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プログレおすすめ:Chirs「Days Of Summer Gone」(2013年オランダ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/03 2010年‐2013年, ヴァイオリン, オランダ, ネオ・プログレ, フルート


Chirs -「Days Of Summer Gone」

第142回目おすすめアルバムは、オランダのミュージシャン:Christian Bruinによるプロジェクト・バンド:Chirsが2013年に発表した5thアルバム「Days Of Summer Gone」をご紹介します。
Chirs「Days Of Summer Gone」
ボーカルだけでなく、キーボード、ギター、ドラム、パーカッションを駆使し、マルチ・ミュージシャンとし過去のアルバムも制作していますが、当アルバムでは、Ruben van Kruistum(チェロ)、Intan Werry(ヴァイオリン)、Federico Dalpra(フルート)、Peter Bruin(トランペット)、Joey van Doesburg(トロンボーン)など、管弦楽器奏者がゲスト参加し各楽曲を彩っています。

管弦楽器が加わることで、Chrisの特徴の一つとも云える哀愁さのあるメロディラインにクラシカルさと気品さも際立たせているような気がします。

アルバム・ジャケットが醸し出す御伽話が映像的に迫るくるサウンドスケープのあるアルバムと思います。イギリスの5大プログレバンドでいえば、Peter Gabriel期のGenesisのシアトリカルさ溢れる様式をクラシカルなアンサンブルも想起するかもしれません。クラシカルさは、いっぽうでアンニュイで陰鬱なパートを醸し出すアンサンブルも感じられます。

楽曲について

冒頭曲1「Out In The Night」は、まるで室内楽を想起させるヴァイオリンとチェロによる途切れ途切れに交互にフレーズを交わし合い、ドラムがフィルインするとともに、ヴァイオリンがメインのテーマを奏でるまで1分40秒前後のパートを耳にすれば、

サウンドトラックを彷彿とさせ、郷愁さがじわじわと伝わる素敵なオープニングと感じました。
1分40秒前後には、現代的よりもヴィンテージさも感じられるコーラス・ワークに、ぐっと腰が抜けたような心地にて、どっぷりと楽曲の世界に浸らしめる感覚を憶えました。Chris独特の唄メロのメロディラインも合わさり、アルバム・ジャケットが醸し出す御伽話のように感じたのも当パートでした。

ヴァイオリンが繰り返すメイン・テーマと派生形に絡み合うチェロ、スパニッシュ風のギターのフレーズなどによる、仄かに尊厳さが醸し出すインストルメンタルのパートに耳を奪われがちですが、マーチ風のリズムで淡々と進行したり、シアトリカルさもあるヴァースも絶妙です。

その両者が静寂の中で幽玄さを醸し出す8分前後から9分10秒前後までのパートも聴きどころです。唄メロの展開がメインに、音の隙間隙間に楽器の気遣いさも感じさせてくれるピアノのペダル音やドラムのスティックさばきを聴き入っていると、すでにアルバム・タイトルの和訳「夏が過ぎ去った日々」から連想させる喪失さに包まれていきます。

10分25秒前後以降のパーカッシブさのある動的なパートもアクセントに、ヴァイオリンとピアノに、途中からオルガンの音色が鳴り響き、ゆったりとフェードアウトしクロージングするまで、ヴァイオリンが奏でるメイン・パートを挟みつつ、映像美さえ魅せてくれる楽曲のクオリティにただただ身を委ねてしまいます。
2「Distances」は、1「Out In The Night」の静寂さあるアンサンブルに惹き込まれるように、ピアノのアンサンブルを中心としたスローなテンポの前半部が印象的です。ヴァースに重なり合うコーラスワークの透明さ、アクセントに響くシンセにより徐々に楽曲は盛り上げっていきます。2分前後からはコーラスワークがメインとなるパート、3分40秒前後にて張り上げるボーカリゼーションのパートを挟み展開するコーラスワークがメインとなるパートなど、プログレッシブ系でもファンタジックさを濃厚に感じえます。コーラスワークがキーポイントとなりながらも、1「Out In The Night」と同様にクロージングしていくインストルメンタルに、当楽曲も身を委ねてしまいそうになりますね。

3「Cold Heart」は、不穏さやアンニュイさを醸し出すヴァイオリンのフレーズで幕を上げ、当楽曲まで以上にビートを効かせたパートを聴かせてくれながらも、タンゴのリズムをメインとしたヴァースでのアンサンブルには、ノルウェーのプログレッシブ・バンド:Gazpachoにみる仄かな物憂げに、退廃感を彷彿とさせてくれます。そして、3分35秒前からは、翳りのある唄メロでのメロディラインでありながらも、Chris特有の哀愁の帯びたポップセンスともいえるヴァースが聴けます。イギリスのロックバンド:Queenを彷彿とさせるカウンター的なコーラスワークが唄メロのメロディラインに重なることで、4分45秒前後からのリズムチェンジによるパート、5分前後からの各楽器が繰り返す下降ライン、6分50秒前後のジャズ的なアプローチ、9分前後のアコースティックギターのカッティングをメインとしたパートなどの各パートも違和感なく楽曲に色を添えています。聴き手によっては、めくるめくパートの展開に御伽話のように感じさせてくれるかもしれません。

4「Heliophobia」は、前曲3「Cold Heart」の翳りあるアンサンブルに続くかのように展開する楽曲です。静寂さをメインとしたアンサンブルには、室内音楽的やチェンバー系でいうリリカルさを感じさせてくれながらも、2分30秒前後からの各楽器が醸し出す音1つ1つに心は交錯しています。

フルートの独奏で幕を上げる5「A Heart’s Endeavour」は、冒頭曲1「Out In The Night」を彷彿とさせるパート、管弦楽器が奏でる優美さもあるパートに、リズム・チェンジで躍動さあるパートなど、全曲までのさまざまなエッセンスが溢れ展開する楽曲です。クラシカルさと室内音楽が醸し出し、入れ替わり聴けるパートからはイタリア・プログレ、特に1970年代に活躍したLe Ormeを彷彿とさせる展開も感じてやみません。

最終曲6「Days Of Summer Gone」は、5「A Heart’s Endeavour」以上にアルバム全篇にわたるエッセンスが溢れ、特に、仄かに希望を感じさせてくれないかと問うように展開するクロージングでの優美さが素敵過ぎます。

アルバム・タイトルの和訳「夏が過ぎ去った日々」からも連想させる絶望さや哀しみを醸し出した唄メロのメロディラインと、管弦楽器を加わったクラシカルさと室内音楽的なアンサンブルに、ただただ身を委ねてしまいそうになるアルバムです。

ところどころに垣間見える希望や羨望とも取れる唄メロやアンサンブルと、楽曲によってクロージング・パートで各楽器のメインパートのインストルメンタルによるスローなパートがとても印象的に、夏が過ぎ去った後の仄かに涼しげのある世界観を織りなすクリエイティビティが素晴らしいアルバムと思いました。

[収録曲]

1. Out In The Night
2. Distances
3. Cold Heart
4. Heliophobia
5. A Heart’s Endeavour
6. Days Of Summer Gone

プログレッシブ・ロックでいれば、管弦楽器をメインとしたクラシカルさのアンサンブルのあるエッセンスが好きな方におすすめです。

また、個人的に感じうるノルウェーのバンド:Gazpachoにみる物憂げさや退廃感、イギリスのPeter Gabriel期のGenesisなどにみるファンタジックさ、イタリアのバンド:le Ormeを彷彿とさせるダイナミックな展開も入れ込んだイタリア・プログレ系など、唄メロのメロディラインとアンサンブルで随所に魅せるプログレッシブさを好む方におすすめです。

アルバム「Days Of Summer Gone」のおすすめ曲

1曲目は、1曲目の「Out In The Night」
一聴した時に、最初の数分に、イギリスの映画「007」、特に1960年代や1970年代のサウンドトラックで感じえた感覚を憶えました。冒頭曲の出だしから映像の一端がサウンドスケープさせてくれること、そして、楽曲最後まで尻ぼみせないクオリティの高さが素敵すぎたからです。当楽曲を気に入れば、アルバム最後まで聴き入れるだけの素晴らしい世界観があると思います。

2曲目は、5曲目の「A Heart’s Endeavour」
室内音楽的やクラシカルなエッセンスの印象にうずもれることなく、エッジのあるハードな動によるパートを展開に盛り込まれないながらも、変拍子やリズムチェンジを重ね、ゆったりさもある楽曲の展開が心に残ったからです。イタリア・プログレ系の情景を感じさせるような展開に腫れます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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