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プログレおすすめ:Affinity「1st Album」(1970年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 1970年代, イギリス, エクレクティック[折衷派], 女性ボーカル


Affinity -「1st Album」

第243回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックなバンド:Affinityが1970年に発表した1stアルバムにして唯一の同名アルバム「Affinity」をご紹介します。

Affinity「1st Album」

淡い世界

番傘を差した金髪の女性が池を眺め、その視線の先には2羽の白鳥がいると云う。

全体的にピンクかかった色調に施したKeefによるアートワークは、そのミステリアスでいて、どことなくサイケデリックさを感じてしまい、儚ささえ感じてしまう・・・。

1968年に、Lynton Naiff(オルガン、ピアノ、エレクトリック・ピアノ、ヴィブラフォン、ハープシコード)とGrant Serpell(ドラム)の2人が、Mo Foster(ベース)らとともに、1968年に結成したバンド:ICEで、ポップ・バンドのスタイルで活動してましたが、ジャズ・スタイルによる新しい音楽の方向性を見い出そうとし、オーディションにて、Mike Jupp(アコースティック&エレクトリック&12弦ギター)とLinda Hoyle(ボーカル)を迎え、あらたなバンドを結成します。

Affinityの音楽の特徴は、バンド結成当初の方向性を物語るジャズ系のエッセンスで、Lynton Naiffによるオルガンや、紅一点のLinda Hoyleによるボーカルに濃厚に感じられます。また、ギターやベースを含めたアンサンブルには、ポップ・バンドからの派生と云えるブルーズ系のエッセンスも感じられます。そして、楽曲によってブラスやストリングスが効果的にアレンジされていることで、全体的に、かすみかかったサイケデリックさも感じれるのではないでしょうか。

アメリカの女性シンガーソングライター:Carole Kingの楽曲「Long Voyage」やLaura Nyroの楽曲「Ell’s Coming」のカバーによるLinda Hoyleの情感さや大らかさを併せ持ち、パワフルなボーカルも印象的に、

1970年代初頭のヴィンテージさ溢れるジャズ系とブルーズ系のアートロックなサウンドが聴ける忘れられないブリティッシュ・ロックの名作です。

聴き手によって「イカシテル」と感じる聴き応えのあるアルバムです。

楽曲について

冒頭曲1「I Am And So Are You」は、トラッド・ロックバンド:LindisfarneのAlan Hull作曲によるもので、Affinityらしさ溢れるサウンド・メイキングを含めた楽曲への仕立てのクオリティを強く感じずにいられません。終始、Led ZepplelinのJohn Paul Jonesのアレンジによるブラス・セクションが冴えわたるとともに、負けず劣らずと立ち向かうか如く、高域を抑え中低音のボーカリゼーションで聴かせるLinda Hoyleによるボーカリゼーションは、ブラス・セクションを交えたアンサンブルとともに、ただただ圧倒されてしまいます。ブラス・セクションは、2分30秒前後からクロージングまでのブルージ―なギター・ソロにも絡みつくかのように印象的なアレンジが施されており、アルバムのオープニングに相応しいパンチの効いた楽曲となっています。

2「Night Flight」は、仄かにサイケデリックさあるアンサンブルがジャージーなアンサンブルで幕をあげ、ブラック・フィーリングのビートが効いたモータウン調のサビ部とオルガンを交えたファンキーなヴァースのミドル部への展開が冴える楽曲です。Linda Hoyleによるボーカルは1「I Am And So Are You」よりも高音を効かせジャージーでブルージさが全開でより開放的な印象を与え、オルガンを交えたファンキーなヴァースのミドル部から連なるハモンド・オルガンによるソロのドラスティックでダイナミックさ溢れる旋律は、リズムをキープするベースラインもあるからこそ、よりいっそう躍動的に聴かれます。再度、前半のヴァースに続き、6分前後からは、パーカッションも躍動的に、ドライブの効いたビートに合わせブルージなギター・ソロでクロージングします。

3「I Wonder If I Care As Much」は、The Everly Brothers)の原曲をAffityによるシンフォニックな展開が聴ける楽曲です。Led ZepplelinのJohn Paul Jonesのアレンジによるストリングス・セレクションには、まるでLed Zepplelinの楽曲「No Quater」を華やかさにしたサウンド感、ドラムの前のめりでエコーが効いたビートには、The Beatlesの名曲「Ticket To Ride(邦題:涙の乗車券)」のような感覚、Linda Hoyleの大らかなボーカリゼーションも含め、ほのかに幻想さもあるシンフォニックな展開は、前2曲とは異なるAffinityの魅力の1つといえるでしょう。

4「Mr. Joy」は、Annette Peacockの原曲やそのボーカルのけだるさを活かし、個人的にAffintyらしさも感じられるがと思う楽曲です。Linda Hoyleのボーカリゼーションは、Annette Peacockに負けず劣らずけだるさを醸し出し、オルガン、ビブラフォン、エレクトリック・ピアノがメインのアンサンブルと合い、ソフトなジャージーさに溢れています。楽曲は後半へすすむにつれて、ハードなビートのアプローチになるとともに、Linda Hoyleのボーカリゼーションもまた、けだるさから妖しさも感じさせて、混沌寸前のジャージーさが炸裂していきます。そのボーカリゼーションは聴きどころの一つですね。

5「Three Sisters」は、1「I Am And So Are You」同様に、ブラス・セクションを効かせた楽曲ですが、よりオルガンのリフも活きたアンサンブルで聴かせてくれます。ギターとオルガンがそれぞれのリフの間を活かし、さらにブラス・セクションが加わるアンサンブルは、2分前後からのギター・ソロ、3分30秒前後のオルガンのリフなど、リズムセクション以上にビートを意識した心地良くも流麗な大胆にもヘビーなアプローチの展開が堪能出来ます。

6「Cocoanut Grove」は、アメリカのロックバンド:The Lovin’ SpoonfulのJohn Sebastianの原曲を、ブルース・フィーリングふんだんにピチカート風に弾くアコースティック・ギターのフレーズと、やはりオルガンがジャージーな旋律が印象的な楽曲です。Linda Hoyleのボーカリゼーションも含め、ナイト・バーでほんわりと妖しげに演奏しているかのようなサウンドスケープを魅せてくれます。

7「All Along The Watchtower」は、Bob Dylanの原曲による約11分強にも及ぶ大作です。他楽曲と異なり、よりシャープなリズムセクションのためか、やはりここでもオルガンによるリフやソロのドラスティックなアプローチ、Linda Hoyleの情感がこもったパワフルなボーカリゼーションなど、アルバムのハイライトともいうべきパンチの効いたアンサンブルが聴けます。随所に盛り込まれ繰り広げられるオルガンのソロには、長尺さからくる一種の怠さを感じさせない圧倒さがあるんです。ただただ約11分強、身を委ねて聴き入ってしまいますね。

アルバム全篇、Linda Hoyleの情感さ、妖しさ、躍動さなど特徴あるボーカルとともに、ブルーズ調にもジャズ系をベースとしたアンサンブルは、ハモンド・オルガンや楽曲によっては加わるブラスやストリングスもまじえ、サイケデリックさを感じさせてくれるアートロック系を感じさせてくれます。バンド唯一のアルバムにして、前後にレコーディングした楽曲も含め、フォーク系、ブルーズ系、ジャズ系、シンフォニック系など、プログレッシブ・ロックのエッセンスも含むブリティッシュ・ロックが聴けます。

[収録曲]

1. I Am And So Are You
2. Night Flight
3. I Wonder If I Care As Much
4. Mr. Joy
5. Three Sisters
6. Cocoanut Grove
7. All Along The Watchtower

[Bonus Tracks]
8. Eli’s coming
9. United States Of Mind
10. Yes Man
11. If You Live
12. I Am The Walrus
13. You Met Your Match
14. Long Voyage
15. Little Lonely Man

なお、CDには、アメリカの女性シンガーソングライター:Laura Nyroが原曲の8「Ell’s Coming」、Steve Wonderが原曲の13「You Met Your Match」、Carole Kingが原曲の15「Long Voyage」、イギリスのThe Beatlesが原曲の12「I Am The Walrus」など、8曲のボーナストラックが収録されてます。なかでも、10「Yes Man」はオルガンによる迫力あるプレイがアートロック系にも5大プログレバンド:Emerson, Lake & Palmerを彷彿とさせるテクニカルなプログレッシブ・ロックが聴ける好作品です。

1970年代初頭のオルガンを交えたブリティッシュ・ロックの名作を聴きたい方におすすめです。

Affintyは当アルバムが唯一作となってしまうため、当アルバムを聴き、Affinityを好きになった方のうち、Linda Hoyleの特徴あるボーカルをより効きたい方に、1971年に発表される1stソロ・アルバム「Pieces Of Me」を聴いてみてはいかがでしょうか。

アルバム「Affinity」のおすすめ曲

1曲目は、2「Night Flight」
オリジナル楽曲として、他カバー楽曲がもつ本質的な良さに引けを取らないクオリティを感じてしまうんです。Linda Hoyleの抑制さ、高低さ、アクセントも効いた奥行きさのあるボーカリゼーションとともに、前身となるポップ・グループとしてのグルーブも活きた素晴らしい演奏が聴けます。

2曲目は、4「Mr. Joy」
Linda Hoyleの印象的なボーカルとともに、ビートが効いているにも関わらず、楽曲後半では混沌寸前のジャージーさを醸し出すサウンド感が堪能出来ます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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