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プログレおすすめ:Novalis「Sommerabend(邦題:過ぎ去りし夏の幻影)」(1976年ドイツ)

公開日: : 最終更新日:2016/01/10 1970年代, シンフォニック, ドイツ


Novalis – 「Sommerabend(邦題:過ぎ去りし夏の幻影)」

第46回目おすすめアルバムは、ドイツのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Novalisが1976年に発表した3rdアルバム「Sommerabend」をご紹介します。

Novalis「Sommerabend(邦題:過ぎ去りし夏の幻影)」
ボーカル兼ギターのHartwig Biereichel、ベースのHeino Schunzel、キーボードのLutz Rahn、ドラムのHartwig Biereichelの4人編成のバンドです。
アルバム全篇を一聴すれば、シンフォニック系のバンドとも思われますが、SE、シンセ、電子音が聴けるサウンドは、シンフォニック系としてだけでなく、ドイツの地にクラウトロック的なエッセンスが溢れています。シンフォニック系とクラウトロックの両者を聴いたことがなければ異なる印象をもったかもしれません。

楽曲について

冒頭曲1「Aufbruch」は水面と水中を行きかうようなSEとともに、オルガンとギターによるハードな演奏で幕を上げます。不穏な響きを漂わせるシンセや電子音が加わることでインストメンタルの当楽曲にサイケデリック系/スペース系を仄かに感じさせてくれます。そして、ギターによるテーマが流れた時には流麗でいてセンチメンタルさも感じますが、オルガンとギターによるハードな演奏が大半を占め、そのダイナミックさに圧倒されてしまいます。

2「Wunderschatze」は、アコースティック・ギターによるアルペジオとメロトロンを伴奏に当アルバムの中ではボーカルパートがメインとなった楽曲。唄メロは哀愁を帯びた1つのテーマがリフレインされ、3分40秒前後からの最初の間奏ではクラシカルでいて正確無比に弾かれるオルガンを背景に、ギターも哀愁を帯びたフレーズのソロを聴かせてくれます。8分前後からクロージングまでは、たとえば、イギリスのプログレハードロックなバンド:Uriah heepのようなオルガンにギターのソロ、ユニークなベースのシーケンスの長い即興性を感じさせる演奏がふんだんに聴けます。当アルバムでは楽曲全体で抒情性さやリリカルさを感じ得る楽曲というべきでしょうか。

最終曲3「Sommerabend」はアンニュイなSEとともに、「a) Wetterleuchten」のパートでは分厚いシンセやストリングスを伴奏に、霞みがかったオルガンの淡々としたテーマが物憂げに弾かれ、「b) Am Strand」のパートでは、時折アクセントをつけてたアコースティックギターのダウンストロークだけが淡々と聴けます。そのアコースティックギターもダウンストロークの中に途中からアルペジオを交えた演奏となり、ヴォーカルのヴァースでは、やはりイギリスのプログレハードロックなバンド:Uriah heepのコーラスワークを抑制した感触で聴かれます。
「c) Der Traum」のパートでは、起伏のあるメロディを奏でるシンセとボーカルが同一のメロディを繰り返し、よもやすれば、ここまでのパート全てが単調な具合に終始してしまいそうな構成に、突如、「d) Ein neuer Tag」のパートでは、これまでのパート、強いてはアルバムの流れを一変するようにビートを聴かせたパートへと変貌し、コーラスワークも含め、快活な印象にただただ驚愕させられます。
驚愕している暇もなく最後のパートである「e) Ins Licht」では、オルガンを伴奏に「b) Am Strand」での唄メロが再提示され、さらに「a) Wetterleuchten」のパートと同様に分厚いシンセやストリングスが流れ、淡々と進行しながらクロージングします。

ボーカルのパートよりもインストルメンタルのパートが比重を占め、サイケデリック系/スペース系でもクラウトロック的な電子音やシンセが楽曲に彩りを加えるようなイメージのため、メロトロンの音色を使用していても、それほど抒情性さを感じなかったです。また、そのイメージが、聴き手にとっては、淡々とした特徴のないアルバムと捉えてしまうかもしれません。

そして、シンフォニック系とクラウトロックとサイケデリック系/スペース系など、多種多様なプログレッシブ・ロックのジャンルを聴いたうえで、再度、当アルバムに耳を傾けてみると、このアルバムにしかない世界観があると感じると思います。アルバムのタイトル「Sommerabend」はドイツ語であり、直訳すると「夏夜」となるらしいのですが、邦題である「過ぎ去りし夏の幻影」がとても的を得ていて、避暑地としての夏よりも、ある種の喪失感を受け止めてしまった夏の最後の幻影のような情感を表現したかのように、なかなか音楽として表現しきれないコンセプトで纏められたアルバムと思いました。

[収録曲]

1. Aufbruch
2. Wunderschatze
3. Sommerabend
a) Wetterleuchten
b) Am Strand
c) Der Traum
d) Ein neuer Tag
e) Ins Licht

冒頭曲1「Aufbruch」は約10分、2「Wunderschatze」は約11分、3「Sommerabend」は約19分による3曲だけの楽曲構成です。特異なアルバムのため、正直、多くの方におすすめ出来るアルバムとはいえませんが、アルバムタイトルの邦題「過ぎ去りし夏の幻影」を表現したかのようなコンセプトで聴きたい方にはおすすめです。

アルバム「Sommerabend」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲の「Aufbruch」
Novalisに出逢った最初の楽曲であり、一聴しただけでは吸収できないぐらいのエッセンスがあり、まだまだ理解しようと聴き続けられる楽曲本来の良さを感じたからです。

2曲目は、最終曲3「Sommerabend」
通常長尺で副題が複数ある楽曲では曲のところどころに最初のテーマが再提示されたりするなど、コンセプト的な構成意味合いを持ちますが、当楽曲では前後のパートとをリンクする伴奏のリレー感覚や再提示されるテーマの順番やタイミングなどに他バンドの楽曲にはないユニークさを感じたからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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