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プログレおすすめ:Heron「1st Album」(1971年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 1970年代, イギリス, フォーク


Heron -「1st Album」

第244回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックなバンド:Heronが1971年に発表した同名1stアルバム「Heron」をご紹介します。

Heron「1st Album」

ナチュラルさとピースフルさと

・・・鳥の鳴き声と、風の音と・・・

・・・話し声と、楽器を置く音と・・・

・・・飛行機のジェット音と、列車の響き音と・・・

・・・モニター・ヘッドフォンじゃなくたって、目を瞑らなくたって、聴こえてくるだろう?

Heronは、1968年に、Roy Apps(ボーカル、ギター、ピアノ、ボーカル)、Tony Pooks(ボーカル)、Gerald.T.Moore(ギター、マンドリン、ハーモニカ、ピアノ、ボーカル)、Stephan Jones(ピアノ、オルガン、エレクトリック・ピアノ、アコーディオン、ボーカル)の4人で結成したバンドです。

のちの1971年に発表されることになる4曲入りシングルとなる、Bob Dlyanの楽曲「Only A Hobo」のカバーを含む4曲をスタジオでレコーディングするものの、そのレコーディング自体にうまくなじまず、突如として、屋外レコーディングを敢行します!

当アルバム「Heron」は、全篇、イギリスはバークシャー州のアップルフォードと云う土地で屋外レコーディングされています。屋外であることから、自然の音(鳥の鳴き声、風の音)や人工物の音(飛行機のジェット音、列車の動く音)などが生々しく楽曲中や音数の少ない箇所で聴き取れるのです。通常ならノイズと思われる音でさえ、ナチュラルに収録されたことが物語るとおり、「ゆるさ」や「脱力さ」に象徴される、まさに

木漏れ日フォークともなる素朴で牧歌的な演奏を楽しめるアルバムです。

ハーモニカ、マンドリン、アコーディオンを含めたオーガニックなアンサンブルに身を委ね、ぜひ聴いて欲しい1枚です。

楽曲について

冒頭曲1「Yellow Roses」からはじまり、最終曲13「Carnival & Penitence」に溢れる音楽は、しばしばプログレッシブ・ロックのうち、プログレ・フォーク系と語られることがあります。

個人的には、同国イギリスのThe Beatlesが1968年に発表した、俗に「White Album」と云われる同名2枚組アルバム「The Beatles」に収録されたアコースティカルな楽曲に近しい印象をもってしまいます。もしも、「Blackbird」、「MarthaMy Dear」、「I Will」、「Julia」、「Rocky Raccoon」、「Mother Nature’s Son」、「Long, Long, Long」などのアコースティカルな楽曲をご存知であれば、ぜひ想像してもらいたいんです。

さらに、どのメンバーもボーカルを取れるぐらいに特徴あるコーラスワーク(輪唱、カウンターメロディなど)には、The Beatlesのみならず、アメリカのロック・バンド:Crosby, Stills, Nash & Youngを彷彿とさせてくれるんです。

そう、スタジオにあるサウンド・ライブラリーから「鳥のさえずり」をオーバーダビングしたThe Beatlesの楽曲「Brackbird」の世界観と、ピースフルさも愛くるしく感じるメロディックさとコーラスワークにCrosby, Stills, Nash & Youngの楽曲「Our House」を足して2で割ったような感覚が、屋外でそのままの音をレコーディングしたスタイルとアコースティカルさとハーモニウムから感じ取れてしまうんです。たとえば、2「Car Crash」、4「Smiling Ladies」、7「Upon Reflection」、11「For You」には、そのナチュラルさが濃厚に感じられます。

また、「Rocky Raccoon」のように愉しげなカントリー風味に、冒頭曲1「Yellow Roses」5「Little Boy」、12「Sally Goodin」は、よりロック寄りのカントリー調のアンサンブルが聴けます。

聴き手がこれまでに聴いてきた音楽に依存されるかもしれませんが、懐かしくも優しさに溢れた音楽ともいえます。

そして、フォーク系のエッセンスがあるアンサンブルにも、各楽器も含めメロディックさを感じる10「Goodlbye」は、よりピースフルな感覚を憶えずにいられません。

いっぽうで、当アルバムがフォーク系とだけでなく、レコードやCDを取り扱う店舗で、プログレ・フォーク系として紹介されることがあるのは、アコースティック・ギターとオルガンがメインの3「Harlequin 2」、アコーディオンが印象的にも幻想さ8「Lord & Master」、冒頭部とエンディング部に電車の音の響きを挟み、手数の多いアコースティック・ギターのフレーズが印象的な9「Little Angel」、オルガンのドラスティックな旋律が印象的な13「Carnival & Penitence」など、随所に、アシッド・フォーク系、アート・ロック系、プログレ・フォーク系のアーティストの楽曲で聴かれるサウンド・メイキングや、その音楽で感じえるサウンドスケープあたりにもよるのではないかと思います。

アルバム全篇、フォーク系とも、プログレ・フォーク系とも、紹介される、肩の力を抜いて聴ける楽曲で占めています。それでもなお、のちに、当アルバムと2ndアルバム「Twice As Nice & Half The Price」を合わせて2枚組アルバム「Upon Reflection」として発売するにあたり、楽曲3「Harlequin 2」の延長上ともなる楽曲「Harlequin 2-2」では、まさにプログレ・フォーク系ともいえる変拍子を盛り込まれた楽曲も含まれるため、「木漏れ日フォーク」と聴くだけでは片づけることが出来ないHeronの音楽性の奥ゆかさを感じずにはいられないアルバムです。

[収録曲]

1. Yellow Roses
2. Car Crash
3. Harlequin 2
4. Smiling Ladies
5. Little Boy
6. Sally Goodin
7. Upon Reflection
8. Lord & Master
9. Little Angel
10. Goodbye
11. For You
12. Sally Goodin
13. Carnival & Penitence
[Bonus Disc]
14. Bye And Bye
15. Through Time
16. Only A Hobo
17. I’m Ready To Leave

2004年に発売された紙ジャケットによる24ビット・デジタルリマスタリングが手元にありますが、そのボーナス・ディスクとして、当アルバムを発表する以前にスタジオ・レコーディングされ、1971年になって4曲入りシングルとして発売された4曲が収録されています。

「木漏れ日フォーク」なるものに興味がある方に聴いて欲しい1枚です。

また、イギリスのプログレ・フォーク系のバンド:Pentangle、イギリスのフォーク歌手:Sandy Denny、Vashti Bunyan、Duncan Browneやスコットランドのフォーク系のシンガー・ソングライター:Donovan、Bert Janschなどのアコースティカルな響きが好きな方におすすめです。

当アルバムを聴き、Heronを好きになった方は、よりロック寄りに、R&Bな感覚もある1971年発表の2ndアルバム「Twice As Nice & Half The Price」を聴いてみてはいかがでしょうか。

アルバム「Heron」のおすすめ曲

1曲目は、3「Goodbye」
タイトルのコーラス「Goodbye」に掛け合いのように繋がる上昇音階のギターのフレーズが印象的過ぎます。なぜか、よりメロディックさがあるPaul MacCartney作曲でMary Hopkinが唄う楽曲「Goodbye」を思い出してしまいます。

2曲目は、15「Through Time」
前半部は、アコースティカルなアンサンブルだからこそ、哀愁を帯びた唄メロがあまりにもせつなくなります。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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