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プログレおすすめ:Karfagen「7」(2015年ウクライナ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/03 2015年, ウクライナ, シンフォニック, フルート, メロトロン


Karfagen -「7」

第167回目おすすめアルバムは、ウクライナのシンフォニック系のプログレッシブ・バンド:Karfagenが2015年9月15日に発表した7thアルバム「7」をご紹介します。
Karfagen「7」
当アルバムは、2014年発表の前作6thアルバム「Magician’s Theater」と同様に、Antony Kalugin(キーボード兼ボーカル)、Max Velichko(ギター)、Oleg Prokhorov(ベース)、 Kostya Shepelenko(ドラム、パーカッション)の4人のメンバーに、新たに女性ボーカルであるOlha Rostovskaを加えた基本5人編成で、バヤン奏者、オーボエ奏者、フルート奏者をゲストに迎えて制作しています。

バンド名のKarfagenは、栄光と知恵を意味すると同時に、過ぎ去った過去と予測出来ない未来の世界に向けて、終わりない旅を意味しています。キーボード奏者:Antony Kaluginが1997年にその名称に触れ、大学で勉学に励みながら、1998年にKarfagenとしてプロジェクトに着手します。その当時のメンバーは、ちょうど当アルバムでもバヤン奏者としてゲスト参加しているSergei Kovalev(アコーディオン、ハーモニカ)との2名だけでした。

結成から12年の月日を経て、2006年に1stアルバム「Continium」発表されます。以降、当アルバム「7」までに発表される数々のアルバムでは、東ヨーロッパのバンドが持つ唄メロのメロディアスさやオリエンタルさ持ちつつも、結成当初からのニュー・エイジ系やインダストリアル系にシンフォニック系が融合したサウンドから、幻想さのエッセンスも踏まえ、進化していきます。また、UnchildやHoggwashという別プロジェクトも並行し活動し続けているのですから、東ヨーロッパでも屈指のプログレッシブ・ロック系のアーティストといえます。

当アルバムでは、1stアルバム「Continium」や2ndアルバム「The Space Between Us」に感じえたシンフォニック系の比重も高い
サウンドスケープも豊かに幻想性溢れるアルバムの1枚

を愉しめると思います。

楽曲について

冒頭曲「Seven Gates」は、シングルカットもされた約28分にも及ぶシンフォニック系の大作です。SEなどを交えたサウンド・エフェクトに、男性によるナレーションと尊厳なオルガンが鳴り響くオープニングは、当バンドの1つの特徴ともいうべき、AdiemusやEnigmaなどのニュー・エイジ系と5大プログレバンド:Pink Flyodのサウンド・メイキングを想起させてくれます。2分20秒前後からの力強いギターのリフ、ミニマルなシンセのフレーズに、エレピやハモンドオルガン、メロトロンによるオリエンタル・ムードもたっぷりなアンサンブルは、ファンタジックなサウンドが大らかに拡がっていきます。

特に、8分前後からのメロトロンとバヤンがユニゾンで弾かれるパートでは、そのオリエンタルでいてマイナー調のメロディに耳を奪われがちですが、カウンター・メロディを辿るベースのフレーズなど、約11分のエスニックな舞踊の跳ねたリズムにリコーダーがリードし、オーボエやバグパイプの音色が絡み合うアンサンブル、14分以降、空間処理を活かし陰鬱な響きを拡げていくメロトロンの音色になど、様々なメロディのモチーフを入れ替わり様々な楽器が奏で紡ぎ合っていきます。

16分前後からのアコースティック・ギターのアルペジオとメロトロンのアンサンブルに、リコーダーがリードするパートでは、Genesis中期のSteve Hackettや、Mike Oldfieldを彷彿とさせるアンサンブル聴かせてくれてると感じていたら、18分30秒前後からは、Antony Kaluginによるボーカルのパートへと移行します。おそらくファンの方であれば、過去アルバムでもインストルメンタルな楽曲が多いことからも、腹から振り絞るようにも唄うボーカリゼーションの刹那さやファンタジックさ溢れるメロディラインには驚きを感じたに違いないかと思います。

途中翳りのあるパートや浮遊さを伴うパートなどを交えながらも、昇り詰めていくサウンドとハモンド・オルガンに包まれるクロージング直前の約3分間を聴き終える頃には、心にすっと温かみが溢れていきます。

2「Now and Ever」は、伸びやかなトーンのギターがリードしつつ、Antony Kaluginによるボーカルが聴ける楽曲です。エレピ、メロトロン、ピアノ、アコースティック・ギターをアンサンブルに交えながらも、ニュー・エイジ系のサウンド・メイキングにより、どことなくミステリアスさを漂わせたり、メランコリックな唄メロのメロディラインが印象的です。

3「Hopeless Dreamer」は、エレガントなピアノがリードし、メロトロンとのアンサンブルに、Antony Kaluginとともに、今作で新たに加わった女性のOlha Rostovskaによる男女混成ボーカルが聴ける楽曲です。Antony Kaluginがメインのパートを唄いつづけながら、時折、Olha Rostovskaがハーモニウムで加わるスタイルは、様々なモチーフのメロディ・パートがあることからも、1つの楽曲としての構成美を強く感じさせてくれます。

最終曲4「Alight Again」は、オリエンタル・ムードいっぱいにポリリズムなリズムなオープニングに、南米や熱帯雨林などジャングルの一端をサウンドスケープをさせてくれながらも、ヴァースでは、Antony KaluginとOlha Rostovskaによるファンタジックさ溢れる唄メロへとダイナミックに移行し、まさに、ニュー・エイジ系と幻想さあるシンフォニック系が行き交うサウンド・メイキングで聴かせてくれます。冒頭曲1「Seven Gates」と同様に、洗練されたサイケデリック/スペース系や男性のナレーションを交えつつ、壮大で浮遊さ溢れるパノラマが目の前に浮かぶようなサウンド・スケープに脳内は包まれながら、楽曲はクロージングを迎えます。

アルバム全篇、東欧ヨーロッパらしさ溢れるオリエンタルでメロウなメロディやリズムなどもアクセントに、ニュー・エイジ系や洗練されたサイケデリック/スペース系による浮遊さと、様々な楽器を豊富なメロディのモチーフを紡ぎ合うファンタジックなアンサンブルが表裏一体のように展開する様が印象的なサウンドです。また、従来にない男女混成ボーカルによるメランコリックなボーカリゼーションも交え、インストルメンタルのパートだけではない心豊かなサウンドスケープを感じさせてくれる素敵なアルバムです。

[収録曲]

1. Seven Gates
2. Now and Ever
3. Hopeless Dreamer
4. Alight Again

AdiemusやEnigmaなどのニュー・エイジ系、Steve Hackett在籍時のGenesisや、Drama期以前のYesを彷彿とさせるファンタジックさやダイナミックなシンフォニック系、5大プログレバンドの1つ:Pink Floydのアルバム「Echo」前後からの洗練されたサイケデリック/スペース系、Andy Latimerを彷彿とさせる伸びやかでメロウなギターのCamelなど、いずれかに興味を持った方におすすめです。

また、東欧ヨーロッパらしさ溢れるオリエンタルでメロウなメロディやリズムなどを考えれば、南米産のシンフォニック系のプログレッシブ・バンド(チリのAstralis、アルゼンチンのJinetes Negrosなど)を聴く方にもおすすめかもしれません。

アルバム「7」のおすすめ曲

1曲目は、3曲目の「Hopeless Dreamer」
男女混成ボーカルも含め、清々しさも溢れ、素敵に聴かせてくれるからです。

2曲目は、冒頭曲1曲目の「Seven Gates」
約28分の大作の中に、様々なメロディ・パートやプログレッシブ・ロックのエッセンスが溢れており、聴き応え十分だからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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