プログレおすすめ:Raimundo Rodulfo「Suite Dantesca」(2014年ベネズエラ)
Raimundo Rodulfo -「Suite Dantesca」
第35回目おすすめアルバムは、ベネズエラのミュージシャン:Raimundo Rodulfoが2014年3月末に発表したEP「Suite Dantesca」をご紹介します。
Raimundo Rodulfoは、ベネズエラのアラグア州はマラカイ出身で、ヴァイオリン、クラシック・ギター、エクレトリック・ギターを幼少時から学び、当初はバンド活動に専念していましたが、1992年からソロ・キャリアの道へ転身します。
ギター、シンセ、マンドリン、シタール、リュート、オルガンにパーカッション、そしてヴォーカルをこなすマルチミュージシャンですが、唄メロやアレンジのセンスも含め、King Crimsonやオランダのバンド:Ekseptionのインストルメンタルのパートにも影響を受けたと引き合いに出されることもありますが、主に、イギリスの5大プログレバンド:Genesisの元ギタリスト:Steve Hackettを彷彿とさせるシンフォニック系のエッセンスを感じさせてくれます。
当アルバムは、2013年発表の前作3rdアルバム「Open Mind」の制作に関与していたGerardo Ubieda(ドラム)をはじめ、Ricardo Bigai(ベース)、Richard Marichal(ピアノ、クラヴィア、キーボード)を交え、制作されています。過去アルバム(2000年発表の1stアルバム「Dreams」、2009年発表の2ndアルバム「Mare Et Terra」、2013年発表の3rdアルバム「Open Mind」)の発表インターバルを考えれば、EP版とはいえ、2014年4月現在、これほど早く当アルバム「Suite Dantesca」が手元に届くとは予期出来ませんでした。
楽曲ごとに、Miami String Ensembleの3人(Anna Ventura(ヴァイオリン)、Mariana Carreras(ヴァイオリン)、Konstantin Litvinenko(チェロ))による弦楽がアンサンブルに彩りを与え、いっぽうで、ボーカルのパートはクワイヤ(Minerva Borjas、Cristo Aguado)と詩朗読者(Gabriele Lepre、Agnese Lepre)がインストルメンタルなパートを補完しあうクリエティビティが印象的なため、
たおやかで優雅にもクラシカルさに時と場所を忘れ聴き入ってしまうアルバムと思います。
楽曲について
冒頭曲1「Falsedad Y Castigo」は、バロック調の尊厳なオーケストレーションから、クラシック・ギターとクラヴィアをメインにアンサンブルにテーマが奏でられ、そのインストルメンタルのテーマに対し男女混成ボーカルが唄メロを主張せず並奏するかの如く唄うのが印象的な楽曲です。続いて、テーマに合わせてエレクトリック・ギターとシンセが加わり、シンフォニック系へと進行していきます。ほんの少しだけジャージーなピアノのフレーズによるフリージャズ的なパートをアクセントに挟みながらも、4分前後からはRaimundo Rodulfによるエレクトリック・ギターの独奏をしっかりと聴かせてくれます。はじめて耳にした方には、イタリア・プログレ系のエッセンスと同時に、Raimundo Rodulfのクラシック・ギターとエレクトリック・ギターによるユニークな演奏スタイルを感じることでしょう。
南アメリカ大陸の地にあるベネズエラと、ユーラシア大陸の地にあるイタリアの音楽の脈流がクロスオーバーしたと云うよりも、いずれの地にも感じる「情熱さ」は、地球上で海を隔て遠く離れていたとしても、素敵に紡ぎ合うのだと思わずにはいられません。
2「Ascenso Tortuoso」は、ギターがジャズ系やフュージョン系も豊かに展開していくインストルメンタルの楽曲です。たぶんにカンタベリー系のエッセンスを含みながらも、予定調和のような進行をみせずに、2分50秒前後以降では、ロマンチシズム溢れる音色も印象的にシンセの旋律が響き、ポエムが挿入されています。
3「El Sol De Sus Ojos」は、女性ボーカルをメインとした楽曲で、イントロからピアノ、クラシック・ギター、ヴァイオリンによるアンサンブルには、当EPの楽曲で最もロマンチシズムを感じると思います。シンセが奏でれる不穏なフレーズの音色以外は、たとえば、2分前後からの女性ボーカルとトレモロ気味のギターのフレーズなど、繊細さにどこまでも憂いと儚さを讃えたサウンドスケープを魅せて、自然と琴線に触れてしまいますね。7分前後に聴けるメロトロンによる旋律でさえ、楽曲の1つのパーツと思わせるぐらいに、他楽器が絡み合うアンサンブルは素晴らしく、Raimundo Rodulfoによるクリエイティビティとサウンド・メイキングの妙を堪能出来ます。
そして、最終曲4「Falsedad Y Castigo (Classical Ensemble)」は、冒頭曲1のクラシカル変奏として仕上げられています。
[収録曲]
1. Falsedad Y Castigo
2. Ascenso Tortuoso
3. El Sol De Sus Ojos
4. Falsedad Y Castigo (Classical Ensemble)
現在、Raimundo Rodulfoが活動拠点を持つイタリアで、たとえば、Premiata Forneria Marconiに代表されるたおやかなクラシカルな演奏など、イタリア・プログレのエッセンスを含むシンフォニック・プログレを好む方や、ギタリストのセンスという側面から、クラシカルやカンタベリーなども想起させるクラシカルギターとエレキギターなどの演奏を聴きたい方にもおすすめです。
また、当アルバムでRaimundo Rodulfoのアレンジセンスや演奏スキルに魅せられた方は、特に2009年発表の2ndアルバム「Mare Et Terra」をおすすめします。クラシカルなパートとエレクトリックなパート、および、シンフォニック系とカンタベリー系のエッセンスを聴かせてくれるバランスの良いアルバムと感じています。
EP「Suite Dantesca」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲1の「Falsedad Y Castigo」
クラシカルでシンフォニックに拡がっていくアンサンブルに、Raimundo Rodulfのクラシカルギターとエレキギターの演奏が楽曲に色を添えるように散りばめれており、躍動的で優雅な演奏を堪能出来ると思います。
2曲目は、3曲目の「Ascenso Tortuoso」
繊細に織りなす各楽器のアンサンブルと女性ボーカルがとてもロマンチシズムを感じさせてくれます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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