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プログレおすすめ:Curved Air「Airconditioning」(1970年イギリス)


Curved Air -「Airconditioning」

第293回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックなバンド:Curved Airが1970年に発表した1stアルバム
「Airconditioning」をご紹介します。

Curved Air「Airconditioning」
Curved Airは、1970年に、Darryl Way(エレクトリック・ヴァイオリン)、Francis Monkman(ギター、オルガン、ピアノ、メロトロン、エレクトリック・ハープシコード、シンセサイザー)、Robert Martin(ベース)、Florian Pilkington-Miksa(ドラム)の4人で結成したバンドで、その後、Sonja Kristina(ボーカル)が加入し、デビュー時のベースとなるメンバーが揃いました。

バンド名の由来は、1950年代に揺籃期を迎えたテープループ技法や、1960年代に様式美よりも即興的要素を作曲に導入したアメリカの町名な作曲家:Terry Rileyが、1968年に発表した楽曲「A Rainbow In Curved Air」を短縮した言葉「Curved Air」です。その由来から察する通り、極小の音楽要素を集めて複雑で稠密な全体像を造り上げようとするスタイルは、プログレッシブ・ロックとして語られるには十分で、俗に折衷派と呼ばれるジャンルと捉えられてます。

Florian Pilkington-MiksaにRobert Martinが加わったフレキシブルでタイトなリズムセクションと、Darryl Way、Francis Monkmanの3人が織りなすアンサンブルは即興さとダイナミックさが切迫さに溢れてます。さらに、艶かかった色気を感じる女性ボーカル:Sonja Kristinaのボーカリゼーションとともに、マイナー調の楽曲で特に感じえる、妖艶さが堪らなくなります。

当アルバム「Air Conditioning」は、発売前にベーシスト:Robert Martinが脱退すると云うトラブルがあったものの、1970年に制作し発表され、当時のイギリスのチャートで8位にランクインしたヒット作であり、

即興さを感じつつも、当バンドの持つ妖しくも華麗で優美な構成美を感じてしまうデビューにして素晴らしきアルバムです。

楽曲について

鍵盤の上下動のフレーズに導かれ、リズムセクションと鍵盤がクイックネスで跳ねたリズムを刻み、印象的なギターのフレーズをリフレインしてはベースも絡み合うイントロで幕を上げる冒頭曲1「It Happened Today(邦題:今日突然に)」は、当時、シングル・カットに選曲されたほど、当バンドの代表曲の1つです。スタッカートの効いたフレーズから単音でランニングさせるベースのフレーズ、単音リフを多用したインプレゼーションに溢れたオブリガードなギターのフレーズ、跳ねた鍵盤、そして、何かを嘆願するかのようでいて、ダブルトラックで行き交うSonja Kristinaのボーカリゼーションの醸し出す妖しき、魔性とも云える感覚と、2分55秒前後にDarrylのヴァイオリンによる旋律が醸し出す優美な感覚が、相反したエッセンスと感じながらも、当バンドの持つ特徴(妖しさ、華麗で優美)を的を得た代表曲に相応しいです。そして、ヴァイオリンの旋律で徐々にフェードアウトし楽曲はクロージングします。

ヴァイオリンとギターがミニマルなフレーズを繰り返し幕を上げる2「Stretch」は、1970年代初頭に、T.REXやDavid Bowieに代表されるイギリスで隆盛したグラムロック系のバンドで魅せられたブギスタイルの楽曲です。ただし、2分10秒前後からのヴァイオリンとギター、2分20秒前後のオルガンがアンサンブルに加わることで不協和音を醸し出すような妖しさあるエッセンスは、グラムロック系が織りなす不協和音へのアプローチとは一線を画すものでしょう。ヴァイオリンとギターをメインとしエンド・ソロでクロージングします。

3「Screw」は、オルガンとヴァイオリンがサイケデリック風にも妖しげな雰囲気を醸し出したサウンド・メイキングに、幻想的にも進行する楽曲です。ミドルテンポでSonjaのけだるいボーカリゼーションが炸裂するヴァースでのエフェクティブなギターのフレーズ、2分30秒前後からのオルガンをバックに、ヴァイオリンの旋律と徐々に轟音で重なり合うギターのフレーズで短めにクライマックスに到達したと思いきや、オルガンの分厚いリフが盛り上げます。

個人的には、琴線に触れるとは異なり、ギター、オルガン、ヴァイオリン、ベースなど、それぞれのパートの旋律が、自らが「クール」と思うエッセンスに的を得たような好みをくすぐるところなんです。おそらく、この感覚が当レビューを読む方に的を得ないと、かなり独断と偏見ともなりかねないかもしれません。

パーカッシブなイントロから4「Blind Man」は、ヴァイオリンやギターをメインとしたアンサンブルに、Sonjaの呟きかけるようなボーカリゼーションも含め、ほのぼのとした楽曲で、目の前にほのぼのとした田園をサウンドスケープさせてくれます。前曲までの楽曲らや、次曲を考えれば、アルバムでは、小休止と思わしき感覚に陥りますが、インストルメンタル部でのメインメロディを、ヴァイオリン、ギター、ベースがそれぞれ呼応するかのように並奏する感覚には、やはりバンドのアンサンブルとサウンド・メイキングのクオリティの高さを感じずにいられません。

冒頭部からDarrylのヴァイオリンが炸裂する5「Vivaldi」もまた、バンドの代表曲ともいうべき、物憂げで退廃さに溢れ、切迫さあるアンサンブルが聴けます。ヴァイオリンの独奏に、切り裂くようなギターのフレーズと単音でルートを刻むベースに、約40秒前後からドラムも加わる畳み掛けるアンサンブルは、1970年当時にして重厚なアートロック的な色彩に溢れたサウンドが堪能出来ます。1分50秒前後から、ヴァイオリンのただただ縦横無尽な独奏へと移行していきます。4分前後からのチェンバーロック系か電子音楽的なフレーズがリフレインされる、まさにバンド名由来のサウンド・コラージュなパートであり、ギリシャで有名なミュージシャン:Vangelis Papathanassiouがメンバーだったシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Aphrodite’s Childらに代表される前衛的なパートが聴かれます。この前衛的なパートが途絶えた5分55秒前後に、冒頭部の物憂げで退廃さに溢れ、切迫さあるパートへと戻り、各楽器がクロージングに向けて音を畳み掛け、7分10秒前後に興奮も冷め遣らぬままとも云わんばかりにタイム感よりも勢いをもって一瞬の混乱さが似つかわしい。

ピアノとフィードバックしたギターの音色が殺伐とした様相を醸し出し、メロディックなピアノに続き、ヴァイオリンとベースのシークエンスなフレーズをバックに、官能的でメロディックなギターのフレーズで幕を上げる6「Hide and Seek」は、1970年代初頭、アメリカのThe Stoogesに代表されるガレージ・ロックを彷彿とさせるギターをメインとしたアンサンブルに、Sonjaのけだるいボーカリゼーションも含め、妖しくもおどろしい世界観が聴けます。5分10秒前後からは、冒頭部のピアノとフィードバックしたギターの音色が殺伐とした様相を醸し出しパート、メロディックなピアノの小パート、官能的でメロディックなギターのフレーズが再度聴かれクロージングを迎えます。

ディレイによるエフェクト処理されたギターサウンドのアンサンブルが特徴的な7「Propositions」は、ファーストタッチなリズムで進行し、サイケデリック/スペース系のラジカルなエッセンスをたっぷりと堪能出来ます。そして、Sonjaのボーカリゼーションは、インストルメンタル部に比べれば、短めなヴァース部にあって主張が激しく心に残りうります。

ピアノの流麗なフレーズをバックに、ヴァイオリンが物悲しい旋律を奏でる約3分30秒前後のインストルメンタル楽曲8「Rob One」を挟み、ギターとベースによるアンニュイなフレーズで幕を上げる9「Situations」は、その冒頭部のフレーズが唄メロのメロディラインに繋がり、Sonjaのボーカルラインにギターとベースがオブリガードなヴァースで進行します。2分前後からは、ミニマルなギターのフレーズに、朗らかなメロディラインのヴァースへと移行します。2分40秒前後からはメロトロンをバックに、ワウを効かせたエレクトリック・ギターの長めのソロ、ギターのソロに負けずと劣らずドライビングするベースラインも特徴的に、4分前後に直前の2番目のヴァースのパートへ、4分50秒前後に最初のアンニュイなパートへと戻り、再度、朗らかな2番目のパートへと移行し、楽曲はクロージングします。アルバム楽曲中でもアンサンブルが転々するプログレッシブな構成が堪能出来ます。

最終曲10「Vivaldi」は、5「Vivaldi」のヴァイオリンの旋律が炸裂し、電子音楽系、サウンド・コラージュなどが交錯しながら、オルガンの旋律と共に約1分40秒ほどで終えます。

アルバム全篇、1970年前後のアートロック、ガレージロック、グラムロックな骨組みを楽曲に感じながらも、ボーカルも含め、個々のメンバーが織りなすサウンド・メイキングや演奏力が高く、さらに、個性のぶつかり合うとも取れる音世界にそれでいて混沌を生み出す統一感さえ感じます。何度も繰り返してしまいますが、妖しくも華麗で優美な構成美を纏い、後にバンドの最高傑作ともいうべきアルバムを制作するにしては、既にファースト・アルバムにして素晴らしき作品だと思います。

[収録曲]

1. It Happened Today
2. Stretch
3. Screw
4. Blind Man
5. Vivaldi
6. Hide and Seek
7. Propositions
8. Rob One
9. Situations
10. Vivaldi With Cannons

1960年代後半から1970年代初頭にかけてのアートロック、ガレージロック、グラムロック、サイケデリック・ロックが好きな方で、アンサンブルに、ヴァイオリンやオルガンが好きな方におすすめです。

また、Sonja Kristinaの妖艶なボーカリゼーション、その妖艶さにバンド・サウンドを含めたスタイルに、個人的には「クール」と感じるのですが、1970年代初頭でかっこいい女性ボーカルのロック・バンドを探している方におすすめです!

当アルバムでCurved Airに興味を持ちましたら、ぜひ、デビュー時からの不動のメンバーで制作された1971年発表の2ndアルバム「Second Album」、1973年発表の3rdアルバム「Phantasmagori」までもおすすめです。

イギリスで俗に「5大プログレバンド」なるバンド(King Crimson、Genesis、YES、Emerson Lake & Palmer、Pink Floyd)があるかと思いますが、もしも「10大プログレバンド」があれば、個人的に、Rush、Kansas、Pentangle、Uriah Heepと並び、加えてしまうぐらいに好みなバンドです。

・・・そんなプログレな気持ち。みなさんはいかがですか?

アルバム「Airconditioning」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲目の「It Happened Today」
当アルバムをはじめて聴いた時に、当楽曲のイントロ部から心を鷲掴みされたかのように、強く印象に残り、その感覚のままアルバムを最後まで聴いてしまった・・・。シングル・カットされバンドの代表曲だということも納得してしまいます。

2曲目は、5曲目の「Vivaldi」
当アルバムのハイライトの1つにして、バンドの特徴であるDarryl Wayによるヴァイオリンが存分に聴けます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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