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プログレおすすめ:Locanda Delle Fate「The Missing Fireflies」(2012年イタリア)

公開日: : 最終更新日:2015/12/14 2010年‐2013年, イタリア, イタリアン・プログレ


Locanda Delle Fate -「The Missing Fireflies」

第48回目おすすめアルバムは、イタリアのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Locanda Delle Fateが2012年に発表した3rdアルバム「The Missing Fireflies」をご紹介します。

Locanda Delle Fate「The Missing Fireflies」

1977年から35年後に

1970年代前半から中盤にかけてのプログレ盛隆期と比べれば、1970年代後半は通常フォーマットのロックでさえ飲み込むようにパンクやテクノなどのジャンルが拡まり、プログレ界でもポップさ、アメリカナイズ、ハード、メロディックなどの路線に、アルバムや楽曲の方向性を変えざろうえませんでした。

・・・そんなプログレッシブ・ロックが抱える時代にあって、1977年に突如発売されたLocanda Delle Fateによる1stアルバム「Force Le Lucciole Non Si Amano Piu」は、その当時の音楽史上に一太刀でも切り込みをいれるか如く、のちに「奇跡の1枚」と表現してもいいアルバムでした。ピアノをメインに、フルート、シンセ、ムーグ、ハモンドオルガンや12弦アコースティック・ギターが奏でるアンサンブルは、繊細でいて緻密なシンフォニック系のロックを聴かせてくれます。

同時期のイギリスの5大プログレバンドや、同国イタリアのP.F.M、Banco Del Mutuo Soccorsoなどのプログレッシブ・ロックで名だたる代表的なバンドは、アルバムの方向性や音楽性に多少ならず変化を求められていた時期ですから、アルバム「Force Le Lucciole Non Si Amano Piu」から感じる、あまりにも儚く、あまりにもドラマチックなサウンドは、奇跡なのだから、その1枚でプログレロックの歴史から消えてしまってもおかしくなかったもしれません。

そして、その35年後の2012年に、(1998年発表の2ndアルバム「Homo Homini Lupus」の後に)突如発表されたのが、今回、ご紹介する3rdアルバム「The Missing Fireflies」なんです。

Leonardo Sasso(ボーカル)、Luciano Boero(ベース)、Giorgio Gardino(ドラム)、Oscar Mazzoglio(キーボード)による当時のオリジナルメンバー4人に、新たにギタリスト:Max Brignolo、キーボード奏者:Maurizio Muhaの2人が加わり、バンドが復活したのです。

当アルバムは、1stアルバムが発表された1977年当時と比べれば、レコーディング技術や各種機材がグレードアップしているとは思います。音楽業界の技術面での向上云々に関係なく、12弦アコースティック・ギターでのプレイの比重は少なくなり、どちかといえば、ディスト―ションを効かせた歪みあるエレクトリック・ギターでのプレイの比重が増え、ドラミングにもタイトさの比重が増えたのではないかと感じました。

楽曲について

冒頭曲1「Crescendo」は、バンド復活の1曲目に相応しい印象をあたえるかごとく、シンセサイザーが奏でる躍動的なフレーズでで幕をあげます。たとえば、楽曲「Sogno di Estunno」や「Nuove Lune」(ともに1stアルバム収録曲)のように、躍動的にも、よりハートフルに、心震わすような旋律が印象的です。また、3分55秒前後からのピアノのきめ細かなタッチに、タイトにリズムを叩くドラム、パーカッシブなギターのプレイスタイルのパートも見受けられますが、楽曲「Profumo Di Colla Bianca」(1stアルバム収録曲)のように、ヴァースで大らかなメロディを唄うLeonardo Sassoのボーカリゼーションや、アンサンブルでの歪みはあるがサスティーンを効かせたギターのフレーズと楽曲後半部での流麗でいて華麗なギター・ソロには、ファンタジックな楽曲の世界観を堪能出来ます。

2「Sequenza circolare」は、クラシカルでリリカルなフレーズが印象的なピアノ独奏の小曲です。ピアノ独奏のスタイルも1stアルバムでは感じえた要素の1つであり、次曲3「La giostra」の序章のイメージをもってしまうのがもったいないぐらいの演奏だと思います。

続く3「La giostra」は、楽曲「Sogno di Estunno」(1stアルバム収録)に代表される快活な唄メロのメロディラインが聴ける楽曲です。ピアノを交えたアンサンブルは、冒頭曲1「Crescendo」以上にダイナミックでファンタジックな世界観を聴かせてくれます。

最終曲4「Non chiudere a chiave le stelle」は、楽曲「Non Chiudere A Chiave Le Stelle」(1stアルバム収録)をリアレンジされて再現された楽曲です。原曲でも、ヴィブラフォン、アコースティック・ギター、メロトロンをアンサンブルに、マイナースケールの唄メロには、、当アルバムに収録された他楽曲とは正直異質なイメージを感じてしまいますが、繊細なアンサンブルもまた、Locanda Delle Fateの特徴の1つと思うため、聴けたことで安堵しました。

「奇跡の復活」の印象ですが、4つの楽曲で計約22分ほどのプログレッシブ・ロックとしてだけではなく、通常の音楽のアルバムとしても短めの尺のアルバムです。フルアルバムを制作し、真の意味での復活を期待せずにいられないですね。

[収録曲]

[スタジオ盤]
1. Crescendo
2. Sequenza circolare
3. La giostra
4. Non chiudere a chiave le stelle
[ライブ音源盤]
5. Non chiudere a chiave le stelle
6. Crescendo
7. Vendesi saggezza

なお、当アルバムのアートワークは、日本独自であることに驚きましたが、今回、「おすすめアルバム」としてご紹介させて頂いたスタジオ盤以外に、1977年当時のライブ音源が3曲収録(5~7)されたライブ音源盤のCDも含まれてます。そう、1977年当時、12弦アコースティック・ギターを駆使したEzio VeveyとAlberto Gaviglioによる繊細なプレイの貴重なライブ音源を聴くことが出来るのです!

1stアルバム「Force Le Lucciole Non Si Amano Piu」のファンのみならず、キーボードを主体としたファンタジックなシンフォニック系のプログレが好きな方におすすめです。

「蛍」に期待

この3rdアルバム「The Missing Fireflies」は日本語で直訳すると「失われた蛍」を意味します。実は、1stアルバム「Force Le Lucciole Non Si Amano Piu」の邦題は「妖精」ですが、日本語で直訳すると「蛍の消える時」を意味するそうです。

・・・ということは、1stアルバムの続編か、内容を補足するなどの位置付けをファンの方は考えてしまうかもしれません。日本語で「消える」と「失われる」の異なるニュアンスがありながらも、一般的に、「蛍」に対しては、ほんの一瞬淡い輝きを放つ儚い存在を感じてしまうものですから、当時の儚さ溢れるファンタジックさがそっと目の前に零れてきてくれたと感謝したくなりますね。

やはり、真の意味での復活を期待したくもなります。

アルバム「The Missing Fireflies」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲1の「Crescendo」
心躍動させるファンタジックさ、ドラマチックさなど、唄メロも含め聴いていて清々しさを感じてしまいます。

2曲目は、2曲目の「Sequenza circolare」
3「La giostra」の序曲のように思いましたが、この小曲を活かし、より長尺で流麗な楽曲へ変貌することを期待してやみません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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