プログレおすすめ:YES「The Ultimate Yes 35th Anniversary Collection」(2003年イギリス)
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最終更新日:2015/12/03
2000年代, YES(5大プログレ), イギリス Alan White, Chris Squire, jon anderson, Rick Wakeman, Steve Howe, YES
Yes -「The Ultimate Yes 35th Anniversary Collection」
第125回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:YESが、2003年に発表した3枚組ベスト盤です。
1974年発売のアルバム「Tales From Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」制作時の第2期Yes黄金期とも云うべきメンバーたち(Jon Anderson、Chris Squire、Rick Wakeman、Steve Howe、Alan White)で、1996年に行われたライブと当時のスタジオ音源を交えた2枚のアルバム(「Keys to Ascension」と「Keys to Ascension 2」)を1996年と1997年に分けて発売しています。
その後、アルバム発表後のツアーを予定していましたが、ソロ・プロジェクトを検討していたRick Wakemanと、YES自体のマネジメントの問題でスケジュールがかみ合わず、Rick Wakemanが脱退してしまいます。
「21年目の誓い」は脆くも崩されてしまう・・・。
「21年目の誓い」については下記をご一読ください。
プログレおすすめ:YES「Keystudio」(2001年イギリス)
時を経て、アルバム「Maginification」の発売後のツアーを終えた2001年にRick Wakemanが復帰し、複数のツアーが行われます。当アルバムはツアーの合い間2003年に発売されたベスト盤で、2015年現在からみると、おそらく第2期Yes黄金期メンバーによる最後のスタジオ音源ではないかと思われるのです。
2008年以降、Jon Anderson、Rick Wakeman、Chris Squireが病気でバンドから離れているからこそ、想いを馳せてしまう貴重な音源なのです。
楽曲について
3枚組のうち、1枚目と2枚目の楽曲は、1969年発表の1stアルバム「Yes」から2001年発表のアルバム「Magnification」から選曲されています。
既発アルバムの未収録や未発表のバージョンという観点でみれば、1枚目の11「America」は、Simon&Garfukelの楽曲カバーで、公式スタジオアルバムには収録されず、ベスト盤や近年のリシューに伴いボーナストラックとして収録されることが多いです。また2枚目では、2「Soon」は編集が異なるバージョンです。8「It Can Happen」、10「Big Generator」、12「The Calling」、14「Homeworld (The Ladder)」はシングルの編集バージョン、リミックス・バージョンだったりします。たとえば、過去の未発表音源といった目新しいものはなく、バランス良く過去の楽曲が聴けるところが良いかもしれません。惜しむらくは、「Awaken(邦題:悟りの境地)」、「Close To The Edge」、「The Remembering (High the Memory)(邦題:儀式)」などが収録されていない点でしょうか。
そう、このアルバムの目玉は3枚目なのです。
1「Roundabout」と3「South Side of the Sky」は、4thアルバム「Fragile(邦題:こわれもの)」収録の名曲をアコースティカルにレコーディングしなおした楽曲です。前者の1「Roundabout」は、ジャズ系で緻密でスキルフルなドラマー(Bill Bruford)が原曲でドラムを叩いているが、ジャズ特有のスウィングをほぼ感じられませんでしたが、当レコーディングでは、Alan Whiteがスウィング感をもたせ、Rick Wakemanの奏でるピアノも印象的にゆったりと聴かせてくれます。
3「South Side of the Sky」は、1「Roundabout」よりもジャムっぽさが出たアンサンブルが印象的です。特に、Rick Wakemanの弾くピアノは、クロージングまでのソロ・フレーズも含め、原曲よりもリリカルさが溢れ、楽曲全体をクラシカルな佇まいで聴かせてくれます。Rick自身が2002年に発表したソロ・アルバム「The Yes Piano Variations」でのYESのカバーが活きたクリエイティブではないでしょうか。
2「Show Me」は、Jon Andersonが1970年代初期に作曲した楽曲です。3「South Side of the Sky」で聴かれるRick Wakemanのピアノや、Steve Howeのアコースティック・ギターのストロークとトレモロをメインとしたアンサンブルが、唄メロのメロウなメロディ・ラインを際立たせてます。今回レコーディングされた楽曲では、唯一のボーカル入り楽曲として感慨深く聴いてしまいますね。
4「Australia」は、Steve Howeのギター・ソロの楽曲です。どことなく4thアルバム「Fragile(邦題:こわれもの)」収録の名曲「Mood For a Day」を想起させるようなフレーズが聴こえそうな気がするんです。ただ、「Mood For a Day」と比べれば、緊張感はほどけ、リラックスしたものと感じます。
5「New World Symphony」は、Chris Squareのアルバム「Tormato」期に音源化された「Amaging Grace」以来のベース・ソロの楽曲です。原曲は、チェコのクラシック作曲家:ドヴォルザークが、渡米し1893年に発表した「交響曲第9番 ホ短調 作品95、B.178「新世界より」」の第2楽章の旋律です。この第2楽章は日本では「家路」とも云われ、小学校や中学校の時分に、必ずといっていいほど、聴いたことがあるのではないでしょうか。コーラングレで奏でられる「家路」の旋律を、Chris Squareがゴリゴリしたベースの音色でロングトーンで効かせています。重低音が醸し出す不穏さや重厚さを強く感じさせてくれます。「家路」をよく耳にしていた学生の頃の掃除や下校の時間が目を瞑ればサウンドスケープが拡がっていきます。
収録曲
【Disc 1】
1. Time and a Word
2. Starship Trooper
3. Yours Is No Disgrace
4. I’ve Seen All Good People
5. Roundabout
6. Long Distance Runaround
7. Heart of the Sunrise
8. South Side of the Sky
9. And You and I
10. America
11. Wonderous Stories
【Disc 2】
1. Siberian Katru
2. Soon
3. Going for the One
4. Don’t Kill the Whale
5. Tempus Fugit
6. Owner of a Lonely Heart
7. Leave It
8. It Can Happen
9. Rhythm of Love
10. Big Generator
11. Lift Me Up
12. The Calling
13. Open Your Eyes
14. Homeworld (The Ladder)
15. Magnification
【Disc 3】
1. Roundabout (Acoustic)
2. Show Me
3. South Side of the Sky (Acoustic)
4. Australia (Solo Acoustic)
5. New World Symphony
3枚目の楽曲は、スタジオ音源とはいえ、アコースティカルにレコーディングしなおした名曲や主要メンバーのソロ楽曲ばかりです。それでも、アルバム「Tales From Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」を制作したメンバーによる音源を聴きたい方には手離しでおすすめです!
、
はじめてYESを聴く方にも、当アルバムの1枚目と2枚目を聴くことで、YESを知るきっかけにもなりますので、おすすめのアルバムです。その後、1970年代の一連の名盤(「The Yes Album」、「Fragile」、「Close To The Edge」、「Relayer」、「Going For The One」など)を中心に聴いてみてはいかがでしょうか。
過去に数多くのベスト盤が出ており、それぞれに特徴があるため、どのベスト盤が良いのか選曲の質を論じるのは難しいかもしれません。YESの全アルバムを耳にし、ベスト盤を聴く人であればなおさら自身のベストとなる楽曲があるかないかで印象が変わるとも思います。今回は、最も印象深い盤面(3枚目)があるため、アルバム「Tales From Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」を制作した2015年現在最後のスタジオ音源ととらえ、聴いて頂けると幸いです。
そんなプログレな気持ち・・・。
YESファンのみなさまはいかがですか?
アルバム「The Ultimate Yes 35th Anniversary Collection」のおすすめ曲
※当アルバムの3枚目の音源は甲乙つけず、すべて聴いて欲しい楽曲のため、おすすめ曲としての選曲を控えさせて頂きます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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