プログレおすすめ:The Tangent「The Music That Died Alone」(2003年イギリス)
The Tangent -「The Music That Died Alone」
第218回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:The Tangentが2003年に発表した1stアルバム「The Music That Died Alone」をご紹介します。
当初は、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックのバンド:PARALLEL OR 90DEGREESのキーボード奏者:Andy Tillisonのソロによるプロジェクトではじまったと云われてます。
The Flower KingsのメンバーであるRoine Stolt(ギター)が、Andy Tillisonのソロを手伝ったことをキッカケにし、このプロジェクトは、プログレッシブ・ロックバンド:The Tangentへと変貌します。
さらに、The Flower Kingsからは、Jonas Reingold(ベース)とZoltan Czorsz(ドラム)のリズムセクションと、1970年代のプログレッシブ・ロックバンドの重鎮:Van Der GraafからDavid Jackson(サックス、フルート)も迎え入られてます。そして、PARALLEL OR 90DEGREESの盟友であるGuy Manning(ボーカル、ギター、キーボード)とSam Baine(ピアノ、シンセサイザー)が集い、7人編成のバンドとなります。
異なる国で、異なるスタジオにて、それぞれがレコーディングをした7人のミュージシャンが奏でる音楽の化学反応は、極めてPARALLEL OR 90DEGREESよりも典型的なプログレッシブ・ロックを奏でるバンドであり、しばしば5大プログレバンド:YesやKing Crimsonのプレイ・スタイルを引き合いにだされることもあります。
1stアルバム「The Music That Died Alone」では、それ以上に、スピーディな展開にムーディな唄メロがあることや、カンタベリー系のバンド:Hatfield And The Northの楽曲「Chaos at the greasy spoon」をカバーしているとおり、カンタベリー系のエッセンスも抑えていくべきポイントです。
1970年代のプログレが詰め込まれた、クールでいて躍動的なクオリティの高いアルバムです。
楽曲について
冒頭曲1「In Darkest Dreams」は、8つのパートに分かれ約21分にも及ぶ大作です。
テンションを高めるシンセとギターのリフとサックスの旋律がアグレッシブな冒頭部「Prelude – Time for you」に、後半部でのKing Crimsonの第1期のフリー・ジャズな感覚が想起させるサックスの旋律もまじえ、いやがおうにも心は躍ります。
サックスの旋律のオリエンテッドさとギターのカッティングが軽やかにもヴァースが展開する「Night terrors」、ギター、ピアノ、オルガンによるジャージーなテーマが奏でられる「The midnight watershed」、Camelを想起させるメロトロンとフルートをまじえメロディックなヴァースの「In dark dreams」、アコースティック・ギターとマンドリンのアンサンブルによる「The half-light watershed」、「On returning」、タイトルどおり闇夜を切り裂くようなサックスの旋律とスパニッシュ風のギターとのアンサンブルの「A sax in the dark」、そして、最後に「Night terrors」のリプライズ「Night terrors reprise」をもって、キャッチな唄メロとコーラスワークに拡がり楽曲はクロージングを迎えます。まるで、リプライズの手法を含め、Yesの名曲「Close To The Edge」を想起させるような組曲です。
2「The Canterbury Sequence」は、Hatfield And The Northの楽曲「Chaos at the greasy spoon」(「The Rotter’s Club」収録)のカバーを挟み3つのパートに分かれ、カンタベリー系をリスペクトする気持ちがひしひしと伝わる約8分の構成です。
Pye Hastingsのスキャット、Jimmy Hastingsのフルート、Richard Sinclairのベース、Dave Sinclairのオルガンなど、Caravanを彷彿とさせる要素が存分に盛り込まれたかのような「Cantermemorabilia」、フルート、ピアノ、シンセサイザー、ギターが交互に旋律を重ねる「Chaos at the greasy spoon」、そして、マンドリンとギターが優しげなアンサンブルを奏でる「Captain Manning’s mandolin」でクロージングします。
3「Up-Hill From Here」は、アルバム楽曲中では最もParallel Or 90 Degreesを想起させる楽曲で、ギターとオルガンをメインのアンサンブルに、快活な唄メロのメロディラインとともに、プログレッシブ・ロックよりもシンプルなロックのイメージに近い仕上がりです。
アルバム・タイトル曲で最終曲4「The Music That Died Alone」は、4つのパートに分かれる約10分の楽曲です。ピアノ独奏にエレガントさと前衛さとジャージーさも感じえる「serenade」、フルートとサックスが冴える「Playing on」、ギターやピアノがアンニュイなテーマや、シンセサイザーのミニマルなフレーズなどファンキーさに溢れた「Pre-history」、そして、「Reprise」では、スキャット、シンセサイザー、サックスをまじえ、シンセサイザーがアトモスフェリックさを漂わせながら、サックスの旋律が響き、クロージングします。
アルバム全篇に、Roine Stoltのギター、Andy Tillisonのキーボード、Jonas Reingoldのベース、Zoltan Czorszのドラム、Sam Baineのシンセサイザー、Guy Manningのスキャット、そして、David Jacksonのサックスとフルートによる個々の名演が際立ち、冒頭曲1「In Darkest Dreams」の「Prelude – Time for you」が耳に入れば、アルバムのクロージングまで一気に聴かせるグルーブのクオリティの高いアンサンブルに満ちたアルバムです。
[収録曲]
1. In Darkest Dreams
– a Prelude – Time for you
– b Night terrors
– c The midnight watershed
– d In dark dreams
– e The half-light watershed
– f On returning
– g A sax in the dark
– h Night terrors reprise
2. The Canterbury Sequence
– a Cantermemorabilia
– b Chaos at the greasy spoon
– c Captain Manning’s mandolin
3. Up Hill From Here
4. The Music That Died Alone
– a A serenade
– b Playing on
– c Pre-history
– d Reprise
スリリングさやムーディさの緩急を分けて、テクニカルな演奏を聴かせながら、カンタベリー系のプログレッシブ・ロックを聴かれる方におすすめです。
また、David Jacksonのサックスとフルートの名演や、オルガンやピアノによるキーボードの演奏など、楽器単位でクオリティの高い演奏があるので、The Flower Kingsを聴く方にもおすすめな1枚です。
また、楽曲によっては、1970年代のプログレッシブ・ロックを代表するバンド(Hatfield And The North、Caravan、Yes、King Crimson、Camel)のサウンド・メイキングやアンサンブルの特徴が活かされており、その雰囲気を好きになった方は、ぜひこれを機会に、各バンドのアルバムに耳を傾けることもおすすめします。
アルバム「The Music That Died Alone」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲目の「In Darkest Dreams」
楽曲冒頭部「Prelude – Time for you」の躍動さに心躍らずにはいられません。そのまま、最終曲「The Music That Died Alone」まで一気に聴き入ってしまいます。
2曲目は、2曲目の「The Canterbury Sequence」
プログレッシブ・ロックのジャンルの中で、まだまだ十分には理解出来ないカンタベリー系の基を感じさせてくれる、自分の原点ともいえる楽曲です。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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