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プログレおすすめ:Er. J. Orchestra「Gabrielus」(1998年ウクライナ)


Er. J. Orchestra-「Gabrielus」

第214回目おすすめアルバムは、ウクライナのジャズ系のプログレッシブ・ロックバンド:Er. J. Orchestraが1998年に発表した1stアルバム「Gabrielus」をご紹介します。
Er. J. Orchestra「Gabrielus」

Er. J. Orchestraは、1989年に、メインコンポンザーであるAlexei Alexandrov(ピアノ、リコーダー)を中心に、ウクライナはキーフで結成されたバンドです。1992年には、アルバムのレコーディングと同時にライブ活動が出来るよう、ミュージシャンを集めていき、3年の月日をかけて、当1stアルバム「Gabrielus」は1998年に発表されました。

バンドの音楽性は、シンフォニック系のジャンルに括られるものの、ジャズ系をメインに、フォーク系、ニューエイジ系、チェンバー系など様々なジャンルのエッセンスを含んだインストルメンタル中心のアンサンブルです。様々なジャンルを感じさせつつもシンフォニック系であるのは、Dr.Kobtsev(ボーカル、コンゴ、ボンゴ、パーカッション)、Andrei Chuguyevets(12弦アコースティックギター、ドムラ、バヤン)、Vladimdr Sorochenko(ベース)、Alexander Beregovsky(ドラム、コンゴ、ボンゴ、ヴィブラフォン、パーカッション)の4ピース編成と、その他管弦楽器奏者を含む9人編成であることがあげられます。

リズムセクションには、Dr.KobtsevとAlexander Beregovskyによるコンゴ、ボンゴ、ヴィブラフォン以外にも、Sergei Hmelyov(マリンバ、ヴィブラフォン)を加え、オーケストラとしてのパーカッシブさに厚みをもたせ、Andrei Chuguyevetsは、ロシアの民族楽器である弦楽器のドムラやアコーディオン楽器のバヤンを駆使し、バイオリン奏者:Victor Kriskoとともに弦楽でサウンドに幅を拡げていきます。さらに、Viktor Melezhik(ソプラノ・サックス、テノール・サックス)とDmitry Solovyov(アルト・サックス)の管楽器奏者が楽曲に彩りを添え、バンドの名称「オーケストラ」に相応しくシンフォニック系のアンサンブルで聴かせてくれます。

忙しさではなく、ゆったりと休日午後の落ち着いた時間の大切さを感じさせてくれるアルバムと思います。

楽曲について

冒頭曲1「The Tea Ceremony Kiev-Paris」は、せわしくリズムが刻まれ、バヤンが響かせるアコーディオンの音色とサックスをアンサンブルに、Alexei Alexandrovによるピアノがメインのテーマを奏でる軽快な楽曲です。4分30秒前後からのバヤンによるタンゴ調のリズム、5分30秒前後のウクライナの地特有と思われるエスニック風味のスキャット、6分前後からのミニマルなピアノの旋律、7分30秒前後のドムラなどを交え、ジャズ系の軽やかさや心美良いアンサンブルには、楽曲のタイトルからイメージする晴やかなおやつ時から夕方にかけての午後のひとときをサウンドスケープを魅せてくれます。

アルバムのタイトル楽曲2「Gabrielus」は、交錯し合うパーカッションに導かれ、冒頭曲1よりもスローテンポによるシンフォニック系の楽曲です。55秒前後からのリコーダーとサックスが交互に旋律を掛け合うパートを終え、2分前後からのヴィブラフォンとチャイニーズ・シンバルがアンサンブルをリードしつつ、ドムラ、ヴァイオリン、フルートなどが交互に重ねていく旋律は、ニューエイジ系のゆったりとしたサウンドを醸し出していきます。

3「A Letter to Jana」は、時としてリズミカルに聴かせながらも、小刻みなパーカッションに、独特のスキャット、凛とした旋律を奏でるピアノとバヤンに、ヴァイオリンの旋律も絡み合う楽曲です。1「The Tea Ceremony Kiev-Paris」のトーンを抑えたかのように、ナイト・ミュージック的に印象的です。

4「The Bamboo Forest Temple」は、仄かにサイケデリック/スペース系なスペーシ―さを醸し出しつつ、どことなくオリエンタルさを漂わせる12弦アコースティックギターをメインとしたフォーク系のアンサンブルで幕を上げます。突如、3分30秒前後からジャズ・タッチのピアノが旋律を奏で、8分前後からはボンゴによるタイトなパーカッシブなパートへと移行し、ヴァイオリンの旋律とともにクロージングを迎えます。一聴し予測不可能なパートの移行や、時として、King Crimsonの名曲「Moonchild」のインストルメンタル部でのインプロビゼーションを若干想起してしまう展開には、プログレッシブ・ロックの醍醐味を存分に感じさせてくれる楽曲です。

5「Chanson d’Automne」は、終始ピアノとパーカッションがアンサンブルの中心を司り、入れ替わりさまざまな楽器がリードを重ねる楽曲です。冒頭部からはドムラと12弦アコースティックギターによる綴れ織りの旋律、3分前後からのバヤンとスキャット、4分前後からのベース・ギター、5分前後からのシンバルとスキャット、スキャットにユニゾンするピアノの旋律など、楽曲タイトルをイメージさせるフランスのシャンソンを具現するかのようなリードを聴かせてくれます。

最終曲6「Syringa」は、3分55秒前後からマリンバによる圧巻の独奏、5分前後からのドムラとスキャット、6分30秒前後からのピアノ、7分前後からのパーカッシブさ、8分前後のリコーダーなど、アルバムの他楽曲以上に、さまざまな楽器がリードしては交錯し合う楽曲です。明確なメロディラインをもたず、淡々と奏でられアルバムはクロージングを迎えます。

アルバム全篇、終始ピアノとパーカッションがアンサンブルをメインに、ロシアの民族楽器(ドムラやバヤン)や独特のスキャットを交えたオリエンタルなムードを満載なアンサンブルを聴かせてくれます。冒頭曲1「The Tea Ceremony Kiev-Paris」ではじまり、ゆったりとした休日午後に落ち着きリラックス出来るアルバムと思います。

[収録曲]

1. The Tea Ceremony Kiev-Paris
2. Gabrielius
3. A Letter To Jana
4. The Bamboo Forest Temple
5. Chanson d’Automne
6. Syringa

ジャズ系のエッセンスもあるインストルメンタル系のバンドを聴きたい方におすすめです。

メロディックさ、刹那さや憂いさ、センチメンタルさなどのメロディラインやアンサンブルの比重は極端に低いため、それよりもドムラ、バヤン、マリンバの旋律や加わるアンサンブルによるオリエンタルなムードにロシアやウクライナの地特有の旋律を聴いてみたい方にもおすすめです。

聴き手によっては異なる印象を感じえて、あらたな発見をするかもしれません。

アルバム「Gabrielus」のおすすめ曲

※当アルバムは、全曲インストルメンタルのため、おすすめを控えさせていただきます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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