プログレおすすめ:Syndone「Odysseas」(2014年イタリア)
公開日:
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最終更新日:2015/12/02
2014年, イタリア, イタリアン・プログレ Syndone
Syndone – 「Odysseas」
第72回目おすすめアルバムは、イタリアのプログレッシブ・ロックバンド:Syndoneが2014年に発表したアルバム「odysseas」をご紹介します。
バンドは、Nik Comoglio(キーボード)、Francesco Pinetti(ビブラフォン)にRiccardo Ruggeri(ボーカル)の基本3人構成に、ドラム、フルートの奏者がゲスト参加しています。
トリオ編成によるヴィンテージ感を漂わせたオルガンに、ビブラフォンが絡みながら、時にクラシカルでいてジャズタッチのピアノが各楽曲を彩り、ダイナミックさを演出しています。
さらに、ギリシャ神話の登場人物がちらほらする当アルバムタイトル「Odysseas」や楽曲タイトル(「Penelope」、「Poseidon」、「Nemesis」)からギリシャの地を包括したようなアレンジを連想するかと思います。プログレシッブさのある伴奏で歌い上げるギリシャの歌姫:Savina Yannatouの楽曲のように、たとえば冒頭曲1「Invocazione Alla Musa」のイントロのビブラフォンの音階などからは、地中海やエーゲ海をのぞむギリシャの地を感ずるエキゾチックなアレンジが特徴ですね。ヴォーカルはイタリア語による歌詞でオペラに通じるヴィブラードを活かしたシアトリカルさで高らかに唄いあげつつ、スローテンポの楽曲では枯れた味わいの清涼さを送り届けてくれます。シアトリカルさがあるからこそ、ピアノを基調としたスローテンポの楽曲ではよりクラシカルな気品のある様相を感じずにいれません。
楽曲について
小気味良いビブラフォンの音色とリズミカルさで幕を上げる冒頭曲1「Invocazione Alla Musa」は、オルガン、ムーグシンセ、ピアノによるアンサンブル、1分30秒からのムーグシンセによるソロフレーズにも、冒頭のビブラフォンが特徴的なフレーズを聴かせており、終始、躍動感があり、3分30秒で終えてしまうのがもったいぐらいに素敵な演奏が聴けます。
2「Il Tempo Che Non Ho」は、2010年発表の3rdアルバム「Melapesante」挿入歌「magritte」にも近いスローテンポの楽曲です。「magritte」よりは演奏もRiccardo Ruggeriのボーカルも抑制を抑えつつ、当楽曲でも静寂さに響くビブラフォンのフレーズがとても印象的なんです。地中海の浜辺の木陰でひっそりと佇み、夏の避暑地のようなイメージに近しいサウンドスケープを感じさせてくれるんです。ただ、この2「Il Tempo Che Non Ho」は次曲3「Focus」の序曲とも捉えるべきか、オルガン、ピアノに、ホーンセクションのアンサンブルがダイナミックに展開し、さらにシアトリカルさ十分なボーカルが合わされば冒頭曲1「Invocazione Alla Musa 」よりもハードなタッチに、当アルバムの本来のオープニングと錯覚してしまうぐらいです。2分30秒から中間部のシンバル、ビブラフォン、ピアノによるジャズタッチなテーマに、ホーンセクションのアクセントを挟みながら、この威風堂々としたサウンドを堪能出来ます。4「Penelope」ではそのアンサンブルも同様にダイナミックに展開し、5「Circe」は3「Focus」の中間部のようなジャズタッチな演奏を下敷きに、ベースギターの独特なフレーズによるリード感とともに、フリーキーなシンセのテーマも絡み恍惚してしまいそうです。
ビブラフォンも含む各楽曲が醸し出すアンニュイなサウンド感で、スローテンポな楽曲とは異なり、アルバムの1区切りと感じさせてもくれる6「Ade」にも身を委ねていれば、たとえ歌詞が分からなく当アルバムを聴いていても、1曲1曲独立しておらず、繋がりのあるアレンジを感じさせてくれるんです。
冒頭曲から様々なタッチのアンサンブルにも芯を感じさせて、各楽曲が連なり心へ浸透してくるんです。
1分40秒前後からのヴァースの伴奏となるピアノの華麗なタッチから、楽曲はシンセをリードとした躍動的な展開となります。さらに、続く7「Poseidon」から10「Eros & Thanatos」までインストルメンタルな楽曲も挟みながら、6「Ade」後半部から繋がるダイナミックでいて、フリーキーな演奏感も聴けます。
11「Vento Avverso」は映画のエンディングシーンを想起させるようなオーケストレーションのイントロが印象的に、2ピアノとムーグに導かれ、ピアノの伴奏で歌い上げられるバラードタイプの楽曲です。「Il Tempo Che Non Ho」よりも起伏さのあるメロディアスな唄メロをシアトリカルに歌い上げるRiccardo Ruggeriの歌声が素敵です。途中に絡み合うムーグのフレーズをアクセントにもピアノの伴奏はクロージングまで繊細で気品あるクラシカルさを堪能出来ます。プログレというジャンルを離れ、通常フォーマットの唄モノとしても活きる楽曲と感じました。
前曲とラスト楽曲の橋渡し的を感じさせてくれる12「Freedom」もビブラフォンによるミドルタッチなアンサンブルが効けて、最終曲13「Daimones」へ繋がります。当アルバムの中ではロマンチシズムさを最も感じさせるテーマをムーグとともに、シアトリカルさよりもふくよかさのボーカリゼーションが楽曲に色を添えながら、終始、優しげで穏やかなミドルテンポの楽曲ですが、伴奏のシンセがクレッシェンドし途切れるクロージングですら、そのイメージを損なわれないんです。
イタリアの地のプログレらしさに、地中海やエーゲ海のエキゾチックなタッチをビブラフォンを中心に感じさせてくれるアルバムではないでしょうか。ダイナミックな楽曲、スローテンポな楽曲、ミドルテンポの楽曲を織り交ぜながらも、アルバム1枚を通じ聴き終われば、ひんやりと心に染み入る感覚が印象的です。鍵盤とビブラフォンを中心としたアンサンブルがしっかりと楽曲の骨子にし、クラシカルな気品さが漂っているから個人的にそう感じてしまうのかもしれません。
[収録曲]
1. Invocazione Alla Musa
2. Il Tempo Che Non Ho
3. Focus
4. Penelope
5. Circe
6. Ade
7. Poseidon
8. Nemesis
9. La Grande Bouffe
10. Eros & Thanatos
11. Vento Avverso
12. Ελευθερια / Freedom
13. Daimones
ギリシャの数々の歌姫の楽曲の伴奏で特徴的に奏でられるなど、生ギター、ハープ、金管楽器などによるエキゾチックなタッチの演奏に、ギリシャのオリエンタルなサウンドスケープともいうべき映像美を感じる方におすすめです。
もしくは、そこまで気難しくなく、イタリア、強いては、ギリシャの地中海やエーゲ海での音楽のエッセンスを感じさせてくれるので、その導入ともいうべきおすすめなアルバムです。
「新世紀プログレッシヴ・ロックの波」で出逢う未知なる音楽:その2
今年2014年1月2日(木)から5日(日)に4日連続で、NHK-FMで放送されたプログレ特集の番組「新世紀”プログレッシヴ・ロック”の波」は記憶にも新しいことと思います。その初日の放送「第1夜(1月2日)「シンフォニックの大地から」」で、楽曲「Magritte」に出逢ったのがSyndoneの音楽を知ったきっかけでした。2010年から2013年までここ最近のシンフォニック系の演奏を特徴とするバンドに交じり、Syndoneの楽曲「Magritte」はアルバム「Odysseas」では11「Vento Avverso」に近い印象を持っています。シンフォニック系というよりもクラシカルな気品さにとても心を惹かれてしまいましたね。
▼「[Vol.1]春にプログレを聴きたい~「新世紀プログレッシヴ・ロックの波」で想う~」のレビューは下のリンクから▼
「[Vol.1]春にプログレを聴きたい~「新世紀プログレッシヴ・ロックの波」で想う~」
とても感謝です。ありがたい。
アルバム「Odysseas」のおすすめ曲
1曲目は、11曲目の「Vento Avverso」
2010年発表の3rdアルバム「Melapesante」挿入歌「magritte」に近しいイメージですが、冒頭部のオーケストレーション、中間部のピアノとムーグによる演奏はよりクラシカルな気品さを感じさせてくれるんです。楽曲「magritte」のもつミステリアスなエッセンスをクリーンに心に染み入ってきます。
2曲目は、3曲目の「Focus」
この楽曲は1曲としてみれば、そのアンサンブルにアルバムを代表するダイナミックさを感じていて、それだけでも聴きどころなのですが、アルバム全篇を通じ聴くことで、当楽曲がアルバムの序曲として中心を担うような芯の強さを感じずにはいられないんです。聴き手の印象にもよりますが、当楽曲から一気に前半部の数曲を聴き入ってしまうぐらいの魅力を感じるんです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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