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プログレおすすめ:Different Light「The Burden Of Paradise」(2016年チェコ)

公開日: : 最終更新日:2016/03/24 2016年, チェコ, メロディック・ロック


Different Light -「The Burden Of Paradise」

第262回目おすすめアルバムは、チェコのクロスオーバー系のロック・バンド:Different Lightが2016年2月29日に発表した3rdアルバム「The Burden Of Paradise」をご紹介します。
Different Light「The Burden Of Paradise」
Different Lightは、1994年にTrevor Tabone(ボーカル、キーボード、ギター)を中心に、マルタ共和国で4人編成で結成されたバンドで、1996年に1stアルバム「All About Yourself」を発表し、1年も経たぬうちに、同年夏に解散していました。

その後、2008年に、Trevor Taboneはチェコ共和国のプラハを拠点にメンバーを刷新し再結成したうえで、2009年には2ndアルバム「Icons that Weep」を発表しています。それから7年、、『個人の自由とあるがままの己れを見つめよう』というアイデアをコンセプトにした制作されたのが当アルバム「The Burden Of Paradise」なのです。

2008年デビュー当時は、コンポンザーでもあるTrevor Taboneのクリエイティビティを活かしたサウンド・メイキングによる比重が高く、ネオ・プログレ系の代表格:MarillionやPendragonを想起させる独特の弾むポップさとメロディックな唄メロとともに、メロディラインを唄うTrevor Tabone自身による伸びやかなボーカリゼーションも印象でした。

再結成時の2ndアルバムでは、ミドルテンポやスローテンポの楽曲に顕著な5大プログレバンドの1つ:Pink Floydの浮遊さに通じるアトモスフェリックさへのクロスオーバー的なエッセンスの楽曲は見受けられるものの、アップテンポの楽曲では、ビートバンドのような印象さえあり、どちらかといえば、Trevor Taboneのボーカリゼーションを際立たせる楽曲がアルバム全篇を占めていましたが、当アルバム「The Burden Of Paradise」は、1stアルバムの楽曲「Burning Memories」にも代表されるネオ・プログレ系のエッセンスへ原点回帰したかのようなサウンド・メイキングとのバランスの良さを感じさせる仕上がりが印象です。

過去各アルバムの発表が7年以上置きとなれば、各アルバム制作当時の最新技術やモダンなサウンド・プロダクションが盛り込まれているわけで、この2016年の最新アルバムでのサウンド・メイキングは、Trevor Taboneのクリエイティビティが活きているのではないかと感じました。

バンド本来のメロディックさを活かしつつ、ネオ・プログレ系のサウンドへ回帰した好アルバムなのです。

楽曲について

冒頭曲「In the Grand Scheme of Things」は、8つのパートからなる組曲形式の約20分強にも及ぶ楽曲です。楽曲1「Alternate Icon」(2ndアルバム「Icons that Weep」収録)を彷彿とさせる第1パート「The Schemer Wakes」のイントロ部のSEを皮切りに、哀愁溢れるメロディアスな唄メロとギター・ソロが聴けるミドルテンポの第2パート「Letters for Alice」、2ndアルバムのビートポップさやコーラスワークを踏襲しつつも、1stアルバム寄りのシンセサイザーのプレイも冴えたアップテンポの第3パート「Happiness」など、

コンポンザーのTrevor Taboneの時としてメランコリックさ、時として甘酸っぱさのフックが効いた唄メロのメロディセンスは健在のままに、ネオ・プログレ系のエッセンスを散りばめた多種多様なサウンド・アプローチが見受けられる素晴らしき構成力です。

ピースフルな唄メロに、当アルバムの特徴ともいえるハーモニーを活かしたコーラスワークが聴けるスローテンポな2「Voice of Outside」、冒頭部のピアノの旋律やギターのリフとフィルインなどがアメリカのハードロック・バンド:の名曲「Right Here, Right Now」を彷彿とさせるドラマチックさが印象的な変拍子を多用したインストルメンタル楽曲3「A St. Martin’s Summer」を挟み、4「Eternal Return」は、6つのパートからなる組曲形式の約14分にも及ぶ楽曲です。

前曲3「A St. Martin’s Summer」がインストルメンタルによる前奏曲とも感じさせてくれるドラマチックさに溢れた唄メロをメインとした第1パート「New Promise」を皮切りに、ピアノやSEを交えたインストルメンタルの第4パート「A Carpathian Day」を挟み、スローテンポで静から動へとドラマチックに唄い上げる最終パート「Waking Moment」までの展開は、冒頭曲「In the Grand Scheme of Things」以上にネオ・プログレ系のサウンド・メイキングやアンサンブルが効いた構成となっており、第3パート「Nectar Junky」、第4パート「A Carpathian Day」、第5パート「Default Setting Escape」では、スウェーデンのMoon Safariを想起させてしまうぐらいにメロディアスな唄メロを際立たせるアンサンブルが聴かれ、明らかに1stアルバムへとの回帰を感じさせてくれますし、聴いていて心地良いですね。

5「Transient Dream」は、ピースフルさとメランコリックさと云う当バンドの持つメロディアスなパートの典型な楽曲ですが、ピースフルさはヴァース部に、メランコリックさはサビ部で使い分け、さらに、ハーモニーとカウンターメロディによるコーラスワーク、クロージング直前のタメの効いたテクニカルなパートなど、ただただメロディアスな楽曲だけとはいかない一筋縄に聴かせてくれません。

アルバム冒頭部の「The Schemer Wakes」(「In the Grand Scheme of Things」の冒頭パート)の冒頭リプライズの印象もある約1分弱のインストルメンタルな楽曲6「Mare Imbrium」を挟み、7「In Love and War」もまた、約10分にも及ぶ2パートから成る組曲です。ピアノの独奏からタイトなリズムにより幕を上げ、伸びやかなギターのフレーズが聴かれる冒頭部からオルガンが加わったヴァースのアンサンブルが重厚な第1パート「Love」、リズムチェンジから変拍子によるパートを挟み、アンニュイさやコミカルさ、アトモスフェリックさなどのパートが交錯し合い、第1パート以上にアルバムのハイライトと感じられる第2パート「War」が聴けます。

最終曲8「All for You」は、ピアノの低音の打音が重苦しさを醸し出し、綴れ織りのようなピアノのフレーズによるヴァースで幕をあげる楽曲です。第2ヴァースからはシンセサイザー、ギター、ベース、ドラムがアンサンブルに加わり、楽曲に色を添えていきます。1分20秒前後からのアコースティック・ギターのソロ・パート、2分30秒前後の唄メロのミドル部、サビ部のコーラス「All For You」など印象的なパートもありますが、アルバムの他楽曲と比べれば、楽曲全体がよりオーソドックスなアンサンブルで纏め上げられた印象もあり、アルバムの最終曲にして、落ち着きクロージングを迎えてます。

初期バンド結成から約20年で3枚目のアルバムであるため、個人的には1stアルバムと2ndアルバムを聴いては、もうアルバム発売はないとも感じながら、他にも多くのプログレッシブ・バンドのアルバムに触れていたものですから、10分を超える3つの組曲をアルバム全篇に配し、さらに、そのサウンド・メイキングやアンサンブルには、ネオ・プログレ系への回帰を十分に感じさせてくれるには嬉しくてたまりませんでした。

次作4枚目のアルバムを短いスパンで発表して欲しいと願ってやみません。

[収録曲]

1. In the Grand Scheme of Things
i. The Schemer Wakes
ii. Letters for Alice
iii. Happiness
iv. The Stalker Walks
v. Pascal’s Wager
vi. Out of the Goldilocks Zone
vii. Together There
viii. The Schemer Sleeps
2. Voice of Outside
3. A St. Martin’s Summer
4. Eternal Return
i. New Promise
ii. At First Light
iii. Nectar Junky
iv. A Carpathian Day
v. Default Setting Escape
vi. Waking Moment
5. Transient Dream
6. Mare Imbrium
7. In Love and War
i. Love
ii. War
8. All for You

オルタナティヴ・ロックやポスト・ロックをはじめとし美メロが好きな方におすすめです。

また、過去のアルバムを知らない方としても、フックとなるメロディアスな唄メロが際立つ、ネオ・プログレ系のエッセンスが好きな方におすすめです。

当アルバムを聴き、Different Lightを好きになった方は、1996年発表の1stアルバム「All About Yourself」、1999年発表の4曲入りのEP盤「A Kind of Consolation」、2009年発表の2ndアルバム「Icons that Weep」から12曲が選曲されたコンピレーションアルバム「Il Suono della Luce」が2015年に発表されていますので、手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

2ndアルバム「Icons that Weep」はプログレッシブさよりもポップさとアトモスフェリックさの印象が強いため、当アルバムとは多少雰囲気が変わります。個人的には、もうアルバムが発表はないだろうと思い込み、希少なアルバムとして聴き続け愛着があります。その愛着感から2ndアルバム「Icons that Weep」をおすすめしてしまうのと、当アルバムをネオ・プログレ系としのおすすめとでは、やはり趣きが異なるため、ぜひ、コンピレーションアルバム「Il Suono della Luce」に収録された楽曲から、1stアルバム、EP、2ndアルバムの良さを感じ取って欲しいと思うのです。
ちなみに、当サイトでは、2ndアルバム「Icons that Weep」のレビューも書いています。、

▼アルバム:「Icons that Weep」のレビューは下のリンクから▼
プログレおすすめ:Moon Safari「Icons that Weep」(2009年チェコ)

アルバム「The Burden Of Paradise」のおすすめ曲

1曲目は4「Eternal Return」
アルバム全篇で、最もメランコリックさ、甘酸っぱさ、ピースフルさによる唄メロのメロディラインを活かすネオ・プログレ系の心美良いパートが聴けるからです。

2曲目は5「Transient Dream」
テクニカルやスキルフルさよりも、コーラスワークを含めメロディラインを活かしたサウンド・メイキングが素敵なんです。アルバムの他収録には、同様に美メロともいうべき、フックの効いたメロディがある楽曲があるものの、当楽曲を聴けば、Trevor Taboneのクリエイティビティにマンネリ化は感じないのです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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