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プログレおすすめ:Thrilos「Kingdom Of Dreams」(2016年ポーランド)


Thrilos -「Kingdom Of Dreams」

第288回目おすすめアルバムは、ポーランドのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックなバンド:Thrilosが1997年に録音されますが、長らく未発表のままとなっていて、2016年3月29日に発売された1stアルバム「Kingdom Of Dreams」をご紹介します。

Thrilos「Kingdom Of Dreams」

デモ・レコーディングから20年の時を経て日の目を見る。

当アルバムは、当時のバンドを取り巻く状況に未発表になったまま、アルバム収録楽曲の一部が初めて録音を初めた1996年から20年の月日を経て2016年3月に発表されました。その音源を管理人自ら入手出来たのは、2016年3月29日でした。

Thrilosは、1995年に、Adam Berda(ボーカル、ギター)、Stanislaw Sroka(ギター)、Marcin Tomaszewski(ベース)のトリオ編成で結成したHandsと云うバンドが母体です。バンドは、1996年に入り、Katarzyna Sroka(ヴァイオリン、ヴィオラ)、Barbara Glowoc(フルート)、Dariusz Plachetka(キーボード)、Karol Papala(ドラム)らがメンバーに参加し、ご当地のロック・フェスティバルに参加もしつつ、当アルバムに収録予定である楽曲「Waves」のデモレコーディングを敢行します。

デモ音源は当時の所属レーベルでも好評を得て、レーベルからの意向により、ギリシャ語で「legend(伝説)」を意味する名称のThrilosへバンド名を変更したのが、当バンドの本格的な始まりだと思われます。制作後のアルバムを1998年に発表することを目標に、バンドは、おそらく当時持ち合わせていた音源の本レコーディングを1997年も引き続き行い、アルバムのミックスまで完了していたにも関わらず、当時、プロデューサーが発表を先送りにし、と同時に、レーベルもプログレから撤退を決断したことで、当アルバムはお蔵入り、つまり幻のアルバムの1枚となったのでした。

バンドの音楽の特徴は、東欧、特にアルバム制作時期(1996年から1998年)のポーランドのプログレ界隈を察するに、1995年にアルバム「Changes」を発表していたMr.gilが率いるCollageや1st同名アルバム「Albion」を発表していたAlbion、1996年に傑作アルバムと名高い1st同名アルバム「Quidam」を発表していたQuidamなど、テクニカルさやファンタジックさのエッセンスもあるシンフォニック系やネオ・プログレ系のサウンド・メイキングやアンサンブルではないでしょうか。もちろん、東欧らしい薄暗さやナイーブな感性に訴えかける刹那さに、バンド・メンバーにヴァイオリン、ヴィオラ、フルートなどの管弦奏者がいることで、目を瞑って聴けばサウンド・スケープを感じるには充分なほどの繊細で叙情さも持ち合わせています。

そして、1998年のポーランドのプログレ界隈で発表されたアルバムといえば、自分が知る範囲では、Mr.gilによる初ソロ・アルバム「ALONE」と同年となってたかもしれません。個人的にはどうしても比較しうる聴き方をしてしまうこともありますが、当アルバムは、

1990年後半当時のポーランドのプログレッシブ・ロックを彩る貴重な一枚といえるでしょう。

楽曲について

冒頭曲1「Kingdom Of Dream」は、淡くたなびくシンセの音色に導かれ、マイルドにも伸びやかなトーンのギターの旋律とともに幕を上げ、約17分にも及ぶ大曲です。一定のシークエンスでアルペジオのリフを刻むアコースティック・ギターと音の合間を縫うようにディレイ音で聴かせるエレクトリック・ギターに、仄かにリリカルなフルートがメインのテーマをリフレインし、緩やかにアンサンブルが進行していきます。ほの暗くも朝もやに包まれた光景をサウンドスケープしてしまいそうなほどに叙情さが溢れてます。同国ポーランドでは、やはりAlibionやAmarockなどのシンフォニック系の楽曲に連なる構築美を想起してしまいます。

5分55秒前後からの数秒間のドラムロールを後にし、6分40秒前後にいったんテンポは落ち着き、再度、フルートがメイン・テーマを繰り返しますが、前半部よりはドラムのバスを抑えている分、アコースティック・ギターと淡いシンセのアンサンブルとともにメイン・テーマのフルートの生々しさやリリカルさがたまらないです。

9分前後からのアコースティック・ギターの高速アルペジオのフレーズを伴い、ヴァイオリンの優美なテーマが流れることを皮切りに、9分30秒前後からはシンセがアタックを強め、バンド・サウンドへ立ち返り、マイルドなトーンのギター・ソロが繰り出され、11分前後からは、やっとボーカル・パートへと移行します。爪弾くアコースティック・ギター、並奏するヴィオラの旋律など、インストルメンタルのパートにはAmarockを想起してしまいます。13分20秒前後からはテンポアップし、ディレイを効かせたギターとシンセがメインのアンサンブルによるヴァース、ヴィオラの旋律、ロック然としテクニカルさとエモーショナルさのあるエレクトリック・ギターのソロが盛り上げ、フライジングされたシンセの音渦がフェードアウトする中で、シンバルが響き渡り楽曲はクロージングを迎えます。

仄かにファンタジックさもある叙情さがたまらないシンフォニック系の構築美に聴き入ってしまう。

2「Short Jazzing Expression」は、1分前後や2分前後からのイギリスの5大プログレバンド:King Crimsonを「Disipline」期を彷彿とさせるギター奏法が聴かれながらも、楽曲を終始覆うパーカッシブな演奏がジャージーさもあり、堪らない楽曲です。ファンキーさもあるアンサンブルにも、前曲1「Kingdom Of Dream」と同様に、穏やかに唄うボーカリゼーションがミスマッチであるように思える先入観が恥ずかしくなってしまいます。

3「March Of A Dying Beauty」もまた、シンセとともに50秒前後からのディレイを効かせたギターをメインのアンサンブルに、マイルドなトーンのギターに、交互にフルートとヴァイオリンがテーマを展開していき、2分55秒前後のテンポインとともに、徐々にエレクトリック・ギターによる一定のテーマが繰り返されていきます。1「Kingdom Of Dream」に連なるリード楽器による伸びやかなテーマの展開と2「Short Jazzing Expression」でのKing Crimsonをミニマルなフレーズのアンサンブルがハイブリットしたイメージでしょうか。

4「Waves」は、冒頭部からボーカルがメインの楽曲で、語り調の唄メロのメロディラインに、シンセとアコースティック・ギターのアルペジオがメインのアンサンブルを成し、冒頭部からのパートがフェードアウトし、2分55秒前後からはあらたにインストルメンタルによるいくぶんブルージ―でミステリアスなテーマが展開すると思いきや、爪弾くギターによるテーマがリリカルに、遠まくおぼろげなフルートによるテーマとディレイを効かせたエレクトリック・ギターのサスティーンを効かせたソロ、6分30秒前後からのカウンターメロディのようなベースライン、ヴァイオリンのテーマなど、やはりファンタジックなエッセンスのサウンド・メイキングとアンサンブルがたまりません。

5「Source Of Confusion」は、悲哀に満ちたようなヴァイオリンの旋律とともに楽曲を曲げ、小刻みなシンバルに、シンセとベースがアンサンブルをリードしていく様はジャム風とも感じ取れる楽曲です。5分50秒前後からは、2「Short Jazzing Expression」と同様に、ディレイを効かせたミニマルなギターのアプローチと、白玉に轟音を聴かせるギターの一閃フレーズが不穏な様相を呈し、当バンドならではの楽曲の和訳「混乱の源」に似つかわしいカオスを想起させるような展開でクロージングを迎えます。

6「Strange Images」は、アコースティック・ギターによるアルペジオが和を想起させるフレーズにユニゾンするピアノとのアンサンブルで唄われるヴァースで幕を上げます。リフのような様のヴァイオリン、ディレイを効かせスタッカート気味に弾くギターだけでなく、前曲までにないミステリアスさを前面に押し出したような曲調は、2「Short Jazzing Expression」や3「March Of A Dying Beauty」よりも、ポーランドの地特有さやフュージュン系の感覚を憶えました。

最終曲7「Closed Within」は、幻想的でミステリアスな曲調によるボーカル・パートがメインの楽曲です。前曲6「Strange Images」の約10分の長尺と比べて、約3分ほどの楽曲ですが、他楽曲よりは、それぞれのパートに張りつめたテンションを感じ、アルバムのクロージング・ナンバーと感じえる仕上がりと感じました。

アルバム全篇、ほの暗さに、叙情さを伴い、ファンタジックさがあるシンフォニック系のアンサンブルを愉しめる楽曲をベースに、ミニマルなフレーズを多用した影響も感じえるアルバムと思います。

[収録曲]

1. Kingdom Of Dream
2. Short Jazzing Expression
3. March Of A Dying Beauty
4. Waves
5. Source Of Confusion
6. Strange Images
7. Closed Within

キーワードとして幻想さ、刹那さ、穏やかさなどを、演奏される楽器にフルート、ヴァイオリン、ヴィオラなど管弦楽器を、プログレのカテゴライズとしてシンフォニック系やネオ・プログレ系を聴く方、求める方におすすめです。

また、プログレッシブ・ロックを聴く人で、幻想さや抒情さがある同国のプログレッシブ・ロックバンド:Collageや、AlbionとCollageの初期サウンドが好きな方に聴いて欲しいアルバムです。

個人的には、リード楽器とともにシンフォニック系に構築していく同国のAmarock、国は違えど、当WEBサイトのレビューで取り上げているアルメニアのArtsruniなどに興味を持った方ならおすすめしたいですね。

いつもレビューを書いていて想うことですが、お蔵入りや幻など、プログレッシブ・ロックのファンにとっては溜息をついてしまうような存在の音源です。もしもそれが、1990年代の後半当時にリアルタイムでプログレッシブ・ロックを、特に東欧で、特にポーランドのバンドを貪り聴いていた方や、時を経て、そのプログレ界隈の音楽に嵌った方にとっては、管理人と同様に感じる方もいるかなと思います。

その時、その地、共通する同志によるクリエイティビティに、後悔しないよう、これからもプログレッシブ・ロックの音楽を探求していきたいと、あらためて感じさせてくれたアルバムです。

アルバム「Kingdom Of Dreams」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲目の「Kingdom Of Dream」
約17分にも及びリードが変わる変わるテーマを奏で構築されるシンフォニック系のアンサンブルは、これまでプログレ市場のみならず、音楽業界に埋もれていたのはもったいなさすぎると一聴し感じますし、ゆったりと心にサウンドスケープさせてくれ、続く曲調にバリエーションはありつつもアルバム全曲をそのまま聴き入ってしまうにはもったいないぐらいの説得力も感じてしまいます。

2曲目は、4曲目の「Waves」
当楽曲のデモ・レコーディングを行った1996年から数えること20年の月日をかけてアルバム全篇を聴くことが出来たと云うことに、1996年当時はプログレッシブ・ロックの沼にどっぷりと嵌っていなかったにしても感慨深くなります。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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