ロックで云う美メロを好きな方にもおすすめです。

アルバム「The Courage Of Others」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲1の「Acts of Man」
アルバムの冒頭を飾り、アルバム全篇のカラーを象徴する楽曲と思います。楽曲の中で「木漏れ日フォーク」的な感覚をちらほらと聴ける瞬間もあるのですが、幾重にも重なるリリカルなフレーズによるアコースティカルなアンサンブルのセンシティブさが仄かに幻想さを醸し出す素敵だからです。もしもアナタがそのまま続けて2「Winter Dies」へ雪崩込むように聴き入ってしまえば、きっと当アルバムや当バンドのクリエイティブさに一気に虜になってしまうだけの魅力が包まっている楽曲です。

2曲目は、9曲目の「The Horn」
当アルバムの楽曲で最もエレクトリック・ギターによるアンサンブルの比重が高く、同時に終始奏でられるリコーダーの寂しげな旋律とともに憂いを帯びた唄メロのメロディラインがより痛々しく伝わるからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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