プログレおすすめ:Profuna Ocean「In Vacuum」(2016年オランダ)
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最終更新日:2016/03/19
2016年, オランダ, シンフォニック Profuna Ocean
Profuna Ocean -「In Vacuum」
第261回目おすすめアルバムは、オランダのネオ・プログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Profuna Oceanが2016年1月8日に発表した2ndアルバム「In Vacuum」をご紹介します。
Profuna Oceanは、2008年にオランダの地で、Raoul Potters(ボーカル、ギター)、Rene Visser(キーボード、シンセサイザー)、Arjan Visser(ベース)、Fred den Hartog(ドラム)の4人で結成したバンドです。
バンドの初期の音楽の特徴は、自ら影響を受けたと語る、イギリスのプログレッシブ・メタル系のバンド:Thresholdのボーカリスト:Damian Wilsonの伸びやかな声質をもつRaoul Pottersや唄メロのメロディラインと、5大プログレバンド:Yesの元キーボード奏者:Rick Wakemanのクラシカルな素養にシンフォニック系で綴られるRene Visserのキーボードのプレイによるネオ・プレグレ系のエッセンスです。
2009年に発表した1stアルバム「Watching the Closing Sky」では、クラシカルなキーボード・プレイにオルタナティブ・ロック系のギターのリフをアンサンブルにしたスタイルで、メロディアスさとパワフルさのあるネオ・プログレ系の音楽を聴かせてくれましたが、個人的には、それ以上に、いわゆる”美声”と感じられるRaoul Pottersの哀愁を帯びたボーカリゼーションが印象的でした。
2010年には、同国オランダのプログレッシブ・ロックの代表格となるバンド:Focus、Knight Area、Racoonらとともにステージを共にしたり、2013年には、オランダのプログレッシブ・ロックでは権威ある「best progressive rock band of The Netherlands」にも受賞したことがあり、その音楽は実力は折り紙付きといってもいいでしょう。
そして、7年振りに発表された2ndアルバム「In Vacuum」は3年の月日をかけ制作され、よりその音楽は進化を遂げています。公式サイトでも紹介されていますが、そのポスト・ロックにも通じる美メロやハーモニーも特徴的なイギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Porcupine TreeやThe Pineapple Thiefのような幻想さや時折垣間見せる薄暗さなどのプログレッシブ・ロックを意識したと云われています。いっぽうで、Thresholdのギター・オリエンテッドなプレイのサウンド・メイキングを活かしたヘビーなプレイに近づくと同時に、Anathemaからも影響を受けたというアコースティック・ギターのプレイとシンセサイザーによる旋律が織りなすシンフォニック系なアンサンブルを聴かせてくれます。メロディックな唄メロはもちろんのこと、
オルタナティブさとアコースティカルさが静と動を織りなすシンフォニック系なアルバムです。
楽曲について
ヘビーなギターのリフで幕を上げる冒頭曲1「Thousand Yard Stare」は、当バンドが2ndアルバムで目指した音楽性が詰め込んだオープニングに相応しい楽曲と思います。ヴァースでのアコースティック・ギターをメインとしたアンサンブルに、ハーモニーを多用したメロディックな唄メロが際立ち、サビ部やブリッジ部でのヘビーなギターによるリフ、随所に魅せるシンセサイザーによるシンフォニックさ溢れる旋律など、いわゆるオルタナティブ・プログレッシブと云われるバンドがもつアンサンブルが聴けます。静をアコースティカルさに、動をヘビーなギター・オリエンテッドさにというだけではなく、たとえば、4分10秒前後からのシンセとアコースティカルなパートからメロディックなギター・ソロへの展開は、1stアルバムに垣間見せたネオ・プログレ系のアンサンブルも盛り込まれてもいるのです。いっぽうで、5分30秒前後からのアコースティック・ギターの繊細なプレイには、The Pineapple Thiefのアンサンブルを彷彿ともさせてくれます。
中間部に幻想さあるパートを盛り込みタイトなリズムセクションで進行する2「Awakening」以降も、哀愁を帯びた疾走さ溢れる唄メロと、中間部でのThe Pineapple Thiefのアコースティカルさにパーカッシブさが冴えた静寂さある約13分にも及ぶ3「Hanging In The Balance」、4分30秒前後からのアタックの強いシンセ・ソロを含む4「Losing Ground」、アコースティカルな冒頭部からAnathemaを想起してしまう5「Ghost」など、ボーカル・パートではいずれの楽曲にもRaoul Pottersの美声が埋もれることない仕上がりになっています。
6「Beautiful Sunrise」は、冒頭曲1「Thousand Yard Stare」と同様にヘビーなギターのリフで幕を上げ、3「Hanging In The Balance」と同様に長尺の楽曲でありながらも、よりテクニカルさや1970年代のプログレッシブ・ロックを意識した展開が盛り込まれていると感じずにいられない楽曲です。ヘビーなギターのリフのパートやThe Pineapple Thiefのアンサンブルを彷彿とさせるアコースティカルなパートで楽曲が進行しながらも、3分前後からハモンド・オルガンの旋律がアンサンブルに加わり、かの5大プログレバンド:Pink Floydの元Roger Watersによる特徴的なベースラインを想起させる3分50秒前後のプレイを皮切りに、7分前後までエレクトリック・ギターによる特徴的なプレイが聴けます。フラジング処理されたギターのストローク、メロディックなギター・ソロとシンセサイザーの旋律、リズムセクションと呼応する変拍子とシンコペーションを多用したヘビーなギターのリフなど、様々なスタイルのプレイが聴けます。いったん、ヴァースへ戻り、7分50秒前後からはサイケデリック/スペース系なサウンド・メイキングへ移行します。8分40秒前後からクリーントーンのギターが加わり、シンセサイザーとのアンサンブルに哀愁を帯びたメロディックな唄メロへの展開は、1stアルバムと当アルバムでは最もプログレッシブ・ロックのエッセンスの比重が高いのではないでしょうか。
6「Beautiful Sunrise」で魅せたサイケデリック/スペース系のあるパートよりも、ピアノとシンセサイザーによるモダンなテイストを感じる約1分弱のインストルメンタル楽曲7「In Vacuum」を挟み、最終曲8「Clean Slate」は、4「Losing Ground」よりもヘビーなギターとタイトなリズムセクションによるメリハリの効いたアンサンブルで幕を上げます。
オルタナティブ・プログレなる展開で進行する冒頭部から、3分前後からはアコースティック・ギターをメインとしたアンサンブルに、哀愁を帯びたメロディックさやトレモレを聴かせたエモーショナルなギター・ソロを交え、静寂さから哀愁が滲みでるようなサウンドスケープを魅せてくれます。5分15秒前後からはクリーントーンのギターによるエキゾチックなリフのプレイとシンセサイザーによる不穏な旋律、6分30秒前後からのヘビーなギターのリフとサイケデリック/スペース系のサウンドがブレンドしたパートなど、静に動のパートを挟みながらも、8分30秒前後からのオルタナティブなアンサンブルによるヴァースからは、その静と動のパートがクロスオーバーし、プログレッシブ・ロックでのシンフォニック系のエッセンスを濃厚を強く感じさせてれるオルタナティブ・プログレな展開です。10分15秒前後からはシンセサイザーの旋律に導かれ、かすかに響き渡る電子音とともに、ピアノの旋律が物悲しくも途絶え消え入るようにクロージングを迎えます。
アルバム全篇、1stアルバムでのオルタナティブ・プログレなるアンサンブルに美声を効かせた哀愁さ溢れるメロディラインによるネオ・プログレ系からアコースティック・ギターやシンセサイザーのプレイやパートが盛り込まれたシンフォニック系の演奏を聴かせてくれます。あらためて、プログレッシブ・ロックのどのジャンルに括られるのかと、こまごまと語るよりも、むしろ、この新たに進化を遂げようとする音楽性が「プログレッシブ・ロック」だと感じずにいられません。
[収録曲]
1. Thousand Yard Stare
2. Awakening
3. Hanging In The Balance
4. Losing Ground
5. Ghost
6. Beautiful Sunrise
7. In Vacuum
8. Clean Slate
哀愁あるメロディラインからはネオ・プログレ系としておすすめしたいものの、アコースティカルさの静とヘビーなギターのプレイによる動のドラマチックな楽曲には、プログレッシブ・ロックのうち、シンフォニック系を聴く方におすすめです。
イギリスのバンド:Pendragonなどのネオ・プログレ系や、同国オランダのプログレッシブ・ロックバンド:Knight Areaのシンフォニック系にもメロディックさとメタリックな質感のギターのプレイよりも、随所にPorcupine Tree、The Pineapple Thief、Anathmeaを彷彿とさせるアンサンブルやサウンド・メイキングが聴かれるため、オルタナティブ系やサイケデリック系からプログレッシブ・ロックのシンフォニック系へクロスオーバーした感覚のあるバンドを聴く方にもおすすめです。
「In Vacuum」のおすすめ曲
1曲目は、6「Beautiful Sunrise」
Pink Floydの元Roger Watersによる特徴的なベースラインを彷彿とさせるフレーズが聴けた瞬間、現代的なプログレッシブ・ロックの展開にも、よりテクニカルさの比重が高いアンサンブルに1970年代のプログレッシブ・ロックな印象をもちました。
2曲目は、8「Clean Slate」
ネオ・プログレ、オルタナティブ・プログレ、シンフォニックなど、バンドが影響を受けたと云う1stアルバムから当アルバムでの音楽性の転換に、当楽曲を聴いていて「プログレッシブ・ロック」の素晴らしさを強く感じたとともに、どんな音楽性を取り込み昇華し楽曲へと仕上げたのかと、6「Beautiful Sunrise」ともに心馳せてしまいます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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