プログレおすすめ:Aiste Smilgeviciute ir SKYLE「Povandenines Kronikos」(2007年リトアニア)
Aiste Smilgeviciute ir SKYLE – 「Povandenines Kronikos」
第70回目おすすめアルバムは、リトアニアのプログレッシブ・ロックバンド:Aiste Smilgeviciute ir SKYLEが2007年発表のアルバム「Povandenines Kronikos」をご紹介します。
ロシアの西の地に位置するバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の一国:リトアニア出身のバンドです。一部男性ボーカルの楽曲もありますが、女性ボーカルをメインとしたプログレ・フォーク、もしくはシンフォニック系の演奏感を聴かせてくれます。ただし、筆者はあることがきっかけ(※後述)で、当アルバムの音源を入手出来ましたが、アーティストに関する情報不足が多く、ただただ先入観もなくその土地柄を意識しながらもそのサウンドに聴き入っていました。リトアニアはポーランドの地と深い繋がりがあると云われており、その音楽性の影響もあるかと思います。
楽曲について
クリーントーンによる2つのギターのアルペジオが絡み合い、主題となるギターのリフがイントロで印象的な冒頭曲1「Sventaragis」は、バスドラムのフィルインにでもアンプラグドさを溢れており、少し物憂げでありながらのクリーンな女性ボーカルによるヴァースもサビも、西欧の良質なポップとして捉えてもおかしくないぐらいにしっかりと聴けます。前述のギターのリフは女性ボーカルによるヴァースに対し、カウンターメロディとして終始奏でられ、独特なコーラスやフルートのソロなども含め、エキゾチックさも垣間見えドラマチックに素敵な仕上がりではないかと思います。そして、4分15秒前後からの半音階スケールで下降するマイナー調のギターのフレーズなども西欧のコンテンポラリーな楽曲の様相が溢れてるんです。ヴィブラードを活かした女性のボーカリゼーションも楽器の一部であるかのように印象的ですね。
想像以上に透明や浮遊さのある洗練された音楽性に圧倒されます。
アコースティックギターとフルートの音色による軽快さとフランジャーが彩るエレキギターのフレーズがアンサンブルにある2「Uola」をはさみ、チェロの独奏ではじまるリリカルさが素敵な3「Eliziejaus Laukai」、アコーディオンがアンサンブルで印象的なリフを刻む4「Jurzoliu Sokis」、さらにフルートも絡み合う10「Skaisciasalmis Karys」、パーカッシブさがメロディラインをリズミカルに際立たせる6「Saukiu Liuti」、ヒーリング・ミュージックにも通じるENIGMAやADEUMASを想起させる讃美歌な独特なコーラスワークが印象的な7「Adonis」など、1曲1曲にメリハリのある演奏が盛り込まれており、聴き応えが十分です。
そして、最終曲14「Ruduo」は、アコースティックギターの繊細なストロークがフィルインし幕をあげます。ディミニッションスケールをベースにし、イントロから奏でられる様に、目を瞑り聴き入れば、朝方に地平線の向こう側へ日の出を迎えるような壮大なロマンを感じさせてくれるサウンドスケープを感じえるんです。
ボーカルのヴァースに添えるように奏でられるフルートのフレーズも印象的に、楽曲は次第に盛り上がりを見せて、エレキギターのフレーズが聴こえ、3分30秒以降のオーケストラとコーラスによる独特なユニゾンが30秒ばかり続けば、その後、女性ボーカルによるコーラス、フルートとオーボエが絡み合い、幻想的でいて、当アルバムでも屈指のプログレッシブさを強く感じます。この楽曲の後半部のインプレともおぼしめきサウンドに恍惚と聴き入りつつ、ふと楽曲はクロージングを迎えます。ただただ冒頭曲1「Sventaragis」以上に圧倒されながら・・・。
男女混成ボーカルによる4「Jurzoliu Sokis」や、男性ボーカルがメインの12「Ismintis」、13「Sesuo」がありながらも、全14曲どの楽曲にも共通しているのは、リスアニアの地特有と思われるエキゾチックさを垣間見ながらも、独特なコーラスワークに、浮遊さと透明さを纏った洗練された楽曲たちです。
エメラルドグリーンの水中に、水の妖精のようが泳ぐ様をとらえたようなアルバムジャケットの印象に近いしいかもしれません。
[収録曲]
1. Sventaragis
2. Uola
3. Eliziejaus Laukai
4. Jurzoliu Sokis
5. 60
6. Saukiu Liuti
7. Adonis
8. Laikas
9. Baltas Brolis
10. Skaisciasalmis Karys
11. Teogonija
12. Ismintis
13. Sesuo
14. Ruduo
リトアニア語による歌唱での独特な唄いまわしや、その地特有のリリカルさやトラッドさと思われるメロディラインが印象的です。中東欧地域のプログレフォークやシンフォニック系にも通じるプログレ感があり、女性ボーカル、中東欧のプログレ、プログレフォーク、シンフォニックをキーワードに、ぜひおすすめなアルバムです。
なお、当アルバムは通常販売では入手することは確認が取れず(※2014年7月20日現在)、iTunesで視聴や購入することが出来ます。
幻想的で美麗なアルバムジャケットに惹かれ、楽曲を購入してもはずれではないと確信します。
ただ、iTunesでなければ購入出来ないのではないかとなると、どうやってAiste Smilgeviciute ir SKYLEの「Povandenines Kronikos」に巡り合ったのか、続きは下記もご一読下さい。
「新世紀プログレッシヴ・ロックの波」で出逢う未知なる音楽
今年2014年1月2日(木)から5日(日)に4日連続で、NHK-FMで放送されたプログレ特集の番組「新世紀”プログレッシヴ・ロック”の波」は記憶にも新しいことと思います。その3日目の放送「第3夜(1月4日)「女性ヴォーカルとプログレと民族音楽」」では、日本のシンガーソングライターの遊佐未森さんがゲストでご出演されていて、タイトル通り、女性ボーカルによるプログレ特集だったのですが、Renaissance、White Willow、Thieves’ Kitchenなどのイギリス勢やポーランドのAlbion、イタリアのCorde Obliqueに交じり、プログレでは見慣れぬリトアニアのPievos、そして、今回「おすすめアルバム」として取り上げたAiste Smilgeviciute ir SKYLEの楽曲「Sventaragis」が流れてたんですよ。アーティスト名もタイトル名も楽曲名も正式な発音が分からずに、ただただ聴き入ってしまいました。まだまだ世界には素敵な音楽が溢れていると感じましたよ。
▼「[Vol.1]春にプログレを聴きたい~「新世紀プログレッシヴ・ロックの波」で想う~」のレビューは下のリンクから▼
「[Vol.1]春にプログレを聴きたい~「新世紀プログレッシヴ・ロックの波」で想う~」
過去のNHK-FMのプログレ特集と比べたら、特集の手法が斬新さもありましたが、とても感謝です。ありがたい。
アルバム「Povandenines Kronikos」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲の「Sventaragis」
シンフォニック的な展開の中に、耳に馴染むギターのリフと、耳に馴染みないアンニュイな独特なコーラスが共存しつつ、楽曲の最初から最後まで寝られた構成力をしっかりと感じてしまうんです。
2曲目は、最終曲の「Rundo」
朝方に地平線の向こう側に、日の出を迎えるような壮大でいて、浮遊さのあるサウンドスケープを強く感じるんです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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