プログレおすすめ:Mr.So & So「Truths, Lies & Half Lies」(2013年イギリス)
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最終更新日:2015/12/02
2010年‐2013年, イギリス, ネオ・プログレ, 女性ボーカル Mr.So & So
Mr.So & So – 「Truths, Lies & Half Lies」
第60回目おすすめアルバムは、イギリスのネオ・プログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Mr.So & Soが2013年に発表した5thアルバム「Truths, Lies & Half Lies」をご紹介します。
バンドがこれまでに発表されたアルバムとは異なり、女性ボーカルのCharlotte EvansとベースのShaun McGowanによるツインボーカルに、ギター、キーボード、ドラムによる5人編成のバンドです。
メンバーだけでなくサウンドも同様で、ギターの奏でるフレーズは歪みのあるヘビーさの比重が高まり、流麗なシンフォニックさからダイナミックでハードなシンフォニックなサウンドへと変貌した印象です。そのサウンドに男女混成のツインボーカルが重なれば、ニュートラルでいてメロウでいてキャッチ―な唄メロとなって耳に入ってくるんです。
楽曲について
まるでヘビーメタル系と思わせるギターリフからイントロで奏でられるのが印象的な冒頭曲1「Paperchase」を聴けば、その変貌ぶりに驚くはずです。電子音によるシーケンスをメインの伴奏に、ヴァースやサビの唄メロはメロディアスでとてもキャッチであり、ポストロックの美メロな楽曲と思合わせてくれますが、4分前後のギターソロやリズムチェンジにはプログレッシブさも溢れており、心地よく躍動的なアルバムのオープニングに相応しい楽曲と思います。
2「Apophis」も1「Paperchase」と同様にギターリフが印象的な楽曲ですが、半音階に下降するコード進行にアンニュイさのあるヴァースとサビの心地良さのある唄メロにギャップを感じてしまいそになりますね。ヘビィ―なギターに対し、ミステリアスさが溢れていますが、これまでと同様な心地良さのあるメロディアスさも健在であり、爽快感すら感じてしまいます。ただ、3分45秒前後からのサイケデリック/スペース感たっぷりなシーケンスとパーカッシブなドラムのアンサンブルを聴けば、やはり根底にはプログレッシブ・ロックバンドであることを忘れずにいられません。
Mr.So & Soを当アルバムではじめて知り、そのサウンドを聴いた方はプログレと感じるだろうか、それともヘビーなポストロックと感じるのか。
その問いに対し、答えはどうでも良いことは、ポリリズムなリズムにアコースティックギターによるアルペジオからはじまる3「Truths, Lies & Half Lies」でもハードエッジなサウンドを聴くことで思うんです。根底にあるプログレッシブさ、ポップさも感じるメロディアスなメロディラインなどのエッセンスもそうです。ハードエッジさからアコースティカルさな佇まいの4「House Of Dreams」も合わせて、中近東風を感じさせるサウンドすら憶えてしまう。
そして、ピアノ伴奏のみで唄われる5「Looking Glass」からは女性ボーカルのCharlotte Evansのボーカリゼーションの比重が増します。
9「Time For Change」と10「Compliance」を除けば、5「Looking Glass」以降はスローテンポな曲調を基軸とした楽曲が連なっています。
特に、7「You’re Coming Home」は当アルバムの中で最もメロディアスさのある楽曲。曲の出だしに、ギターと男性ボーカルShaun McGowanによる掛け合いが印象的であり、続くヴァースには穏やかさを讃えるかのように優しげなアンサンブルが溢れてます。コーラスワークと重なるボーカルの輪唱にも聴ける瞬間や、サビ部でのカウンターメロディを唄うガイドボーカルも含め、プログレッシブな楽曲と忘れ、聴き入ってしまうんです。ギターソロも楽曲全体を考えた抑制のあるフレーズで色を添えます。
8「Breathe」は5「Looking Glass」や7「You’re Coming Home」とはまた異なる印象のスローでいてメロディアスな楽曲。後半のスローな楽曲を聴くと、個人的には、カナダのポストロックなバンド:The Dearsの憂鬱でいてメロディアスな世界観の楽曲達を想起せずにいられなくなります。ポストロック的なエッセンスも感じるMr.So & Soに、プログレッシブさだけで語ってしまうのは本当にもったいないと感じてしまいますね。
そして、いつも9「Time For Change」を聴くたびに、イントロから007映画主題歌を聴いている感覚になってしまいます。2分前後からのサイケデリック/スペースなサウンドを抽出するオルガンの音色や男性ボーカルShaun McGowanのヴァースもありますが、女性ボーカルのヴォーカリゼーションとエッジの効いたギターのフレーズを聴くたびに、例えば、映画007「Another Way To Die」のJack WhiteとAlicia Keysのデュエット楽曲などのように。本当にイメージですが、クラウトロックのエッセンスすら感じることも含め、聴き手によって、異なる印象を与える楽曲かもしれません。続く10「Compliance」もクラウトロックのエッセンスも感じ、静と動を活かしリズムチェンジが印象的な楽曲です。
クロージングに向けて、徐々に盛り上がりをみせるスローテンポの11「Please」もアルバムのエンディング曲に相応しく聴かせどころの楽曲。ここまでの楽曲以上に、男女混成によるツインボーカル度合いが大きく、その唄メロを重視としコンサート後半でサビの合唱が始まるような印象を与える素敵なサビが印象的です。
[収録曲]
1.Paperchase
2.Apophis
3.Truths, Lies & Half Lies
4.House Of Dreams
5.Looking Glass
6.Jingo
7.You’re Coming Home
8.Breathe
9.Time For Change
10.Compliance
11.Please
ポストロックに、サイケデリック/スペースやクラウトロックのエッセンスが交え、美メロとも取れるメロディアスな唄メロが印象的な楽曲ばかりのため、様々なエッセンスを考えた上で、メリハリの効いたポストロックを聴いてきた方におすすめです。
筆者は、自分の耳で聴き、好みだと思ったバンドであれば何でも好きになってしまうため、なかなか「おすすめ」の対象となるターゲットの方をうまく説明しづらいアルバムですが、ポストロック的を、美メロ的を、キーワードに聴いて頂き、ご興味を頂いたら嬉しいですね。
ただし、アルバムジャケットを見て、ジャケ買いをしたとしたら、美メロやスローテンポな側面の楽曲では充分と感じますが、ジャケ買いすると、冒頭曲1の「Paperchase」のイントロのギターに火傷する想いを感じずにいれませんね。
アルバム「Truths, Lies & Half Lies」のおすすめ曲
1曲目は、7曲目の「You’re Coming Home」
プログレッシブ・ロックバンドと忘れてしまいそうなぐらいに、メロディアスでいて、優しげなサウンドに、都会を離れた清涼感さえ感じてしまいそうになるんです。メインボーカル、コーラスワーク、カウンターメロディに対するガイドボーカルの絡み合うアレンジも聴き入ってしまうぐらい印象的です。
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2曲目は、冒頭曲1の「Paperchase」
これまでのアルバムにあったブリティッシュロックぽさもありながらも、メロディアスでいてキャッチ―な唄メロもあった楽曲群に、ヘビーメタル的なギターが加わることで、アルバム全体にロックの様々なエッセンスが加わったとしても違和感を忘れさせてくれる気持ちにさせてくれた。おそらくアルバム中でどこかに急に異色な楽曲が1つぽつんとあれば、アルバム全体が与える印象も変わっていたかもしれませんが、アルバムの導入部にして、とても重要なファクターと思ったんです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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