プログレおすすめ:George Harrison「Wonderwall Music(邦題:不思議の壁)」(1968年イギリス)
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最終更新日:2015/12/29
1960年代, イギリス, サイケデリック, メロトロン George Harrison
George Harrison -「Wonderwall Music」
第205回目おすすめアルバムは、イギリスのミュージシャン:故George Harrisonが1968年に発表した1stソロ・アルバム「Wonderwall Music」をご紹介します。
イギリスのロック・バンド:Oasisが1995年に発表した名曲「Wondewall」のネーミングのもとになったと云われる、Jane Birkin主演の1968年イギリス映画「Wonderwall」。当アルバムは、その幻のカルト作品と云われることもある、映画「Wonderwall」のオリジナル・サウンドトラック盤です。
ロック史上で最も成功したグループ・アーティスト:The Beatlesのギタリストとして活躍していたGeorge Harrisonが、The Beatlesの活動期間中、1968年11月1日にはじめて発表したソロ・アルバムであり、レコーディングは、遡ること1967年12月にイギリス、1968年1月にインドにて実施されています。
いっぽうで、その前後期間のThe Beatlesは、1967年12月にテレビ映画「Magical Mystery Tour」のEP盤を発表し、1968年11月22日には通称「ホワイト・アルバム」と云われる2枚組アルバム「The Beatles」を発表していますが、名盤と云われるアルバム(「Revlover」、「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」)で魅せたサイケデリックなサウンドから、よりバンド・サウンドを活かしたシンプルなアンサンブルへと移行した期間だったかと思います。
当アルバムには、John Lennon作曲作詞による名曲「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」(アルバム「Rubber Soul」収録)で、はじめてシタール導入をしたGeorge Harrisonによるインド音楽の傾倒と、The Beatlesの音楽スタイル移行とは真逆の方向にてサイケデリック・カルチャーへを感じさせる
インド音楽にサイケデリックな色彩も豊かなサウンドが溢れています。
楽曲について
アルバムの楽曲には、インドの楽器(sarod、tabla、pakavaj、shehnai、sitar、sur-bahar、santoor、thar-shehnai、tabla-tarangなど)が利用され、冒頭部1「Microbes」に代表されるように、ラガーロック系のエッセンスに溢れています。
ただし、冒頭部1「Microbes」の印象が強くとも、たとえば、The Beatlesの楽曲でいえば、名曲「within you without you」(アルバム「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」収録)や「Love You To」(アルバム「Revolver」収録)のように、すべての楽曲がラガーロック系の比重の高さが多いわけでありません。
仄かにサイケデリックさのある2「Red Lady Too」、メロトロンとヴィブラフォンを交えたような実験性のある電子音楽的な7「Greasy Legs」、それぞれ「Eddie Clayton」と「Richie Snare」と変名し、Eric ClaptonとRingo Starrがギターとドラムで参加しロック・テイストの比重もある8「Ski-ing」、サイケデリックなサウンドにボーカル入りの楽曲として期待してしまう楽曲(10「Dream Scene」と11「Party Seacombe」)や、メロトロンをバックにピアノの儚い旋律が際立つ18「Wonderwall To Be Here」など、少ないながらも、プログレッシブ・ロックシーンのバンドが、黎明以前に、アート系やサイケデリック系の思考が強いアルバムを発表していますが、その1960年代後半のロック・シーンにおける雰囲気が溢れています。
そして、George Harrisonは、当アルバムの制作過程から、The Beatlesの楽曲「The Inner Light」の制作原型を見出し、産声をあげてもいます。
アルバム全篇、サウンドトラック盤として仕上がった内容を、映画監督:Joe Massotに映像に合わせて手直しをしても構わないとGeorge Harrisonが申し出たが、Joe Massotは、映像にマッチングし手直しなど一切必要ないと言ったというエピソードが残っています。映画「Wonderwall Music」とともに愉しめば、さらにアルバムのイメージを膨らませることが出来ると思います。
[収録曲]
1. Microbes
2. Red Lady Too
3. Tabla And Pakavaj
4. In The Park
5. Drilling A Home
6. Guru Vandana
7. Greasy Legs
8. Ski-ing
9. Gat Kirwani
10. Dream Scene
11. Party Seacombe
12. Love Scene
13. Crying
14. Cowboy Music
15. Fantasy Sequins
16. On The Bed
17. Glass Box
18. Wonderwall To Be Here
19. Singing Om
プログレッシブ・ロックのジャンルのうち、サイケデリック思考の強いサウンドが好きな方におすすめです。
イギリスのOzric Tentaclesはもちろんのこと、フランスのGong、デンマークのMantric Muse、ベルギーのQuantam Fantayなど、ラガー・ロック調も垣間見えるサイケデリック/スペース系のプログレッシブ・ロックのエッセンスが好きな方に、よりディープなラガー・ロックを感じえたい方におすすめなんです。
また、ブリット・ポップの系譜でいえば、The Beatlesで発表された楽曲のうち、George Harrisonの音楽性でインド音楽のエッセンスが好きな方にはおすすめです。
そして、当アルバムの楽曲8「Ski-ing」のギター・リフを拝借し制作した楽曲「Gokula」を発表したKula Shaker、映画のタイトル「Wonderwall」をもとにネーミングした名曲「Wonderwall」を発表したOasisなどを好きな方は触れて欲しいアルバムです。特に、前者のKula Shakerはラガーロック思考が強いため、時代を遡ったネイティブに近いラガーロックのエッセンスを堪能出来ると思います。
「Wonderwall Music」のおすすめ曲
1曲目は18曲目の「Wonderwall To Be Here」
メロトロンを利用したサウンド感は、1960年代後半から1970年代初頭における、たとえば、King Crimsonの名曲「Epitah(邦題:墓碑銘)」(1stアルバム「In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾンキングの宮殿)」収録)で感じえる陰鬱さや儚さあるプログレッシブ・ロックの楽曲のプロトタイプと想起してしまうサウンド・メイキングを感じずにいられません。
2曲目は10曲目の「Dream Scene」
ギターのフィードバック音を交え、映画のワンシーンを彩る楽曲です。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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