プログレッシブ・ロックのおすすめアルバム、楽曲、関連話など

   

プログレおすすめ:Genesis「Trespass(邦題:侵入)」(1970年イギリス)


Genesis -「Trespass(邦題:侵入)」

第79回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Genesisが1970年に発表した2ndアルバム「Trespass(邦題:侵入)」をご紹介します。
Genesis「Trespass(邦題:侵入)」

1stアルバム「From Genesis To Revelation(邦題:創世記)」に続くアルバムとして、Peter Gabriel(ボーカル)、Anthony Banks(キーボード)、Anthony Phillips(ギター)、Mike Rutherford(ベース・ギター)、John Mayhew(ドラム)という5人により制作されています。3rdアルバム「Nursery Cryme(邦題:怪奇骨董音楽箱)」以降、ギターがSteve Hackett、ドラムがPhil Collinsにメンバーチェンジし、よりクリエイティブなクオリティが上がっていく印象があるため、世間一般的にいえばあまり馴染がなく、名盤や名作としては取り上げられることは少ないと思われます。

また、1stアルバムでのアートロックやサイケデリック/スペースさやソフトロック寄りのサウンドからの変貌は、1stアルバムのプロデューサーであるJonathan Kingに気に入られようとした曰くがあったことを拭い、現在でも拡がる初期GENESISのイメージを確立するうえで重要な決断だったと思います。動の表現に粗削りな印象があるものの、まだ20代前半でのプログレッシブな想いが伝わってくるのは筆者だけでしょうか。

筆者が最も「好きなプログレッシブ・ロックのアルバム」の1枚に数えられる。

筆者が、たとえばプログレッシブ・ロックで好きなアルバムを5枚ほど選ばなければならないとしたら、必ずといっていいほど脳裏に思い浮かぶアルバムです。Phil Collins主導の1976年発表「A Trick of the Tail」以降を含めたGENESISのアルバムだけでなく、1970年代以降、2014年現在までのプログレッシブ・ロック系のアルバム全てを対象にしてです。

このアルバムでは、1stアルバムでも垣間見せた静と動を行きかうドラマチックな楽曲構成が際立ちはじめ、Anthony PhillipsとMichael Rutherfordによる12弦ギターに、Peter Gabrielのフルートやタンバリンが絡みあうアンサンブルには、繊細さと大胆さに溢れ、変拍子やPeter Gabrielの独特の歌い回しも伴い、既にプログレッシブな展開が愉しめる。それでいて、以降の他アルバムと比べて、7thアルバム「A Trick of the Tail」でも健在さを示す抒情的でメロディラインの楽曲が多いのも特徴です。

そう刹那さ溢れるメロディに重点を置き、静と動を繊細さと大胆さで溢れたサウンドに惹き込まれてしまう。

楽曲について

タイトル「Looking For Someone」の一声から始まるのが印象的な冒頭曲1「Looking For Someone」は、ハモンドオルガンやクワイアボイスをバックに、ギター、ドラム、ピアノがメリハリあるアンサンブルを重ね、Peter Gabrielによるヴァースの刹那さ溢れるメロディラインを際立たせている印象すらあります。3分40秒前後から4分10秒前後で、リズムの強弱を落としPeter Gabrielによるフルートのソロ、5分前後からのAnthony Phillipsによる鋭角なメロディラインのギターのリフ、楽曲全体を占める行進曲とも印象すらある猛々しいドラムなど、筆者がGENESISに溜息をついてしまうほどのクリエイティブの一端が冒頭曲に溢れているんです。そして、6分以降のエンディング近くの各楽器のアンサンブルによる妙には、GENESISが好きな所以であるファンタスティックな展開も魅せてくれるんです。

これから奏でられる多くのGENESISの楽曲の序曲に相応しいサウンドが満載です。

さらに、2「White Mountain」は、イントロからAnthony PhillipsとMike Rutherfordによる12弦ギターのアンサンブルを中心に、優雅さもあり、それでいて儚さを讃えたメロディラインに胸がかきむしられるような想いになってしまいますね。Peter Gabrielによるスピーディなヴォーカリゼーションのコントラストは絶妙で、気が付けば5分30秒以降のPeter Gabrielと思われる口笛や、6分以降エンディングにかけて奏でられる12弦ギターのアンサンブルの印象も強く、どこまでも儚さを溢れたサウンドに敷き詰められています。口笛には、たとえば、1975年発表のアメリカのミュージシャン:Billy Joelの楽曲「Stranger」の冒頭やラストを彩る口笛のように一抹の寂しさや哀愁さを感じてしまいます。

3「Visions Of Angels」は、冒頭曲1や2よりも明朗でいて、よりフォーク寄りなアプローチでイントロで幕を上げます。12弦ギターよりもピアノやオルガンの音色がアンサンブルとなり、ヴァースでのじわじわと盛り上げていくメロウさに、サビではコーラスが重なりシンフォニックなイメージが拡がっていくんです。特に、2分30秒前後からピアノによるきめ細やかなフレーズ、2分40秒前後からのメロトロンが重なり拡がる様には、優雅でいて素敵なサウンドスケープを思い描けると思うんです。メロウに優しげのある静と、繊細さもある動のバランスもあるフォーク寄りであるがシンフォニックな展開が素敵な楽曲ですね。6分前後からエンディングにかけての優雅な展開に辿りつくまでもなく感じ得る部分が多いのではないでしょうか。

小曲のようなイントロで始まる4「Stagnation」も、12弦ギターのアンサンブルを中心に、オルガンが楽曲を盛り上げる楽曲。3「Visions Of Angels」と比べれば、ギターのフレーズや左右のPANの振り方など、より幻想的にアンサンブルが奏でられます。その幻想さを漂わせた
フレーズの数々は4分前後まで少しずつ力強さを増していき、また4分前後の次のテーマともいうべきヴァースでもメロディアスなメロディラインが綴られていきますが、どこまでも幻想的なアンサンブルの妙は変わらず、アルバム中の他楽曲とは異なる感覚でサウンドスケープ
を感じずにはいられませんね。楽曲はエンディングまで終始、過去の出来事を重ねてしまう「リアル」なサウンドスケープよりも、夢うつつと陥りそうな瞬間かもしれません。この楽曲で感じ得る感覚が、おそらく以降のGENESISらしさへ追い求めてしまうサウンドではないでしょうか。

5「Dusk」も4「Stagnation」と同様に幻想的な展開な楽曲ですが、2分以降の幻想的な空気を切り裂くように吹かれるフルートの音色など、それぞれの楽器の音粒はより丹精でいて、リアルと夢うつつの中間のような印象すら感じてしまいます。このアルバムの特徴ともいうべき12弦ギターの素敵なフレーズがより後半で際立ち聴けるのが印象的です。

猛々しく和音を叩きつけるように重なるオルガンのフレーズに、鋭角なギター、そしてドラムではじまる最終曲6「The Knife」は、一連の楽曲とは異なり、よりアグレッシブな展開が聴ける楽曲です。拡声器を通じ発生したようなPeter Gabrielのリズミカルなヴォーカリゼーションによるヴァースに、鋭角なギターのリフとシャッフルなリズム感は否が応でも心を弾ませ、緊張感溢れるサウンドが愉しめます。

3分前後からは、フレーズとフレーズの合間で息遣いが聞き取れもするようなフルートが聴けます。そのフルートによる幻想的なフレーズは、当楽曲でも本当に心落ち着く仮初の時間であるかのように、4分40秒以降、Peter Gabrielによる呪術のように繰り返されるヴァースとギターのフレーズ、そして、スクリーム的に泣き叫ぶ発声が立ち込める中、刺々しくも哀愁さもあるエレキギターのソロが聴けます。まるで、当アルバムのジャケット裏からジャケット表に対し、ナイフ(=The knife)で抉られるようなサウンドは、エンディング近くのベース・ギターをリフに中心にすえた軽やかなフレーズでさえ、当楽曲が滲み出る緊張感を落ち着かせようとする印象にしか聴けません。

冒頭曲1から静と動によるGENESISの序曲ともいうべき展開から、フォーク寄りなサウンドでも幻想的さを交え、シンフォニックな展開を魅せて、しっとりとアルバムを終わると思いきや、鋭利に叩きつけ、切りつけるナイフのような緊張感のあるサウンドでコンパイルしたラスト楽曲にアルバム全篇でメリハリを感じる素敵なアルバムではないでしょうか。

[収録曲]

1. Looking For Someone
2. White Mountain
3. Visions Of Angels
4. Stagnation
5. Dusk
6. The Knife

Genesisの名盤、傑作アルバムといえば、3rd「Nursery Cryme(邦題:怪奇骨董音楽箱)」も含め、4th「Foxtrot」、5th「Selling England By The Pound」などが挙げられます。もちろん筆者もGENESISのファンとして同様に思うところですが、当アルバムは、以降のGNESISの楽曲に溢れるエッセンス(静と動のサウンドを繊細と大胆さのあるアンサンブル)が聴けるのでおすすめです。

GENESISをフォローワーとする現代のプログレッシブ・ロックバンドでもフォーク寄りからシンフォニックな展開が好きな方や、流麗で切なげなメロディラインが好きな方に、ぜひおすすめなアルバムです。

アルバム「Trespass」のおすすめ曲

1曲目は、ラスト6曲目の「The Knife」
当アルバムをCDで購入すると、前述のジャケットの表裏のデザイン(ジャケット表から裏にかけて、ナイフで抉られらたようなデザイン)にふと興味を持ちます。アグレッシブなサウンドとともに、そのデザインを直接想起させるイメージが当楽曲に溢れており、緊張感やギターのフレーズがクールで好きだからです。

2曲目は、4曲目の「Stagnation」
他楽曲よりも唄モノのアプローチの比重を下げて、より幻想的なサウンドでのアンサンブルが楽曲の最初から最後までしっかりと構築されているからです。切なげな他楽曲も好きなのですが、ラスト6曲目の「The Knife」の次に強いていえば選ぶぐらいに難しい選曲です。

当アルバムの楽曲は、本当に1曲1曲が素敵すぎます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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