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プログレおすすめ:Coshish「Firdous」(2013年インド)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2010年‐2013年, インド, プログレッシブ・メタル


Coshish -「Firdous」

第107回目おすすめアルバムは、インドのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Coshishが2013年に発表した1stアルバム「Firdous」をご紹介します。
Coshish「Firdous」

Coshishは、2006年に、ボーカル兼ギターのMangesh GandhiとギターのShrikant Sreenivasanのデュオで結成されたのがはじまりです。その後、メンバーチェンジを変えながらも、2008年にベースのAnish Nair、ドラムのHamza Kaziの2人が加わることで、現在のメンバー構成となっています。

バンドの音楽は、一聴すると、ラガー・ロックやシタールがアンサンブルに加わった、俗に云うインドの地を連想させる特有のエッセンスはほぼ感じられず、オルタナティブ・ロックやポストロックの系統に近しいです。

より現代のプログレッシブ・ロックシーンでいえば、アメリカのTOOLやイギリスのPorcupine Treeを引き合いに出してもおかしくないかもしれません。ただ、へヴィ・メタル、ハードコアなどの要素もただただありますが、メインの2人が奏でれるギターのフレーズには、アンビエントやインダストリアルを感じさせるところもあり、よりモダンなテイストへ落とし込んだメロウな唄メロを重視したアンサンブルが特徴でしょうか。また、その唄メロには、インドの地で敬愛する映画音楽やシンガー・ソングライターのメロディセンスがブレンドされて、アルバムを聴く前に抱いていた先入観よりもメロディアスなんです。これまでは、
プログレッシブ・メタルに、敬愛するインドのミュージシャン系のメロディセンスを織り込んだポストロック寄りなサウンド

でしたが、メタル系のハードエッジなギターサウンド以外にも、洗練されたアンビエンスな音色を活かしたギターのストローク、フレーズや、随所に変拍子を織り交ぜ、ベースとドラムによるグルーブ感と、Porcupine Treeが一時期魅せたサイケデリック/スペース系のエッセンスを感じます。たとえば、5大プログレバンドの1つ:Pink Floyd的な音のスペースを活かしたサウンド・メイキングを感じることでしょう。

楽曲について

クリーントーンのギターに導かれ、少しハスキーなヴォイスで囁きにも似たヴァースで幕を上げる冒頭曲「Firdous」には、メタル系よりもエコー処理されたクリーントーンの2台のギターによるストロークとカウンターメロディのフレーズで音の隙間を埋めていくようなサウンド感が特徴な楽曲です。ヴァースの唄メロも楽器のアンサンブルは、クロージング直前で動へと移行しながらも、ほぼ静の抑制を効かせつつも、奥行きや拡がりを活かしており、そこから感じ得る浮遊さがたまりません。

ヒンディー語の唄メロに違和感もなく、ただただ素敵な音楽に出逢ったと感じるだけ

そこにはアヴァンギャルドな要素も皆無で、ポストロック的な美メロが溢れています。この冒頭曲「Firdous」と同様に、2「Raastey」以降も音の隙間を埋めていくギターを中心としたアンサンブルに近しいアンサンブルが織り込まれ、唄メロの印象が強い楽曲が大半を占めています。

筆者にとっては、ヒンディー語による唄メロのメロディラインは、時にはブリティッシュ・ロック的に感じえてもしまうんです。もしかすると、少なくとも日本語よりもヒンディー語の方が英語的なイメージで違和感なく楽曲が聴けるからなのかもしれません。

タイトなリズム感や中間部のギターによるダーク/アンビエントさがある5「Who Kho Gaye」や中間部から後半部にかけてメタル要素の強いパートの7「Maya」も交えながら、アルバム中盤以降の楽曲では、よりプログレッシブなエッセンスの比重が高まるダイナミックな構成も堪能出来ます。

そして、約8分の長尺のインストルメンタルな楽曲の最終曲「Mukti」は、後半4分間のアンサンブルはまさにプログレッシブ・メタルなエッセンスによる動とアルバム全篇のポストロック的な解釈がバランス良く愉しめる楽曲と思います。

当アルバムは1stアルバムですから、次作2ndアルバムでは最終曲「Mukti」の動のアプローチさを強めたアンサンブルへと変貌していくのか、それとも、当アルバムで感じ得る印象により奥行きや拡がりをもたせプログレッシブ系のエッセンスを強めていくのか、楽しみですね。

個人的には、当バンドの特徴的なギターのアンサンブルには、スウェーデンのMeshggahのようなポリリズムさやシンコペーションを多用した複雑なリズムを連想もしましたし、サウンドの奥行きや拡がりには深みがありつつも音の隙間を埋めていくようなプログレッシブ・メタルへと変貌を遂げたKanivoolの静のイメージに近しいとも感じました。

[収録曲]

1. Firdous
2. Raastey
3. Coshish
4. Behti Boondein
5. Who Kho Gaye
6. Hum Hai Yahin
7. Maya
8. Rehne Do
9. Bhula Do Unhey
10. Mukti

アメリカのTOOLやイギリスのPorcupine Treeだけでなく、TOOLから派生したA Perfect CircleやIsisなどのオルタナティブ・ロック系にも近くモダンなプログレッシブ・メタルを聴く方にもおすすめです。

まだ当アルバムではプログレッシブ・メタルなエッセンスの比重は低いと感じますので、これまでオルタナティブ・ロックやポストロックを聴いてきた方や、プログレッシブ・ロック然とすればPink Floydなどの空間処理のサウンド・メイキングな好きな方におすすめのアルバムです。

ポストロックでいえば、美メロといえる唄メロのメロウさも特徴で、バンドが敬愛を受けたインドのミュージシャンの音楽性なども含め、探究するのも良いのではないでしょうか。

アルバム「Firdous」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲「Firdous」
冒頭の1分間を聴いた時に、インドの地の音楽だと先入観を持って聴いてはもったないと感じました。ただ、その感じ得たエッセンスが約6分半の楽曲でクロージングするまで持続するのか、とも思いましたが、ヒンディー語による美メロも含め、最初の1分間から期待を裏切らない素晴らしい仕上がりと感じたからです。

2曲目は、2曲目「Raastey」
冒頭曲「Firdous」で後半部の動のパートを除けば、当楽曲は冒頭曲「Firdous」に躍動さを付け加えたような、冒頭曲「Firdous」の続編を感じさせてくれるからです。どうしても、冒頭曲「Firdous」と切っては切り離したくないです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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