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プログレおすすめ:Different Strings「The Sounds of Silence, Part 1: The Counterparts」(2011年マルタ)


Different Strings-「The Sounds of Silence, Part 1: The Counterparts」

第216回目おすすめアルバムは、マルタのネオ・プログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Different Stringsが2011年に発表した2ndアルバム「The Sounds of Silence, Part 1: The Counterparts」をご紹介します。
Different Strings「The Sounds of Silence, Part 1: The Counterparts」

Different Stringsは、地中海に位置するマルタ共和国のChris Mallia(ギター、キーボード)が結成したバンドです。

5大プログレバンド:Yes、Genesis、Pink Floydや、1980年代以降、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド:Queensryche、Dream Theater、Spock’s Beardなどの音楽を引き合いに出されることもあるDifferent Stringsにとって、最も影響を受けたミュージシャンは、カナダのバンド:RushのドラマーであるNeal Peartであるとのことです。Rushの楽曲で作詞も担う、特筆な作詞家でもあるNeal Peartの書く詞に、Chris Mallia自身が人生に大いに影響を受けたとされ、その影響度合いは、1980年に発表されたRushの楽曲「Different Strings」(アルバム「Permanent Waves」収録)のタイトルをバンド名に冠したことからも物語っています。

1996年からいくつかバンド活動をしていたChris Malliaは、プログレッシブ・ロックをベースとしたバンド:Different Stringsでの活動に着手し、2004年には、ほぼアルバム4枚ほどの楽曲を書き溜めていたといいます。しかし、自身のボーカルには自信がもてず、Alan Mayoというボーカリストと出逢うことで、2006年に1stアルバム「…It’s Only the Beginning」を制作し発表にいたりました。

当アルバムは、現代社会と生存しうる人々との軋轢を描いたコンセプトをもとにしたアルバムの第1弾で、やはり、Rushが1993年に発表したアルバム「Counterparts」のタイトルからもそのフリークぶりは伺えます。

当アルバムからボーカリストがErroll Cutajarに変更となりますが、メインコンポンザーでバンドの中枢を担うChris Malliaの多種多様な楽器を駆使するクオリティは維持され、過去にロック、ブルース、ジャズ、フュージュン、クラシックなど幅広くジャンルを吸収し、引き合いに出されることのある5大プログレバンド:YesやGenesisによるメロウさやシンフォニック系のエッセンスと、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド:Queensryche、Dream Theater、Spock’s Beardなどにおけるメタル系のエッセンスが満載の約30分にも及ぶ5「Trance of Sorrow」とともに、

1970年代のプログレ・ハード系を彷彿とさせるダイナミックな展開を魅せてくれるネオ・プログレ系のアルバムと思います。

楽曲について

人々の会話が交錯し合うSEとシンセサイザーによる不穏さに、シタールの音色がオリエンタルなムードへ漂わせる冒頭曲1「Selfishness – Part I」は、1分30秒前後からメタル系のリフに導かれるままに、豊富なジャンルのエッセンスが入り混じる躍動的な楽曲です。2分50秒前後からのずっしりと重いハードロック風のアンサンブル、3分30秒前後と4分40秒からのアメリカン・プログレにも通ずるメロディックで突き抜けたアンサンブル、4分前後からのリズムセクションをフォーカスしたアンサンブル、5分30秒前後からの1970年代のオルガンを交えたブルーズを下敷きとした英国ハードロック風のアンサンブル、6分50秒前後からのよりテクニカルなアプローチ重視のハードロック風のアンサンブル、7分10秒前後からのモダンでスタンダードなロックのアプローチにオルガンと速弾きが炸裂するギターのソロ、9分前後の不穏さ醸し出すオーケストラとコーラスのパートなど、めくるめく多種多様なアプローチが聴けます。

2「Time and Again」は、ピアノとオーケストラによるヴァースから、オルガンのリフやリズムセクションが加わりダイナミックな展開を魅せるバラード調の楽曲です。メロウでメロディックな唄メロを包み込むように、コーラスワークも含め、アンサンブルがつづくさまが印象的です。

エフェクトかかったギターとキーボードをメインとしたアンサンブルがフェードインし幕を上げる3「Let Me Out of Here」は、オルガンのリフが印象的にもギターのリフが冴え、ソウルフルな唄メロでのヴァースと、メロウな唄メロとコーラスワークが印象的なサビ部をもつ楽曲です。1970年代を彩るオルガンの音色に溢れ、ミドルテンポにもダイナミックに聴かせてくれます。

4「Victims of Love」は、オルガンのリードに導かれ、オルガンとシンセサイザー、ギターをメインとしたアンサンブルに、プログレ・ハード的なアプローチを聴かせてくれる楽曲です。当楽曲でもメロウな唄メロの良さが際立ちますが、3分25秒前後からのオーケストラによるフレーズとともに、メロディックなギターのソロなど、ダイナミックな展開が堪能出来ます。

最終曲5「Trance of Sorrow」は約30分にも及び組曲です。冒頭部から18分15秒前後までの前半部では、6分30秒前後からのジャズ系のピアノをメインとしたパート、8分前後からのオーケストラとシンセサイザーとアコースティカルなギターの静のパート、17分10秒前後のオリエンタルムードなパートを交えながらも、プログレ・メタル系の多種多様なリフをベースとした静と動を行き交う展開を聴けます。さらに、18分15秒前後から23分前後までの中間部では、オーケストラをバックにしたヴァースを皮切りに、18分45秒前後からの自然SEとピアノのアブストラクトな断片に、続くフルートの旋律と、徐々にアトモスフェリックさの比重が増え、21分10秒前後からのギターとヴァースによる静の比重が高い展開を聴けます。そして、23秒前後からクロージングまでは、大胆にもギターのリフがアンサンブルを切り裂き、ドラマチックなギター・ソロを合図に、プログレ・ハード系の突き抜けるギターとオルガンをメインとしたアンサンブルが、メロウでメロディックな唄メロとともに、爽快に突き抜けていきます。

アルバム全篇、楽曲前半部でのプログレ・メタル系が濃厚な大作5「Trance of Sorrow」の印象が強いものの、オルガンの音色を交え、1970年代のハードロック系やプログレ・ハード系のエッセンスに溢れ、いっぽいうで、メロウでメロディックな唄メロが際立つ楽曲も多いアルバムです。

[収録曲]

1. Selfishness – Part I
2. Time and Again
3. Let Me Out of Here
4. Victims of Love
5. Trance of Sorrow

1970年代のオルガンを交えたハードロック系やプログレ・ハード系などのエッセンスを含むネオ・プログレ系のバンドを聴きたい方におすすめです。

また、ネオ・プログレ系の観点からも、メロウでメロディックな唄メロを好きな方におすすめです。

当アルバム聴き、Different Stringsが気になった方は、当アルバムの続編にあたり、楽曲にメタル系のリフの比重が高い2015年に発表された2ndアルバム「The Sounds Of Silence Part 2: The Counterfeits」もおすすめします。全体的なサウンド・メイキングやアンサンブルに異なりを感じるかもしれませんが、コンセプトとしての繋がりと、当アルバムにおけるサウンド・メイキングの一端と、最終曲5「Trance of Sorrow」に近いサウンド感覚の比重が高いので、おすすめなのです。

▼アルバム:Different Strings「The Sounds of Silence, Part 2 The Counterfeits」のレビューは下のリンクから▼
プログレおすすめ:Different Strings「The Sounds of Silence, Part 2 The Counterfeits」(2015年マルタ)

アルバム「The Sounds Of Silence Part 1: The Counterparts」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲5の「Trance of Sorrow」
約30分にも及ぶ大作だからです。

2曲目は、冒頭曲1の「Selfishness – Part I」
メタル系のリフに導かれ、さまざまな音楽ジャンルのエッセンスが盛り込まれていると同時に、当アルバムの次作2ndアルバム「The Sounds Of Silence Part 2: The Counterfeits」の最終曲「Selfishness – Part Ⅱ」を聴けば、気に留めずにいられない楽曲だからです。ぜひ聴き比べて欲しいです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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