プログレおすすめ:Kotebel「Concerto For Piano And Electric Ensemble」(2012年スペイン)
Kotebel -「Concerto For Piano And Electric Ensemble」
第233回目おすすめアルバムは、スペインのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Kotebelが2012年に発表した6thアルバム「Concerto For Piano And Electric Ensemble」をご紹介します。
Kotebelは、1999年に、スペインにて、ベネズエラ人:Carlos Plaza(キーボード、ベース、パーカッション)を中心に、César García Forero(ギター)、Omar Acosta(フルート)、Carolina Prieto(ヴォイシング)の4人で結成したバンドです。
1stアルバム「Structure」の発表以降、クラシックとロックの融合によるアルバムを制作し、ロック的なアプローチからクラシカルなエッセンスを加えたり、クラシック的なアプローチからアトモスフェリックさなど、発表するアルバムごとにさまざまなアプローチを試みています。
その音楽の特徴は、バンドの中心メンバーであるCarlos Plazaのロマン派やモダン・クラシックの作曲家(ラフマニノフ、ラベル、ドビッシィーなど)や、Tony Banksへのリスペクトによる影響も大いにあり、ピアノの旋律も際立つフュージュン系のエッセンスを含むシンフォニック系のアンサンブルです。当初は、イギリスの5大プログレバンド:Genesisやプログレッシブ・バンド:The Enid、Camelなどのややソフトなシンフォニックさやクラシカルさを彷彿とするアンサンブルでしたが、フルート奏者として叙情さの一端を担っていたOmar Acostaがバンドを脱退以降、即興さを感じえる殺伐としたアグレッシブな面にKing Crimsonやハンガリーのプログレッシブ・ロックバンド:After Cyingを想起させたり、土地柄もあり、スペイン特有のムーア音楽やスパニッシュ・ギターによるパートも感じえます。
当アルバム「Concerto For Piano And Electric Ensemble」は、前作2009年に発表された5thアルバム「Ouroboros」から3年振りのアルバムで、Carlos Plaza Vega(キーボード)を中心に、Carlos Franco Vivas(ドラム、パーカッション)、César García Forero(ギター)、Jaime Pascual Summers(ベース)、Adriana Nathalie Plaza Engelke(グランド・ピアノ)の5人編成に、Fran Magus(サックス)をゲストに迎え、制作されています。
終始メロトロン・シンセが不穏な空気を醸し出し、ピアノがクラシカルで無機質さな旋律と、ギターとともに凶暴さや殺伐としたアグレッシブなアンサンブルが聴けるアルバムです。
楽曲について
冒頭曲1「Concerto For Piano And Electric Ensemble」は、4つのパートから成り、楽曲タイトルに相応しい約43分の大作です。
「I. Adagio Maestoso」は、メロトロン・シンセによる旋律がたゆまなく不穏さを煽り、グランド・ピアノがメカニカルにもミステリアスな旋律を奏で、随所でオルガンやギターの旋律が凶暴さで迫ってきます。「II. Lento Cantabile」は、ピアノに寄り添うか如くアコースティック・ギターによるフレーズとが醸し出す抒情さのパートやサックスやスパニッシュ・ギターが加わったアンサンブルでのエキゾチックさやパンキッシュさのパートを途中に盛り込みつつも、終始ピアノの旋律がクラシカルさを醸し出しエレガントさを感じます。「III. Vivo Scherzando」は、「I. Adagio Maestoso」と同様にメロトロン・シンセの旋律が醸し出す不穏さとピアノがメカニカルにもミステリアスな旋律を奏で、ギターやピアノがミニマルにも変拍子を多用した旋律で迫る冒頭部から、「II. Lento Cantabile」と同様にピアノの旋律がクラシカルな中間部を経て、ギターのヒステリックなフレーズとともに、オルガンやピアノが躍動的な旋律を加えていきます。「IV. Allegro Moderato」は、メヌエット風のピアノの旋律に、やはり、ギターのヒステリックなフレーズ、オルガンとシンセサイザーのエキゾチックなフレーズ、シンセサイザーによるサイレンを想起させるサウンドと哀愁さあるギターをメインとしたアンサンブルなど、他パート以上にドラスティックな展開で聴かせてくれます。
2「The Flight Of The Hipogriff (Part 1)」では、サックスを交えて、1「Concerto For Piano And Electric Ensemble」以上に、アグレッシブで凶暴さあるジャズロック系のアンサンブルをドラスティックに聴かせてくれます。
3「Dance Of Shiva」では、メロトロン・シンセに、木琴の音色によるミニマルなフレーズなど、アルバム中、最もフックとなるメロディ感は全くなく、ただだたミステリアスさを感じる楽曲です。
最終曲4「The Flight Of The Hipogriff (Part 2)」は、メロトロン・シンセにパーカッシブなリズムで幕を上げ、ベースラインも豊かに、他楽曲よりは全体的に大人しめに進行する楽曲です。
アルバム全篇、メロトロン・シンセが終始鳴り響くことで、近年では、King Crimsonの1995年発表のアルバム「Thrak」のアトモスフェリックさによる不穏さに溢れ、Kieth Emersonを彷彿とさせるテクニカルにも前のめりな旋律を奏でるピアノをメインとした室内楽風のアンサンブルや、オルガンやギターが加われば、第1期King Crimsonのアルバム「Lizards」のアンサンブルに形容されるアグレッシブさや凶暴さでのジャズロック系のアンサンブルを中心とした音楽を堪能出来ます。
King Crimsonがフリー・ジャズに傾倒していた時期で感じえた凶暴さや邪悪さ溢れるアンサンブルを、仄かにクラシカルさを醸し出しつつも、ピアノをメインとしたアンサンブルで堪能出来るアルバムです。
[収録曲]
1. Concerto For Piano And Electric Ensemble
– I. Adagio Maestoso
– II. Lento Cantabile
– III. Vivo Scherzando
– IV. Allegro Moderato
2. The Flight Of The Hipogriff (Part 1)
3. Dance Of Shiva
4. The Flight Of The Hipogriff (Part 2)
5. The Infant [bonus track]
なお、CDには、ボーナス・トラック「The Infant」が収録されており、ゲスト参加のサックスがアンサンブルに大きく関与したジャズ・ロックが聴けます。
不穏さやアグレッシブさがあるが、ピアノを中心としたジャズ・ロックが好きな方におすすめです。
ピアノは叙情さよりも無機質な旋律に溢れ、ギターが加わることで凶暴さ溢れるアンサンブルへと展開し、アンサンブル全体には、ほぼメロトロン・シンセの旋律が終始鳴り響いて不穏さを醸し出しているため、たとえば、第1期King CrimsonやハンガリーのAfter Cryingが好きな方におすすめです。
当アルバムを聴き、Kotebelを好きになった方は、前作2009年に発表された5thアルバム「Ouroboros」もおすすめです。
アルバム「Concerto For Piano And Electric Ensemble」のおすすめ曲
※インストルメンタルな楽曲がメインのため、ひかえさせていただきます※
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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