プログレッシブ・ロックのおすすめアルバム、楽曲、関連話など

   

プログレおすすめ:Different Strings「The Sounds of Silence, Part 2 The Counterfeits」(2015年マルタ)


Different Strings-「The Sounds of Silence, Part 2 The Counterfeits」

第217回目おすすめアルバムは、マルタのネオ・プログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Different Stringsが2015年3月16日に発表した3rdアルバム「The Sounds of Silence, Pt. II The Counterfeits」をご紹介します。
Different Strings「The Sounds of Silence, Part 2 The Counterfeits」

Different Stringsは、地中海に位置するマルタ共和国のChris Mallia(ギター、キーボード)が結成したバンドです。

当アルバムは、現代社会と生存しうる人々との軋轢を描いたコンセプトをもとにした2011年に発表された2ndアルバム「The Sounds of Silence Part 1: The Counterparts」の続編にあたります。

▼アルバム:Different Strings「The Sounds of Silence, Part 1: The Counterparts」のレビューは下のリンクから▼
プログレおすすめ:Different Strings「The Sounds of Silence, Part 1: The Counterparts」(2011年マルタ)

2ndアルバムでボーカリストがErroll Cutajarに変更となりますが、メインコンポンザーでバンドの中枢を担うChris Malliaの多種多様な楽器を駆使するマルチミュージシャンぶりが発揮された過去2枚と比べて、他にも、Julian Mallia(ドラム)、Carl Dingli(ドラム)、Johann Tabone(ベースギター)、Kurt Aquilina(ギター)、David Ciantar(キーボード)らを迎えることで、当アルバムの各楽曲へのクオリティを上げ、完成度を高める並々ならぬ姿勢が伺えます。

過去にロック、ブルース、ジャズ、フュージュン、クラシックなど幅広くジャンルを吸収し、引き合いに出されることのある5大プログレバンド:YesやGenesisによるメロウさやシンフォニック系のエッセンスと、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド:Queensryche、Dream Theater、Spock’s Beardなどにおけるメタル系のエッセンスを踏まえたアンサンブルで、前作アルバムでの約30分にも及ぶ組曲「Trance Of Sorrow」はないものの、10分以上の尺の楽曲が半分を占め、

メタル系のリフの比重が高く、ダイナミックな展開を魅せてくれるネオ・プログレ系のアプローチで聴かせてくれるアルバムと思います。

楽曲について

冒頭曲1「The King’s Shadow」は、オーケストラの優美な響きが印象的に幕を上げる楽曲です。1分30秒前後からハードエッジなギターにメタル系のリフと、オリエンタルムード漂わせるシンセサイザーがイントロのテーマを奏で、3分55秒前後からは、そのメタル系のリフをアンサンブルをメインにヴァースが進行していきます。当アルバムをレビューで書くきっかけとなったのは、マルタの地でありながらも、冒頭部のオーケストラの響きに、どことなく日本のビジュアル系のミュージシャンかと思わせるようなアレンジに溢れていたからです。何度聴いても日本のミュージシャンかと錯覚してしまいます。

2「Fatal Chronic Damage」は、冒頭曲1に続きメタル系のリフがアンサンブルをリードし、よりメタル系の楽曲に相応しい唄メロのメロディラインが聴かれる楽曲です。変拍子をまじえた複雑なリフでのヴァースとサビ部が繰り返されますが、4分前後からのメロディックな唄メロのパートと5分30秒前後からの哀愁をおびたキーボードとギターのソロによるメロディアスなパートの後に、冒頭部とは異なるメタル系のリフに、オルガンなど多彩な音色を駆使したキーボードのソロをまじえるプログレッシブな展開を挟みつつ、9分40秒前後に最初のサビ部へと戻り、楽曲はクロージングします。

ヘリコプターが飛び交いアナウンサーのSEがオープニングとクロージングを挟む3「The Abyss」は、たんたんとしたマーチ風のリズムで幕を上げるも、ギターの多種多様なギターのプレイと、終始、シンセサイザーも含め楽曲全体に不穏さを醸し出す楽曲です。メタル系のリフとシンセサイザーをメインのアンサンブルに、ずっしりと重いリズムセクションがたたみかける最初のヴァースを皮切りに、楽曲中盤で7分15秒前後からのアトモスフェリックなサウンド・メイキングとヴァースをアクセントにしつつも、5分10秒前後からのギターをメインとした変拍子を多用したアンサンブルによるインストルメンタルのパートとヴァース、9分30秒前後からのギターのリフとソロなど、プログレッシブな展開が堪能出来ます。

4「Legacy of War」は、ギターとキーボードがアルペジオでユニゾンを奏で、徐々にテンポアップしヒートアップする楽曲です。冒頭部のギターとキーボードのアルペジオをそのままアンサンブルにもつ哀愁を帯びた唄メロのメロディラインのヴァースへ繋がり、2分10秒前後からは、ランニングするベースがリードする疾走溢れるビート、3分10秒前後からはメタル系のリフのヴァース、5分前後からギターとキーボードが順にソロを奏でていきます。

5「The King’s Shadow (Reprise)」は、冒頭曲1「The King’s Shadow」の冒頭部を印象強く彩っていたオーケストラのメロディラインをギターがリードし、続くヴァースの唄メロに繋がっていきます。やはりこのメロディラインはアルバムのコアな部分となるのか、ピアノとオーケストラが並奏するアンサンブルも含め、約5分の尺の中で終始奏でられて、唄われてます。

最終曲6「Selfishness (Part II)」は、前作アルバムの冒頭を飾っていた楽曲「Selfishness – Part I」の続編にあたり、「Selfishness – Part I」と比肩しうるプログレッシブな展開が聴ける約16分にも及ぶシンフォニックな楽曲です。オーケストラ、ハーモニクスを利用したギター2本のシークエンス、シンセサイザーによるテーマなどが順を追う冒頭部に続き、メタル系のリフをメインとしたヴァースと、メロディックな唄メロやアコースティカルなセクションが複数もパートを重ね、ダイナミックに綴られていきます。そして、楽曲は、ピアノのフレーズでクロージングすると思いきや、突如、オリエンタルムードを醸し出すシタール風の旋律が奏でられ、クロージングします。

アルバム全篇、前作アルバムよりもメタル系のリフをメインとした比重が高く、キーボードやオーケストラが楽曲を彩り、時としてメロウでメロディックな唄メロも聴かせてくれるアルバムです。

[収録曲]

1. The King’s Shadow
2. Fatal Chronic Damage
3. The Abyss
4. Legacy of War
5. The King’s Shadow (Reprise)
6. Selfishness (Part II)

メタル系のリフをメインとするプログレッシブ・ロックが聴きたい方におすすめです。

もしも、当アルバムを聴き、Different Stringsが気になった方は、アルバムのコンセプト第1弾となる2ndアルバム「The Sounds Of Silence Part 1: The Counterparts」も合わせて聴くことをおすすめします。

アルバム「The Sounds of Silence, Part 2 The Counterfeits」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲6の「Selfishness (Part II)」
10分以上の楽曲であることと、楽曲タイトルや歌詞の世界観を踏襲していること以外、オルガンのリフも冴える1970年代初期のハードロック的なアプローチを盛り込み、よりプログレッシブ・ロックのエッセンスが高い楽曲「Selfishness – Part I」とは、それほど大きな関連性はないと感じてしまいます。しかし、楽曲「Selfishness – Part I」の冒頭部1分前後で聴かせてくれたオリエンタルムードを醸し出すシタール風の旋律が、突如、クロージングで奏でられ、そのまま終えるのは、やはり2曲とも意識して聴かずにはいらえません。

2曲目は、5曲目の「The King’s Shadow (Reprise)」
冒頭曲1「The King’s Shadow」の冒頭部のオーケストラのメロディラインが印象強いため、そのメロディラインをモチーフに、終始、ギター、ピアノ、唄メロのメロディラインが続いてしまうと、心を捉えて離れないからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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