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プログレおすすめ:Mellow Candle「Swaddling Songs(邦題:抱擁の歌)」(1972年アイルランド)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 1970年代, アイルランド, フォーク, メロトロン, 女性ボーカル


Mellow Candle -「Swaddling Songs」

第246回目おすすめアルバムは、アイルランドのプログレ・フォーク系のロックバンド:Mellow Candleが1972年に発表した1stアルバム「Swaddling Songs(邦題:抱擁の歌)」をご紹介します。

Mellow Candle「Swaddling Songs」

「英国フォーク三美神」の1枚

それぞれに、ミスティックで優雅にも女性ボーカルが堪能出来るイギリスのTudor Lodgeが1971年発表の同名1stアルバム「Tudor Lodge」、Spyro Gyraが1973年発表の「Bells Boots & Shambles (1973)」らとともに、「英国フォークの三種の神器」もしくは「三美神」とも云われるプログレ・フォーク系のアルバムきっての名盤であり、それぞれに、ミスティックで優雅にも女性ボーカルが堪能出来ます。

Mellow Candleは、1968年に、アイルランドの修道院に通っていたAlison Williams(ボーカル)とClodagh Simonds(キーボード、ボーカル)の女性2人が出逢い結成したボーカル・グループがバンド結成の前身と言われています。

ボーカル・グループ解散後、修道院を卒業と共に、2人はフォーク系をベースとした新しい音楽の方向性を見出そうとし、Frank Boylan(ベース)、William Murray(ドラム)、David Williams(ギター、ボーカル)らとともに5人編成のバンドを結成しました。

その音楽の特徴は、トラディッショナル・フォークをベースとしながらも、ピアノ、ハープシコード、メロトロンを加え、ユニークなベースラインとメロディラインに程よい変拍子が効いたアンサンブルが、ファンタジックさ(幻想さ)やミスティックさ(神秘さ)を醸し出すプログレ・フォーク系です。

女性ボーカルのプログレ・フォーク系の代表的なミュージシャンとして、元Fotheringayや元Fairport ConventionのSandy Denny、PentangleのJacqui McShee、RenaissanceのAnnie Haslamなどが挙げられながらも、そのミスティックさにイメージをさせる歌声のClodagh Simondsと、Annie HaslamやJacqui McSheeを彷彿とさせるエレガントで澄んだイメージをさせる歌声のAlison Williamsと云う印象が異なる2人の女性ボーカルが、時にダブル・ボーカルで、時に単独ボーカルで楽曲を彩ることで、Tudor LodgeやSpyro Gyraとともに、

幻想さや神秘さに踏み入り、抜け出せなくなるような耽美なサウンドも聴けるアルバムです。

聴きいくにつれ、現実逃避から抜け出せなくなるか、タイムレスな感覚を感じたら、深淵なるフォーク系が好きなのかもしれませんよ。

楽曲について

冒頭曲1「Heaven Heath」は、トラッド風味の躍動的なリズムセクションに、ハープシコードやチェンバロがメインのアンサンブルで幕をあげ、バロック調に気品さが漂う楽曲です。ほのかに哀愁さを漂うメロディラインを唄うAlison Williamsのボーカリゼーション、1分40秒前後からはMellow Candleのボーカルの一つの特徴であるスキャット、2分30秒前後からのハープシコードとベースによるアンサンブルなど、躍動さはあるものの、ほど良い心地良さのバイブレーションに、一瞬にして喧騒を忘れ、心を落ち着かせるには十分なサウンドに溢れています。

次曲から続くアルバムの深淵なる神秘さに踏み入れるに十分過ぎる導入曲ですね。

2「Sheep Season」は、リリカルなピアノ、スラーを多用したスムースなフレーズのベース、枯れた味わいのギターによるアンサンブルが浮遊さを漂わせ、幻想的な楽曲です。2分35秒前後のギターによる枯れた味わいのソロがかえって、セピアの色彩を脳裏に思い浮かべ、3分前後から加わるメロトロン・フルートの旋律は、そのギターとは異なりくぐもった音色のため、よりいっそう幻想さを感じるのではないかと思います。Alison Williamsがメインのボーカルにも、サビ部ではボーカル・パートの比重が高くなるClodagh Simondsとのボーカリゼーションの違いは、声も楽器の一部とあらためて感慨深くなるサウンド・メイキングの一端を感じてしまいます。

3「Silver Song」は、冒頭部やヴァース間に下降ラインを活かしたメロトロン・チェロによる旋律が幽玄さを醸し出す印象的なパートが聴かれる楽曲です。切ない唄メロのメロディラインに、Alison Williamsによる繊細なボーカリゼーションに、Clodagh Simondsとのハーモニムやスキャットが繊細に、儚くも消え入りそうな、脆さを感じてしまい、心鷲掴みされそうになりますね。

かもめが舞う水辺を想起させるSEで幕を上げる4「The Poet And The Witch」は、3「Silver Song」と同様に下降ラインを活かした冒頭部も、よりベースのドライブが効いたアプローチで聴かせる楽曲です。イギリスのCurved AirのSonja Kristinaの声質を想起してしまうClodagh Simondsによる唄メロのメロディラインは、随所にAlison Williamsが加わる語尾を高域に張り上げたり、独特なスキャットとともにドラマチックに聴かせてくれます。

5「Messenger Birds」は、エレガントなピアノと抑え気味のギターのフレーズによる流麗なアンサンブルとともに、Alison Williamsによる流麗な唄メロのメロディラインが聴ける楽曲です。終始、トラディッショナルな味わいには、やはりAnnie Haslamボーカル期のRenaissanceのフォーク小品を想起させてくれます。

6「Dan The Wing」は、Clodagh SimondsとAnnie Haslamのツイン・ボーカルが聴ける楽曲です。変拍子を多用し、躍動的に聴かせる唄メロのメロディラインは、独特のスキャットとともに、左右(Clodagh SimondsとAnnie Haslam)に分けられ、2人の声質と歌唱の違いを堪能出来ます。

7「Reverend Sisters」は、ピアノの独奏によるAlison WilliamsとClodagh Simondsのツイン・ボーカルによる楽曲です。ただし6「Dan The Wing」と異なり、ハーモニムを活かしている点や、終始ピアノがミニマルなフレーズを意識しながら旋律を重ねていくため、その音数の少なさによる残響さが幻想さを醸し出し展開していきます。

8「Break Your Token」は、ピアノの跳ねたリズムも印象的に、Annie Haslamがメイン・ボーカルによる躍動的な楽曲です。途中からヴァースに加わるClodagh Simondsのボーカルとともに、2か所(55秒前後からと1分40秒前後から)での変拍子を盛り込んだ独特のスキャットは、当アルバムの楽曲で聴ける他スキャットと異なるアプローチで圧巻です。

9「Buy Or Beware」は、女性2人による掛け合いのボーカルが印象的な唄メロのメロディライン、David Williamsも加わった男女混成3声コーラスワークのサビ部、乱れ舞うか如く弾きまくるピアノ、タイトなリズムセクション、クロージング直前のギターのストロークの激しさなど、他楽曲以上にアイデアを盛り込んだ演奏が聴けます。

10「Vile Excesses」は、おそらくAlison Williamsが1人で2人称のコーラスワークや掛け合いをオーバーダブし聴かせているであろうヴァースと1分前後からの変拍子を多用した抑制を効かせたパーカッシブなアンサンブルなどが交互に繰り返した楽曲構成で、前後の楽曲をリンクする間奏曲のようなイメージがします。もしくは、長尺に演奏されれば、ライブ映えすることを期待してしまう楽曲ですね。

11「Lonely Man」は、タイトなリズムセクションと、程よくブルーズが効いたアンサンブルが泥臭く、Clodagh SimondsとAlison Williamsがソウルフルなボーカリゼーションを聴かせてくれる楽曲です。

Clodagh Simondsによる独特のスキャットで幕を上げ、12「Boulders On My Grave」は、Alison Williamsも加わった2人のスキャットがドラマチックに展開されるファーストタッチの楽曲です。間奏部では、ギターのカッティングは抑え気味に、スキャットのメロディラインを奏でるピアノの旋律は楽曲の骨子にあるスキャットのメロディラインを強烈に脳裏へ植えつけ、そして、ダイナミックな旋律を奏で、クロージングを迎えます。楽曲に幻想さや耽美さを際立たせるスキャットは、当楽曲では、ロックのもつダイナミズムを活かした素晴らしきアンサンブルを聴かせてくれます。

アルバム全篇、切なげなメロディラインの楽曲では、リリカルなピアノ、ユニークなベースライン、儚くも流麗な女性ボーカルの妙を、ドライブの効いた楽曲では、タイトなリズムセクションに、さまざまな歌唱技巧を活かしたスキルフルさを堪能出来ます。

殺伐とした感情で抑えきれない時、ふと冒頭曲1「Heaven Heath」に触れ、ふと心落ち着き、最終曲12「Boulders On My Grave」を聴き終われば、聴く直前までの感情がほんの少しでも和らぎ、気分転換へと繋がるような楽曲構成を感じてしまう素敵なアルバムと思います。

[収録曲]

1. Heaven Heath(邦題:天国の荒野)
2. Sheep Season(邦題:羊の季節)
3. Silver Song
4. The Poet And The Witch(邦題:詩人と魔女の物語)
5. Messenger Birds(邦題:伝導鳥(黒い空、白い鳥))
6. Dan The Wing(邦題:ダンよ悪魔に気を付けろ!)
7. Reverend Sisters(邦題:麗しきシスター達よ)
8. Break Your Token(邦題:証拠を捜せ!)
9. Buy Or Beware
10. Vile Excesses(邦題:過ぎたるは及ばざるがごとし)
11. Lonely Man
12. Boulders On My Grave(邦題:墓の宝石)

「英国フォークの三種の神器」もしくは「三美神」と云われる残り2つのTudor LodgeとSpyro Gyraに、Sandy Denny、Chimera、Jadeなどのプログレ・フォーク系のミュージシャンや、Fairport Convention、Pentangle、Renaissanceなどのバンドが好きな方におすすめです。

時間を忘れてリラックスし聴きたいアルバムを捜している方にもおすすめな1枚です。

アルバム「Mellow Candle」のおすすめ曲

1曲目は、3「Silver Song」
1990年代の著名なイギリスのバンド:Oasisの名曲「Masterplan」を聴いた時と同様な感覚を憶えましたが、そのメロトロン・チェロだけでなく、メインの唄メロを唄うボーカリゼーションと女性2人による繊細なハーモニウムが儚すぎます。

2曲目は、12「Boulders On My Grave」
他楽曲でも変拍子を利用したスキャットは聴けますが、楽曲の基本的な骨子にスキャットがあり、躍動的に聴かせてくれるの素晴らしいです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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