プログレおすすめ:YES「イエス・ファースト・アルバム」(1969年イギリス)
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1960年代, YES(5大プログレ), イギリス Bill Bruford, Chris Squire, jon anderson, Tony Kaye, YES
YES -「YES(イエス・ファースト・アルバム)」
第270回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESが1969年に発表した1stアルバム「YES(イエス・ファースト・アルバム)」をご紹介します。
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記念すべき1stアルバムは、Jon Anderson(ボーカル)、Chris Squire(ベース)、Bill Bruford(ドラム)、Tony Kaye(キーボード、オルガン)、Peter Banks(ギター)の5人のメンバーで制作されています。
当アルバムには、3rdアルバム「The Yes Album」での構築されたアンサンブルでもなく、のちの名盤「Fragile(邦題:こわれもの)」や「Close To The Edge(邦題:危機)」ほどの緻密さが緊張感を漂わせるアンサンブルでもない、これぞプログレッシブ・ロック然とした音楽性を明確に感じないかもしれません。
アルバム制作当時、YESが目指していたのは、楽曲「Beyond and Before」やジャズ系のエッセンスが散りばめられたカバー楽曲「I See You」に代表されるアメリカはウエスト・コーストの音楽性と、アートロック系の音楽の融合だったのではないかと思うのです。1960年代後半からのサイケデリック系やアートロック系をベースにし、ハードなロックのアプローチは、その後のYESの音楽の軸と方向性とは異なる印象を抱いてしまうからです。
いっぽうで、まだまだYES特有とは程遠いながらも、コーラスワークを楽曲のアンサンブルの一部に盛り込む姿勢、ジャズ系のエッセンスによるギターやドラムのテクニカルなプレイ、Chris Squireのごりごりしたベースプレイなどが、随所にYESらしさ溢れる音楽性が聴けます。
デビュー・アルバムとしての瑞々しさが印象以上に、ハードなアプローチに胸を高揚させる楽曲と、ハートフルなメロディラインが冴えたミディアムテンポの佳曲を聴けば、聴かず嫌いではもったいと感じさせてくれるはずです!
楽曲について
まるでYESを象徴するかのように、ぶいぶいうなるベースのフレーズを繰り出すChris Squireのプレイで幕をあげる冒頭曲1「Beyond and Before」は、オルガンのリフとワウを効かせたギターがアンサンブルに加わり、ヴァースからサビ部へと唄メロのメロディラインにガイドするコーラスワークがCrosy Still Nash And Youngを彷彿とさせ、楽曲のキラキラ感に思わず高揚してしまいます。当時のアートロックさに溢れたサウンドに、Chris SquireとBill Brufordによるタイトなリズムセクションは、のちの黄金期の緻密なテクニカルさ、1980年代以降のYESのヴァースとサビ部での独立したメロディアスとは異なる躍動さに溢れていますが、
YESの音楽の特徴の1つであるファンタジックさが仄かに感じずにいられないのです。
2「I See You」は、同国イギリスのバンド:The Byrdsが1966年に発表した楽曲のカバーです。原曲はギターがメインにジャングル・ビートを効かせ、抑制されたボーカリゼーションも含めた印象がクールさを漂わせた素敵な楽曲ですが、YESは、唄うかごとく流麗なギターのフレーズに、オルガンのリフが大胆に盛り込まれた約6分前後の楽曲へと仕上がっています。そのPeter Banksによるギターのハードなソロも、2分50秒前後からは、Bill Brufordのドラムとともにジャズ系のアンサンブルが冴えを聴かせてくれます。4分50秒前後のブリッジ部やクロージング直前のリズムセクションとギターによるタイトなパートには、当時のアートロック系のマイナー調の楽曲を彷彿とさせ、ニンマリとしてしまいます。
ハードなアプローチに埋もれない「I See You」や「I Love You」などのコーラスは原曲以上にクールですね。
3「Yesterday And Today」は、メランコリックなメロディラインが儚く、アコースティック・ギターのストロークとピアノの旋律が色を添える素敵な楽曲です。まだかぼそさもあるJon Andersonのボーカリゼーションも含め、素朴な味わいがあります、。同じくイギリスの5大プログレバンドの1つ:Genesisが同年1969年に発表した1stアルバム「From Genesis To Revelation(邦題:創世記)」での展開、当時の周流となる音楽性を感じずに入れません。約2分前後から、ヴァースのメロディラインをなぞるようにピアノの旋律が聴かれ、そのままフェードアウトします。
4「Looking Around」は、1960年代後半当時のアートロック系のアンサンブルやサウンド・メイキングに溢れ、オルガンのリフとギターのユニゾンがハードなアプローチで聴かせてくれます。3rdアルバム「The Yes Album」でのロックなリズムさと異なるのは、おそらく、Tony KayeのオルガンとPeter Banksのギターのアンサンブルが際立つところでしょうか。クロージング直前ではまだまだYESらしさを確立していないが印象的なコーラスワークが聴けます。
5「Harold Land」は、4「Looking Around」以上にオルガンやピアノのリフが躍動し、初期Genesisも彷彿とさせるアンサンブルで幕を上げます。1分前後からのパートが聴ければ、プログレッシブ・ロックなアプローチの一端を感じさせてくれますが、それでも楽曲の印象は、当時のプログレ・フォーク系にオルガンがアンサンブルに加わったハードなロック思考かと思います。当時のメンバーによる、当時の楽器編成でのアンサンブルに、仄かにファンタジックさが垣間見えるのが微笑ましく聴いてしまいます。
6「Every Little Thing」は、The Beatlesが1964年に発表した楽曲(アルバム「Beatles For Sale」収録)のカバー楽曲です。当楽曲でも、2「I See You」同様にジャズ系のエッセンスも盛り込まれ、原曲以上に大胆にもハードなアプローチで聴かせてくれます。冒頭部からは、原曲を感じさせない不穏さを漂わせつつ、アートロック系のリズムセクション、オルガン、ギターによる怒涛なインプロビゼーションが繰り広げられます。心鷲掴みされるほどに十分すぎるほどにクールな展開から、1分40秒前後から原曲のヴァースのメロディラインを弾くギターのフレーズが聴かれるとともに、1分55秒前後からは、The Beatlesへのリスペクトともとれる名曲「Day Tripper」の有名なリフが盛り込まれヴァースへと雪崩込みます。そして、サビ部では原曲のシンガロングなメロディラインが力強い唄い上げられます。3分30秒前後の2台のギターによるハードなソロ、4分前後のスタッカートを効かせたアプローチなど、Peter Banksのギターのプレイが聴きどころです。
オルガンの旋律で幕を上げ、ベースラインに導かれる7「Sweetness」は、エレクトリック・ギターのプレイやコーラスワークが楽曲タイトルを想起させるスイートに優しげな楽曲です。レズリー・スピーカーを通じたギターのリフが印象的にも、2分40秒前後のスキャットとともにプログレ・フォーク系のアンサンブルを堪能出来ます。サビ部のメロディラインやコーラスワークに溢れる素朴さは、のちの牧歌的な一面を魅せるYESらしさよりも、垢抜けないあどけなさを感じてしまいます。色褪せてしまわないよう聴き入っていたいと、ただただ思うんです。そして、当楽曲のクロージング直前で聴かれるPeter Banksのギターのプレイを聴くことで、のちに加入するSteve Howeによるギタープレイは、YESのサウンドの一部として既に受け継がれるべきものと感じずに入れません。
最終曲8「Survival」は、のちの名曲「Perpetual Change」よりは柔和なイメージを感じるものの、ギターとオルガンがメインのアンサンブルでドラマチックに幕を上げる楽曲です。1分25秒前後からは、マイナー調のアンニュイなパートへと移行し、2分10秒前後からはヴァースがはじまります。オルガンとコーラスワークがメインに盛り上げる中間部から、唄メロのメロディラインに呼応するオルガン、続いてコーラスワークが冴えるサビ部への展開んびは、YESの独自性を感じずにいられません。聴き手によるかもしれませんが、所謂プログレッシブ・ロック然といかないまでも、楽曲を典型的なポップスやロックな展開に終始させたくないと云うアイデンティや意気込みを強く感じてしまうんです。
アルバム全篇、カバー曲を盛り込みながら、当時のアートロック系のバンドと比べてもYES自らのアイデンティを模索しようとする姿勢を感じずにいられません。
そして、8「Survival」の楽曲展開に、2ndアルバム「Time And A Word」へと想いを馳せてしまうYESのアイデンティなど、熱心なYESファンであれば、随所に、YESらしさの原型「断片」を見出すだろう、瑞々しさに溢れたアルバムです。
[収録曲]
1. Beyond and Before
2. I See You
3. Yesterday And Today
4. Looking Around
5. Harold Land
6. Every Little Thing
7. Sweetness
8. Survival
サイケデリック系のエッセンスがありつつも、プログレ・フォーク系やアートロック系の比重が高い音楽を好きな方におすすめです。
当アルバムから2ndアルバム以降を聴くことで、YESの音楽性の変化が感じて欲しいため、本来であれば、YESを聴く方に、はじめて聴いて欲しいアルバムです。
カバー楽曲の原曲となるThe BeatlesやThe Byrdsでも特徴となるコーラスワーク、同じくプログレッシブ・ロックに目覚める直前のGenesisの1stアルバム「From Genesis To Revelation(邦題:創世記)」のアートロック指向、そのアートロック指向をハードなアプローチで展開したDeep Purpleの1stアルバムなど、1960年代後半のイギリスを隆盛した音楽性が好きな方には、いちど、「プログレッシブ・ロックのYES」と云う先入観を忘れ、聴いて欲しい1枚でもあります。
アルバム「YES」のおすすめ曲
1曲目は、最終曲8「Survival」
テクニカルさが漂わす緊張感よりも、楽曲進行で魅せるスキルフルさが、楽曲の素敵なメロディラインを活かしつつ展開しているところが素晴らしく感じてしまうんです。アンサンブルをメインとした組曲ではなく、流麗なメロディラインのパートが複数重なり紡ぎ合うのが印象的なのです。
2曲目は、2「I See You」
もう1つのカバー曲「Every Little Thing」の冒頭部のパートも当時のアートロック系での展開からメインのメロディラインへと繋がるのも聴きどころと思うのですが、当楽曲では、原曲をベースにハードなアプローチやジャズ系のエッセンスで拡げていくイメージがあり、そのイメージを聴き終えれば、原曲以上に「エッジの効いたクールさ」が似つかわしく素敵です。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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