プログレおすすめ:Colin Edwin & Jon Durant「Burnt Belief」(2012年オーストラリア他)
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最終更新日:2015/12/30
2010年‐2013年, アンビエント, フルート, マルチナショナル Colin Edwin, Colin Edwin & Jon Durant, Porcupine Tree
Colin Edwin & Jon Durant -「Burnt Belief」
第194回目おすすめアルバムは、オーストラリアとアメリカのミュージシャンが集いColin Edwin & Jon Durantとして2012年に発表した1stアルバム「Burnt Belief」をご紹介いたします。
バンド:Colin Edwin & Jon Durantが2014年に発表した1stアルバム「Burnt Belief」をご紹介します。
Colin Edwin & Jon Durantは、現代のプログレッシブ・ロックで重要なバンド:Porcupine TreeのメンバーであるColin Edwin(ベーシスト、エレクトロニクス、プログラミング)と、ジャズやフュージュンで知名度のあるアーティスト:Jon Durant(ギター)の2人が中心です。
1980年代にイギリスで一世を風靡したJapanの故Mick Karn(ベース)のフォロワーにして、Porcupine TreeやEx-Wise Headsでも類まれなる才気を魅せるColin Edwinのフレットレスベースによるプレイと、5大プログレバンド:King Crimsonのリーダー:Robert Frippや、Mick Karnとも共演したことのあるDavid Tornらを敬愛するJon Durantのギター・プレイは、両者の良さがうまくブレンドし合い、澄み漂う独特のアンビエントさで聴き手を包み込むことでしょう。
Colin Edwin自身が所属するEx-Wise HeadsのメンバーであるJerry Leake(パーカッション)とGeoff Leigh(フルート)をゲストに迎い入れることで、Ex-Wise Headsファンであれば、アルバムを聴く前に、当アルバム発表の前年2011年発表の6thアルバム「Schemata」の世界観やサウンド・メイキングに近しいイメージを感じるかもしれませんが、Jon Durantのギター・プレイの存在が、新たなケミストリーを生んでいます!
Jon Durantは、ジャズ/フュージュン系のアーティストでありながらも、プログレッシブ・ロックの質感やエキゾチックさをルーツにしており、そのギター・プレイを語る上で、”cloud guitars”なる言葉が切っても切れない存在です。Jon Durantは、”cloud guitars”は、始まりや終わりが表現出来ない雲のように空を漂うサウンド(all of the sounds hang in the air like clouds, with no discernable beginning or ending)と語っています。
ボリューム・ペダルと各種エフェクト(リバーブ、ディレイ、ハーモナイザー)の異なるコンビネーションで生まれるアトモスフェリックさが冴えわたるJon Durantのギター・プレイに、中東の影響を受けているだろうポリリズムなパーカッションと東洋的なフルートの旋律、そして、Colin Edwinのフレットベースが織りなすスムージングによるアンサンブルは、エレクトロニクスを交えつつ、時や場所を超越し深淵なる森や海底へ沈み込むサウンドスケープを魅せてくれると思います。
楽曲について
冒頭曲1「Altitude」は、ポリリズム溢れるパーカッションに、エレクトロニクスのサウンドが漂う中、フレットベースのリードに導かれ、50秒前後からJon Durantによるメイン・テーマのギター・プレイで幕を上げる楽曲です。中東さを醸し出すパーカッションに呼応するかのように、Jon Durantもエキゾチックなフレーズも交えながら、伸びやかにもメイン・テーマを奏でていきます。並奏する仄かにヴァイオリンの旋律を想起してしまう”cloud guitars”によるエフェクトさは、まさにアトモスフェリックさが漂い、フュージュン系を想起させるロックでコンパイルしたメイン・テーマととも、
いずれの空の切れ目から生まれては消えた雲が進むべき彼方へと突き進むかのようなサウンドスケープを魅せてくれます。
各楽器がリズミカルさでビート感を出す2「Impossible Senses」、不穏のある緊張感が終始感じる3「Prism」、フルートが吹き乱れ、ノイジーなギターが旋律を辿り、まるでデュエットしているかのようでいて、King Crimson ProjeKctのハードな一面を想起させる4「Balthasar’s Key」と聴き、
約12分の大曲5「Uncoiled」は、前半10分でのアトモスフェリックさをこれでもかと聴かせ、このまま終わっても楽曲として成り立つだろうと感じるところで、10分前後からエレクトリック・ギターが思いの丈をぶちまけるかのように淡々とミニマルな旋律を刻み、クロージングするのは、アルバム中盤のハイライトと云えるべき瞬間ではないでしょうか。
オリエンタルなムードが最も漂う6「Semazen」に続き、リズムセクションが醸し出すアンサンブルとエレクトリクスの断片が交錯し合う中でこだまするフルートがテーマを独奏し幕を上げる7「The Weight of Gravity」は、4分前後からフルートが奏でるテーマに並奏するギターが仄かに盛り上げ、5分30秒前後から、ヒステリックにトーンを変えノイジーさでギター・ソロは乱れ舞います。当楽曲にもKing Crimson ProjeKctでサックスをフルートに置き換えたハードな一面を想起させるクオリティの高さが伺えます。
最終曲8「Arcing Towards Morning」は、ギターもフレットレスベースもピアノもいずれの生楽器でも、フレットにも指版にも鍵盤にも繊細にも触れては離れるつまぶく音が聴きとれるぐらいに、ゆったりとジャージーな世界観とともにプログレ・フォーク寄りのアンサンブルを聴かせてくれます。他楽曲と比べても、複雑さよりも淡々としたメロディだからこそ、アルバムのクロージングに相応しいスピリッチュアルさに溢れている気がします。
アルバム全篇、テーマとなるメロディにフュージュン系を想起させるクールネスと、King Crimson ProjeKctによるハードな側面など、Colin EdwinとJon Durantがこれまでに培ってきた音楽性もちらほらと垣間みせつつ、いっぽうで、中東や東洋にみるオリエンタルなムードも醸し出しています。テクニックとスキルフルさも然ることながら、音と音が交錯し合う独創性は、人の心底へ触れるアンビエントなミュージックとして、素敵な仕上がりのアルバムと思います。
[収録曲]
1. Altitude
2. Impossible Senses
3. Prism
4. Balthasar’s Key
5. Uncoiled
6. Semazen
7. The Weight of Gravity
8. Arcing Towards Morning
単純に、心地良くもアンビエントが好きな方におすすめです。
もちろん、Colin Edwinが所属するEx-Wise Headsを好きな方、Porcupine Treeの楽曲でもアトモスフェリックさ溢れるアンビエントなパートが好きな方にもおすすめです。
また、残響さやインストルメンタルの独創性という点で、アメリカでPhill Collonsの息子:Simon Collinsが所属するプログレッシブ・ロックバンド:Sound of Contact、1980年代に活躍したアメリカのロックバンド:Supertrampの初期のサウンド、イギリスのミュージシャンで1973年発表のロック名盤に挙げられるアルバム「Tubular Bells」のMike Oldfieldなどを好きな方におすすめです。
個人的には、フレットベースによる存在やオリエンタルなムード(中東さや東洋さ)から、どうしても1980年代に活躍したイギリスのロック・バンド:Japanの1980年代発表の4thアルバム「Gentlemen Take Polaroids(邦題:孤独な影)」や1981年代発表の5thアルバム「Tin Drum(邦題:錻力の太鼓)」を聴いた方々に、そのハイブリットな存在として聴いて欲しいアルバムです。
「Burnt Belief」のおすすめ曲
※当アルバムは、全曲インストルメンタルのため、おすすめを控えさせていただきます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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