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プログレおすすめ:Jethro Tull「Thick As A Brick(邦題:ジェラルドの汚れなき世界)」(1972年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 1970年代, イギリス, フォーク, フルート


Jethro Tull -「Thick As A Brick」

第232回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレ・ハード系のプログレッシブ・ロックバンド:Jethro Tullが1972年に発表した5thアルバム「Thick As A Brick」をご紹介します。

Jethro Tull「Thick As A Brick」

コンセプト・アルバムだ!

「コンセプト・アルバムと考え、作ってはいない・・・。それなら本気でコンセプト・アルバムを。」

前作アルバム「Aqualung」はA面を『Aqualung』、B面を『My God』とそれぞれにサブ・タイトルがふられていたことで、市場に出るや否や、メディアはコンセプト・アルバムだと賑わたせます。Ian Andersonはコンセプト・アルバムとされたことを否定し、反発心が、当アルバム「Thick As A Brick」を作りだすのです。

そう・・・

コンセプト・アルバムにしてるよ。ちょっと物足りなさのね(Thick As A Brick)、と云わんばかりですね。

Jethro Tullの5作目にあたる「Thick As A Brick(邦題:ジェラルドの汚れなき世界)」は、1971年に発表された名作の4thアルバム「Aqualung」の次のアルバムです。

4thアルバム「Aqualung」から参加したJeffrey Hammond-Hammond(ベース)に、Ian Anderson(フルート、ギター、ヴァイオリン、サックス、トランペット、ボーカル)、Martin Barre(ギター、リュート)、Barriemore Barlow(ドラム、ティンパニ、パーカッション)、John Evan(オルガン、ピアノ、ハープシコード)の計5人で制作されています。

その音楽の特徴は、英国ロック薫り高きブルーズ・ロックを下敷きに、アーシーなアコースティカルからエレクトリックがバランス良く融合したアンサンブルも豊かに、1970年に発表された3rdアルバム「Benfit」以降、際立つプログレッシブ・ロックを成す構成でしょう。

当アルバムでは、David Palmerをまじえ、オーケストラ・アレンジを盛り込み、当時の発売フォーマットであるレコードの形態で2部構成となりますが、実質「Thick As A Brick」の約43分の1曲構成として捉えてもおかしくないぐらいの構成力をもった仕上がりで、イギリスで第5位、アメリカで第1位をそれぞれチャートで獲得しました。

架空の人物であろう8歳の天才詩人:ジェラルド・ボストックによる詩をもとに、Ian Andersonが作曲をした楽曲「Thick As A Brick」のタイトルが意味する「物足りなさ」や、アートワークに英国の新聞を施したアルバム・ジャケットとともに、まさに、同国イギリスのバンド:The Beatlesが1967年に発表した名盤アルバム「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」をはじまったトータルなコンセプト・アルバムに対し、

Jethro Tullからの風刺の効いた皮肉に満ち静と動の起伏も激しくもプログレッシブ・ロックのみならず、ロックでの名盤に挙げられるアルバムです。

楽曲について

1「Thick As A Brick – Part 1」は、冒頭、アコースティック・ギターとフルートの旋律で幕を上げ語られる吟遊詩人の唄の数々は、その歯切れの良いアコースティック・ギターの一音一音やフルートの旋律と同様に、ブルーズ色が薄まった音楽性にも、経験からくる豊かなボーカリゼーションの表現を感じえます。

エレクトリック・ギターとオルガンによるヘビーなアンサンブルや、アコースティック・ギターのストロークとエレクトリック・ギターのリフとのコントラスト、フルートの艶やかな旋律、エレクトリック・ギターのエクセントリックなフレーズや旋律に合いするフルートの旋律による機敏さなどが主にハードなアプローチの前半部に、オルガンとアコースティック・ギターが軽快さに、尺八のような感覚を憶えるフルートの旋律など主にトラッド・フォーク系かプログレッシブなアプローチの後半部もクロージング直前にタイトなリズムセクションと徐々にサウンド・エフェクトでフェードアウトします。

2「Thick As A Brick – Part 1」は、本来なら実質1曲ともなるだろう前曲のサウンド・エフェクトによるフェードアウトに呼応するかのようにフェードインで幕を上げます。そして、せわしくもタイトなリズムセクションで進行するヴァースに続き、フルートによる愛くるしいフレーズとティンパニをメインとしたアンサンブルやオルガンとギターによるハードなアンサンブルが交互に交わされていきます。

いくつか無音を挟みつつアヴァンギャルドさ醸し出すパート、1「Thick As A Brick – Part 1」の冒頭に立ち返ったようにそれでいてウェスタン風のアコースティック・ギターによるアンサンブル、エフェクトかかった浮遊さ溢れるサウンド・メイキングにオルガンやフルートも加わるアコースティカルなアンサンブル、ボレロ風のリズムセクションにフルートやギターによる様々なモチーフが溢れては交錯し合うタイトなアンサンブル、フルートとオルガンにリズムセクションのせわしい心美良いアンサンブルなど、1「Thick As A Brick – Part 1」以上に静と動のパートをダイナミックにメリハリをつけているのが印象的です。

そして、オーケストラを挟みつつも、ハードなアプローチとアコースティカルなアプローチなどで、楽曲全体を集約するかごとく、クロージングします。

・・・Your wise men don’t know how it feels・・・

・・・あなたがたの賢者には、どんな感じだかは分からないだろうに・・・

・・・To be thick as a brick・・・

・・・取るに足らない、煉瓦一枚のように、愚鈍となってしまうと・・・

約43分、5大プログレバンド:Emerson, Lake & Palmerのように猪突猛進とは言わないまでも、静と動でメリハリをつけているとはいえ、ベースとドラムによるリズムセクションの効くビートは印象的に、オルガンやギターをメインとしたアンサンブルに、ボーカルとボーカル以上に語るフルートによる豊かな表現は、一枚岩の物語として素晴らしいです。

一枚岩の物語は、瓦礫一枚のように、取りに足りない愚痴となってしまう、と語るかのようなクロージングは、約43分を聴いたあげくに聴き手へ伝えられる最後の一節かと思うと、何とも味わい深すぎますね。

[収録曲]

1. Thick As A Brick – Part 1(邦題:ジェラルドの汚れなき世界 – Part 1)
2. Thick As A Brick – Part 2(邦題:ジェラルドの汚れなき世界 – Part 2)

アコースティック・ギターのアルペジオやストロークの繊細さと味わい深いボーカル、オルガンとギターによるハードなアプローチなど、静と動のメリハリを効いたアンサンブルが好きな方におすすめです。

当アルバムを聴き、Jethro Tullのコンセプト・アルバム的な観点に興味を抱いた方は、次作1973年発表の6thアルバム「A Passion Play」もおすすめです。

また、英国ロックの名盤の1つとして、ロック・ミュージシャンとしてのIan Andersonのフルートの表現力を堪能して欲しいアルバムです。

アルバム「Thick As A Brick」のおすすめ曲

※1曲としての構成ととらえるため、控えさせていただきます※

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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