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プログレおすすめ:milleluci「official Bootleg demo」(2009年日本)


milleluci – 「official Bootleg demo」

第33回目おすすめアルバムは、日本のmilleruciが2009年に発表した1stアルバム「official Bootleg demo」をご紹介します。

milleluci「official Bootleg demo」
milleluciは、声優もされている女性ボーカルの氷青さん(hyosei)、劇楽などで楽曲提供されているキーボード&プログラミングの松本俊行さん(Toshiyuki Matsumoto、DJもされているドラム&プログラミングの松本浩一さん(Koichi Matsumoto)のトリオ編成のバンドです。

昭和の古き良き歌謡曲やフォークをベースにした音楽に、アナログシンセやメロトロンの使用や、哀愁を帯びた唄メロなどの1970年代のプログレなエッセンスをサウンドに取り入れ、歌詞にも昭和の歌謡曲やフォークがふんだんに盛り込まれ、融合したところにmilleluciの音楽が形成されているそうです。

バンドの名称「milleluci」はイタリア語で千の光、輝きなどの意味しているそうで、バンドの名称やライブでのパフォーマンス(松本浩一さんのドラミングと氷青さんのカウベルのリズムによる陶酔感)からもイタリア・プログレを感じるかもしれません。

楽曲について

冒頭曲「忘れられた少年」は、鈴の音から柔らかなピアノの音色が響くイントロから始まります。抑制を効かせ、感情を堪えたように唄う氷青の唄メロを聴いてしまうと、何度でも自分の心の奥底にくすぶる感情に触れてしまうんです。1分10秒過ぎからドラムのフィルインにより響き渡るメロトロンの音色が聴こえてくると、もう溜息をついてしまう。

「忘れられた少年に会いに行きたい一度だけ 子供の頃の自分に教えてほしいことがある」

このサビの松本浩一さんによる歌詞の一節は「普遍」という言葉が似つかわしく、どの時代にも共鳴する人は多くいるんじゃないかと思うんです。
自分が小さな頃に成し遂げられなかったことに後悔を感じ想い出せば、「忘れられた少年」は等身大の自分が描ききれなかった理想の自分の姿として捉えてしまうんです。実際に会えることのない「忘れられた少年」に会えたら、後悔となる次元(成し遂げられなかったこと)を子供の頃の自分に助言して欲しくて、そして、その後の次元が後悔がなく過ごせていたら・・・、現在どのように歩んでいたんだろうと。
その歌詞に色を添えるように、ピアノ、メロトロン、フルートによるバッキングから、シンセのソロとクロージングで魅せる七色のキーボードの松本俊行さんの演奏や、男性ではなく女性である氷青さんが唄われることで心に響いてしまうんです。この曲がmilleluciを好きになるきっかけでした。

他にも詩的な観点でいうと、例えば、3「蛍舞う頃」は男性の松本浩一さんではなく女性の氷青さんが作詞したのではないかと思うぐらい歌心にマッチングしていて、詞を綴った松本浩一さんのセンスと、唄心を表現しきった氷青さんのセンスは、ライブで実際に会ったことがあるからこそよりいっそう溜息をついてしまうんです。特に氷青さんがそれまでの抑制された声から少し張り上げて唄われる「名前・・・」の瞬間は、声優という側面が分かっていながらも素敵な瞬間です。

6「曖昧な記憶」は歌詞カードを見ずに聴いていると、1分30秒で表現される「ボク」により男性の視点で捉えた歌詞感と分かれば、何故か戸惑いを隠せくなってしまった楽曲。「ボク」と「キミ」。楽曲のタイトルともなる「曖昧な記憶」を表現する松本俊行さんと松本浩一さんのサウンドメイキングの妙も素敵に色を添え、個人的には1「忘れられた少年」と同様に「サウンドスケープ」を色濃く感じさせてくれるんです。

当アルバム中のスローな楽曲でも5「冬の別れ」は松本浩一さんのバスドラムの音の粒が際立ち聴こえたり、イントロのメロトロンの使い方がking Crimsonの初期楽曲をうっすら想起させてくれる印象的な楽曲。イントロのsus4。「アナタ」と「ワタシ」。当アルバムで最も悲しい歌詞感を表現するように、松本俊行さんの作曲センスとクロージング前のシンセソロも含め、少し痛々しさがあり、それでもノスタルジアを感じさせてくれる素敵なサウンドですよね。

最もヴォサノバ的なリズム感のある2「どうぞこのまま」は作詞作曲は丸山圭子さんです。少し明るめな曲調であり、氷青さんのボーカルも含め穏やかだが躍動する感じが伝わってきます。

少し声質を下げたボーカルの氷青さんとイントロから強めのシンセ音のリフを奏でる松本俊行さんが印象的な4「落ち葉のように」は、アルバムで最も躍動的な楽曲。ライブでは松本浩一さんのドラムも含め、音の迫力が素晴らしいんですよ。

アルバムの最終曲7「愁夏のスキャット」は2「どうぞこのまま」と同様に爽やかな楽曲で、サウンド感に、どことなく1980年代の初期のネオアコ感を個人的に感じさせてくれます。アルバムのラストに位置づけられることで、「儚さ」が漂うそれまでの楽曲を昇華させて、ホッと一息をつく瞬間でもあるんです。
スキャットパートは伊集加代さんによるもので、11PMという深夜番組のオープニングスキャット、ネスカフェゴールドブレンドのCMのスキャット、アルプスの少女ハイジの主題歌を歌われていた人で、さまざまなコーラスで数えきれないほどのセッションをされてきた日本のスキャットの女王です。ドラムの松本浩一さんがファンとのことで、楽曲にフューチャリングで参加して頂いたとのことです。

個人的には、また冒頭曲1「忘れられた少年」を聴き出逢いたい。そう思わせてくれるんですよね。

[収録曲]

1. 忘れられた少年 
2. どうぞこのまま ▼
3. 蛍舞う頃
4. 落ち葉のように
5. 冬の別れ
6. 曖昧な記憶
7. 愁夏のスキャット

全楽曲は、作詞:松本浩一、作曲:松本俊行、編曲:松本浩一・松本俊行です(一部:▼:作詞/作曲:丸山圭子)

メロトロン、フルートの音色がプログレのエッセンスを感じさせてくれる。
歌詞の世界観は儚さ溢れるけれども、全楽曲に感じる「郷愁感」(=ノスタルジア)に、どことなく「音楽の避暑地」、ノスタルジアを個人的に思うんです。
昭和の歌謡曲の曲調が好きな方、そして、メロトロン、フルートの音色などによるプログレ要素でも抒情性やセンチメンタリズムなどが好きな方にはおすすめです。

アルバム「Official Bootleg Demo」のおすすめ曲

1曲目は冒頭曲「忘れられた少年」
作詞担当の松本浩一さんによる歌詞が心に沁みこんでくるんです。「忘れられた少年」が自分の小さい頃にもシンクロしてしまう。当アルバムで最も「懐かしさ」を感じてしまうからです。
音楽SNSであるmyspaceで一聴した時、すぐにファンになってしまいました。ライブでは何度か最終曲に位置づけられ、この楽曲が最も好きな自分にとって、ライブで聴くまでは心を馳せて、演奏が終わると次のライブまで寂しさを感じてしまうんです。

2曲目は6曲目「蛍舞う頃」
メンバー3人による抑制されたバンドの一体感、表現力の在り方を強く感じてしまうからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

CDの購入について
現在、当アルバムはライブ会場か通販のみで発売となっています。
ご購入などの問合せ先は、下記いずれかのメンバーの方のホームページへアクセスしてみて下さいね。
▼ボーカルの氷青さんのホームページ

もしくは、
▼ドラム&プログラミングの松本浩一さんのFACEBOOKへ。
https://www.facebook.com/sonicballoon?fref=ts

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