プログレおすすめ:Delusion Squared「The Final Delusion」(2014年フランス)
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最終更新日:2015/12/30
2014年, シンフォニック, フランス, 女性ボーカル Delusion Squared
Delusion Squared -「The Final Delusion」
第169回目おすすめアルバムは、フランスのゴシックさが垣間見えながらもシンフォニック系のプログレッシブ・ロックを聴かせてくれるバンド:Delusion Squaredが2014年に発表した3rdアルバム「The Final Delusion」をご紹介します。
当アルバムを手にしたプログレッシブ・ロックのファンは、アルバム・ジャケットの世界観やそのアルバム・タイトルに、スイスのネオプログレ系のロックバンド:Shakaryが2002年に発表したアルバム「The Last Summer」を想起してしまった方もいらっしゃるかと思います。ただ、そんな想像も関係がないほどに、1st同名アルバム「Delusion Squared」や2ndアルバム「Ⅱ」で魅せたバンドらしさ溢れるサウンド(アコースティック性とメタリック性)を活かし、よりメタリックな質感の印象が強い仕上がりです。
当アルバムは、1stアルバムから続く3部作の最終作として、Steven Francis(ギター、キーボード、ドラム)とEmmanuel de Saint Meen(ベース、キーボード)に、ボーカル兼ギターのLorraine Youngによる従来のトリオ編成で制作されています。
「Ordeal」、「Awareness」、「Deliverance」 、「Surrender」の4つのセクションに分かれ、全13曲約73分にも及ぶアルバム全篇は、ゴシック系のアンサンブルに、アコースティック・ギターのサウンド・メイキングでの2つの要素(ストロークとアルペジオ)のパートが巧みに組み込まれ、過去2作以上の特徴を活かしながらも、たとえば、アメリカのプログレッシブ・ロックバンド:Rushのようにテクニカルなメタリックさや、5大プログレバンドの1つ:Pink Floydの浮遊さを活かしたサウンド・メイキングで感じさせてくれます。
楽曲について
冒頭曲「The Same River Thrice」は、エレクトリック・ギターをメインとするオープニングのアンサンブルで感じえる躍動さは、1st同名アルバムや2ndアルバム「Ⅱ」と同様な印象も感じさせてくれますが、全篇インストルメンタルで展開する構成には、特徴ともいうべきアコースティック・ギターのフレーズやパートは見受けられず、続く2「Diaspora」も含め、これまで以上にビビットでハードなアプローチをするバンド・サウンドが変わったのかと考えさせられます。
ただ、3「Patient Zero」を聴けば、従来のファンで、自分と同様に感じてしまったことを取り越し苦労と感じることでしょう。3分20秒前後からのハードな展開や4分前後のオリエンタル風味を醸し出すシンセの音色なども、Lorraine Youngが奏でるアコースティック・ギターのアルペジオをメインとしたアンサンブルと、メランコリックな唄メロのメロディラインも含め、Delusion Squaredのバンドらしさが溢れてます。
続く4「Reason of State」もまたアコースティック・ギターのアルペジオをメインとしたアンサンブルに展開し、たぶんにフィードバック音を織り込みながら、アンサンブルにエレクトリック・ギターの伸びやなトーンのフレーズを散りばめ、6分前後からクロージングに向けて展開するクラシカルなピアノのフレーズは余韻を残すように、ミディアム・テンポで聴かせてくれる楽曲です。
5「Devil Inside」は、全曲4「Reason of State」のサウンド・アプローチを繋げ、エレクトリックな音色も織り込み、拡げるかのように展開する楽曲です。4分30秒前後には、前作2ndアルバム「Ⅱ」の最終曲「Unexpected Messiah」で垣間見せた男性のSEと女性のナレーションをほんの数秒ほど楽曲のアクセントで付け加えるなど、当楽曲以外にも云えますが、アルバム3部作の1枚として、集大成ともいうべき音の断片がタペストリーのように織り込まれているのです。
よりアコースティカルを重視した展開を魅せる6「Last Day of Sun」は、アンビエントな空気を醸し出すサウンド・メイキングにより楽曲全体に幻想さが醸し出されています。まるで夜明け前のおぼろげにも日の出を待つ時間のようなサウンドスケープを彷彿とさせてくれるプログレッシブな展開が素敵な仕上がりと思います。
7「Finally Free」は、典型的なDelusion Squaredのバンド・サウンドと感じる展開が愉しめる楽曲です。アコースティック・ギターは楽曲全体をリズミカルにリードし、ハードなアプローチのギターのフレーズやワウを効かせたギターのオブリガード、5分30秒前後の幻想さも感じえるパートも交えながら聴かせてくれます。
アルバムの楽曲中でもアコースティック・ギターのアルペジオも含め、幻想さよりもアンニュイな印象を与える
8「Prisoner’s Dilemma」、アコースティック・ギターが特徴の当バンドでも、そのアコースティカルなパートがまるでPorcupine Treeを彷彿とさせる9「Black Waters」、さらにアコースティック・ギターとオーケストラが構成を織りなす10「By The Lake (Dying)」など、気が付けば、アルバム冒頭部の2曲の印象を忘れてしまうかのように、Lorraine Youngのアコースティック・ギターがやはり当バンドの骨子であると再認識させてくれます。
そして、冒頭曲1「The Same River Thrice」のハードなアプローチを再提示し聴かせてくれる11「Oblivion for My Sin」から、よりドラミングはハードに、ネオプログレ風のシンセを織り交ぜ、12「Persistance of Vision」と最終曲13「Deus in Machina」へ雪崩むように一気に聴かせてくれます。
過去2作のアルバムでは、アコースティック・ギターとハードなアプローチのパート分けやアンサンブルを1曲1曲で感じさせてくれながらも、当アルバムは、アルバム3部作の最終章に相応しく、全13曲にさまざまなアプローチで聴かせてくれます。さまざまなアプローチといっても、さまざまなジャンルのごった煮ということではなく、アコースティックさとハードさの融合が通り一遍でなく、どの楽曲も特徴的に聴かせてくれるんです。また、楽曲によっては、随所にアンビエントなサウンド・メイキングも際立ち、時にポスト・ロック、時に、イギリスのPorcupine Treeをよりメタリックさを薄らいだ印象を与えてくれるんです。
[収録曲]
Ordeal
01. The Same River Thrice
02. Diaspora
03. Patient Zero
04. Reason of State
Awareness
05. Devil Inside
06. Last Day of Sun
07. Finally Free
Deliverance
08. Prisoner’s Dilemma
09. Black Waters
10. By The Lake (Dying)
Surrender
11. Oblivion for My Sin
12. Persistance of Vision
13. Deus in Machina
たとえば、「イギリスのPorcupine Treeのメタリックさの比重を下げ、アコースティックなアプローチが多い女性ボーカルに置き換えたバンドのアルバム」という例えにピンときた方はぜひ聴いてみて下さい。
それよりも、女性ボーカルの唄メロも大切に、アコースティックさとハードさを兼ね備えた演奏が聴けるプログレッシブ・ロックを探している方にもおすすめです。
当レビュでDelusion Squaredに興味を持たれた方は、3部作の残り2枚(2014年の1st同名アルバム「Delusion Squared」と2ndアルバム「Ⅱ」)を聴いてみてはいかがでしょうか。当アルバムよりも、残り2枚の方が、Lorraine Youngのボーカリゼーションはキュートさを仄かに感じさせてくれるのではないと思います。
アルバム「The Final Delusion」のおすすめ曲
1曲目は7曲目「Finally Free」
アルバムの中盤を引き締める存在としても、過去3部作に連なる当バンドの特徴を存分に聴かせてくれる楽曲として、印象深いからです。
2曲目は6曲目「Last Day of Sun」
これまでのアルバムや当アルバムでもそれほど印象が低い鍵盤やシンセをメインとしたアプローチが新鮮に聴こえました。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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