プログレおすすめ:Theo「The Game Of Ouroboros」(2015年アメリカ)
Theo -「The Game Of Ouroboros」
第113回目おすすめアルバムは、アメリカのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Theoが2015年1月に発表した1stアルバム「The Game Of Ouroboros」をご紹介します。
Theoは、アメリカ人のJazz寄りのハモンド・オルガンも駆使するキーボード奏者:Jim Alfredsonが率いるプロジェクト・バンドです。そのJim Alfredson(ボーカル兼キーボード)を含め、Gary Davenport(ベースギター)、kevin DePree(ドラム)、Jake Reichbart(ギター)による4人編成のバンドです。当アルバムを制作するにあたり、イギリスのプログレッシブ・ロックでもGentle Giant、Emerson, Lake & Palmer、Genesisらに影響を受けたアルバムを制作するために、有数のミュージシャンを集めています。
楽曲について
コール音から会話のSEで幕を上げる冒頭曲「The Game Of Ouroboros」は、同国アメリカのSpock’s Beardを彷彿とさせる展開が印象的な楽曲で、アルバムのオープニングとしては、徐々にクレッシェンドしていくサウンド・メイキングに相応しさを感じます。Jim Alfredsonのキーボードのエフェクト音とピアノのフレーズに、kevin DePreeのドラムのタムの音がデジタルにソフィケイトされたアンサンブルがミステリアスさを醸し出し、元ASIAのJohn Payneの声質に近しい振り絞るように発生するJim Alfredsonのボーカルぜーションとkevin DePreeのコーラスによる唄メロの展開にアメリカン・ロックらしさも感じます。
キーボードとタムの効果的なアンサンブルにもバンドとして一体感があり聴きやすさがある
2「The Blood That Floats My Throne」も冒頭曲1と同様に会話のSEから幕を上げ、まるでドイツのバンド:A Tangerine Dreamや初期Novalisを彷彿させるクラウトロック寄りのムーグのサウンドでミステリアスなアンサンブルが印象的な楽曲です。3分30秒前後からのMoog Voyager、4分30秒前後からのHammondによる両ソロ・フレーズも、唄メロも含めたミステリアスな楽曲の構成に色を添えています。
前曲2から組曲の一部のように、クラウトロック寄りのアンサンブルがスムーズにオープニングに繋がる3「CCreatures of Our Comfort」は、kevin DePreeによるレゲエ・リズムを活かしながらも展開する楽曲です。クロージングには会話のSEが入ることや、4曲目以降には、同様な音処理がないことで、もしかすると、1曲目から3曲目までで1つのコンセプトを持つ組曲なのかしれません。
4「These Are the Simple Days」は、一定のピアノ一定のシークエンスを主体とし、淡々とした唄メロのメロディラインがメランコリックにも、聴いていて束の間の安らぎを感じさせてくれる楽曲です。抑制を効かせたボーカリゼーションのJim Alfredsonのヴァースも印象的に、ただただ身を委ねて聴き入ってしまいます。2分40秒前後から6分40秒前後までのソロ・パートは、唄メロのヴァースを延長したかのような心地良いメロウなシンフォニック系のアンサンブルが聴けます。
当楽曲でも、ムーグの音色とともに、アンサンブルに加わるバッキングコーラスが浮遊さを生み、軽やかでいて、なサウンドスケープを届けてくれます。4分前後のメインとなるムーグ・シンセのバッキングに、元YESのRick Wakemanのような音処理を連想させるフレーズが聴けた時にはニンマリとしましたね。
5「Idle Worship」は、ビートルズ直系のようなメロディアスな唄メロとともに、過去のプログレッシブ・ロックをリスペクトとしたような様々なエッセンスが垣間見える印象的な楽曲です。冒頭部からの変拍子を多用したリズム・セクションやコーラス感覚にはPhill Collins期Genesis、6分前後からのJazz系のタッチを中心としたJake ReichbartによるギターとJim Alfredsonによるローズ・ピアノのフレーズにはCaravan、12分前後からのメロディラインにはメロウなCamelなどを彷彿させてくれます。ネオ・プログレ系とも捉えるファンタジックさ溢れる仕上がりと思います。
最終曲「Exile」は、キーボードのエフェクト、ピアノ、ハモンドを主体とした不穏さを醸し出すアンサンブルに、アンニュイな唄メロのヴァースが印象的な楽曲です。特に、8分前後からのARP synthのソロ・フレーズとギターのカッティングによる演奏パートが圧巻です。クロージングまで一気に駆け抜ける演奏にただただ圧倒され、聴き入ってしまいます。
キーボードをメインとしたアンサンブルに、過去のシンフォニック系やクラウトロック系のプログレッシブ・ロックのエッセンスの影響を受けながらも、決して懐疑的にならず、モダンなテイストに仕上がったアルバムと思いました。また、キーボードをメインとしながらも、楽曲によっては個々のメンバーの良さを活かしたパートやアンサンブルが濃厚にでており、決して1人のワンマン・プロジェクトという印象はもちませんでした。アルバム全篇を通じて聴くことで、メンバーが一体となったバンドの演奏が愉しめるアルバムと感じるかと思います。
[収録曲]
1. The Game Of Ouroboros
2. The Blood That Floats My Throne
3. Creatures of Our Comfort
4. These Are the Simple Days
5. Idle Worship
6. Exile
当アルバムを制作する前のきっかけとなったGentle Giant、Genesisなどのイギリスのプログレッシブ・ロックなバンドから連想し、聴いてみたいという方におすすめです。いっぽうで、クラウトロック系を彷彿させる音処理があるため、馴染がなくはじめての方はアンビエスト風の一種と感じえた方が良いかもしれません。
エッジの効いたギターやアヴァンギャルド系のエッセンスはなく、どちらかといえばシンフォニック系のサウンドに近しいと思いますので、キーボードをメインとしたシンフォニック系のプログレッシブ・ロックを聴く方にもおすすめです。
アルバム「The Game Of Ouroboros」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲「Idle Worship」
当アルバムでは最もポップで「浮いた印象」のある楽曲のように思えて、最後まで聴き入ると、シンフォニック系のプログレのエッセンスが溢れた素敵な仕上がりであり、聴いている時の心地良さが堪らないからです。
2曲目は、2曲目「These Are the Simple Days」
普通に聴いてしまえば、ビルボードのランキング上位に並ぶ美メロを唄う癒し系の歌手のようなイメージさえあります。プログレッシブ・ロックの楽曲だと忘れてしまい、聴いてしまいます。美メロに溢れ、心が癒されます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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