プログレおすすめ:Gazpacho「Firebird」(2005年ノルウェー)
Gazpacho -「Firebird」
第38回目おすすめアルバムは、ノルウェーのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Gazpachoが2005年に発表した3rdアルバム「Firebird」をご紹介します。
1996年に、Jan Henrik Ohme(ボーカル)、Thomas Alexander Andersen(キーボード)、Jon Arne Vilbo(ギター)の3名を中心に結成され、当アルバムでは、Robert Johanssen(ドラム)に、ベーシスト、ギタリスト、ヴァイオリン奏者がゲスト参加しています。
当アルバムは、2003年発表の1stアルバム「Bravo」、2004年発表の2ndアルバム「When Earth Lets Go」で提示されてきたデジタルなサウンド・メイキングとGazpachoらしさのアンニュイで物憂げに退廃感を掘り下げたロマンチシズム溢れるサウンドが融合し、次作2007年発表の4thアルバム「Night」以降の奥ゆかしきサウンドのベースを感じられます。また、各楽曲の唄メロにはフックとなるメロディがくっきりと際立ち、メロディアスな印象があることは、以降のアルバムも含め、個人的に希有ではないかと思います。
弦楽ヴァイオリンの独特な旋律とフック溢れるメロディがデジタルさに溶け込むロマンチシズム溢れるサウンド
が愉しめる1枚です。
楽曲について
冒頭曲1「Vulture」はイントロから退廃感が充満し、物憂げなボーカリゼーション、アンサンブルに溶け込むヴァイオリンの音色、デジタル感とゴシック的な音処理により、メロディアスでありながらも様々な要素が織りなす独特の世界観に溢れた楽曲かと思います。PANを左右に交互に振り分けるギターソロに耳を傾けていると、息をすることも忘れるぐらい切迫さを感じ、約6分の時間にぐったりするぐらいに浸ってしまいます。
アルバム冒頭曲からあまりにも切なく心を掻き毟られてしまう。
特に、エッジの効いたギターのリフとヴァースでのアコースティックギターのストロークが構成する4「OrionⅠ& OrionII」の前半部「OrionⅠ」のサウンド感を耳にしながら、Jan-Henrik Ohmeのボーカルが耳に入ると、個人的にイギリスのロックバンド:Queenの元ボーカル:故Freddie Mercuryを想起させる声質とボーカリゼーションが耳を捉えて溜息がついてしまうんです。サビで流れる物悲しいシンセの音色、そのシンセのフレーズを活かしたシンセソロも印象的に奏でられます。後半部「OrionII」はデジタルによる静寂感と、アコースティックギターのストロークをベースにしながらとともに、躍動的にもゴシックさ溢れるスクリーム的なボーカリゼーションの印象的に聴かせてくれます。
3「Swallow」や続く5「Prisoner」は当アルバム中で最も1970年代のグラムロックを想起させるような印象的なコーラスワークや退廃感のあるロマンチシズムをコンパクトネスに感じさせてくれます。
ただ、後半の8「Firebird」、9「Do You Know What You Are Saying?」、10「Once In A Lifetime」の各楽曲を聴き続けていけば、イギリスのバンド:Radioheadのようなポストロック的なクリエイティビティも感じえます。プログレッシブという括りだけでは収まり切れない緊張感です。
最終曲10「Once In A Lifetime」のコーラスワークとヴァースのボーカルが交互に展開する前半は、ここまでに連なる楽曲以上に心の奥底へ沈み込ませるような、アルバムのクロージング・ナンバーに相応しい楽曲です。ミドル部(2分40秒前後)に異なるテーマのメロディラインをもつ唄メロが聴けることで、ホッと一息つけるかと思えば、その後も切なげなヴォーカルに包まれ、唯一の救いは、その後半のクロージングまでのヴォーカリゼーションがどことなく抑制されているからでしょうか。
アルバム全篇、1stアルバムと2ndアルバム以上に、放心状態になるぐらい「聴いていた心」が辛くなってしまう心地となりますが、それでも何度も何度も聴いてしまいます。それぐらいに魅惑的なロマンチシズム溢れるアルバムと思います。
[収録曲]
1. Vulture
2. Symbols
3. Swallow
4. OrionⅠ & OrionII
5. Prisoner
6. Jezebel
7. Black Widow
8. Firebird
9. Do You Know What You Are Saying ?
10. Once In A Lifetime
そのサウンド全体には、個人的に1970年代初期のRoxy Musicや1990年代のSuedeにも通じるグラムロックな感覚を抱いてしまいます。物憂げさや退廃感が溢れたメランコリックさをキーワードに聴いている方にもおすすめです。
サウンド・コラージュなど実験的なサウンドを活かす楽曲もただ見受けられますが、Gazpachoらしさはどのアルバムにも溢れていると思います。当アルバムでGazpachoを好きになった方には、2003年発表の1stアルバム「Bravo」と2004年発表の2ndアルバム「When Earth Lets Go」や、次作以降のどのアルバムもおすすめです。
アルバム「Firebird」のおすすめ曲
1曲目は冒頭曲「Vulture」
当アルバム全体を代表するサウンドのエッセンスが含まれているだけでなく、楽曲に占める緊迫感にいつも圧倒されてしまいます。他楽器とのアンサンブルに自然と溶け込んだようなヴァイオリンのアレンジの妙が印象的に残っています。
2曲目は5曲目「Do You Know What You Are Saying ?」
ヴァースの各楽器のアンサンブルが繊細に、ボーカルがトーンを上げる瞬間にゴシックさのある歪みを効かせますが、どこまでも祈りを捧げるような曲調が印象的なんです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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