プログレおすすめ:ASIA「Gravitas(邦題:荘厳なる刻)」(2014年イギリス)
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最終更新日:2015/12/30
2014年, イギリス, メロディック・ハード ASIA, Carl Palmer, Emerson Lake & Palmer, Geoffrey Downes, John Wetton, king Crimson, YES
ASIA -「Gravitas(邦題:荘厳なる刻)」
第23回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブなロックバンド:ASIAが2014年3月に発表した12thアルバム「Gravitas(邦題:荘厳なる刻)」をご紹介します。
1982年に、ボーカルにjohn Wetton(元King Crimson~Uriah Heep~Wishbone Ashなど)、キーボードにGeoffrey Downes(元The Buggles~YES)、ドラムにCarl Palmer(元Emerson, Lake & Palmer)、ギターにSteve Howe(元YES)による4人でバンドを結成し、1stアルバム「ASIA(邦題:詠時感~時へのロマン)」でデビューしています。
1stアルバム「ASIA」には、歌詞の世界観とは真逆にイントロから変拍子を多用したギターリフが印象的で「これから」を感じさせる冒頭曲「Heat Of The Moment」、John Wettonのボーカルとコーラスに絡み合うキーボードとギターの輪唱感が素敵な2曲目「Only Time Will Tell」、流麗なAメロの最終曲「Here Comes The Feeling」など個性溢れる楽曲が多いことと、全曲共通し空間を感じさせるサウンドメイキングが素敵ですぐに好きになりました。
1983年発表の2ndアルバム「Aplha(邦題:アルファ)」を最後にオリジナルメンバーのギターのSteve Howeが脱退してしまいます。以降もASIAはメンバーチェンジを繰り返し作品を発表し続け、このオリジナルメンバー4人によるバンドが25年ぶりにバンド復活し、2008年に9thアルバム「Phoenix」が発売された時には喜んだファンの方もいるかと思います。以降2010年には10thアルバム「Omega」、2012年には11th「XXX」と発表し続けてくれたことが個人的に嬉しかったんです。
ただ、当アルバム「Gravitas(邦題:荘厳なる刻)」の制作直前に、ギタリストのSteve Howeが脱退し、Steve Vaiからの推薦もあり新ギタリストしてSam Coulsonが加入し当アルバムは発表されました。
楽曲について
前作11th「XXX」の冒頭曲「Tomorrow World」で、Geoffrey DownesによるピアノとSteve Howeのペダルスティールによるギターのアンサンブルの切なげなイントロが印象的で、続く唄メロの力強さも好きだったので、Sam Coulsonにギタリストが変わることでどのようにサウンドに変化が生じるのかが焦点の1つでした。
冒頭曲1「Valkyrie」の出だしからすぐに驚いたのはjohn Wettonの歌声です。2007年に心臓の冠動脈を患い、復活を遂げた後の10thアルバム「Omega」以降のアルバムに声の張りが感じられない印象があったのですが、独特の憂いを帯びた澄んだ声が聴けた気がしたんです。john Wettonの歌声にキーボードによる弦楽器が奏でられるイントロは、Geoffrey Downesとjohn Wettonによる別プロジェクト:ICONのような感触ですね。唄メロは10thアルバム「Omega」以降の楽曲の様相であり、淡々といてたおやかな曲展開だから、「Valkyrie」と唄うjohn Wettonの歌メロがより一層素敵に聴こえてしまうんです。そしてASIAらしさのブリッジがあり、このアルバムの焦点の1つであるギターソロが聴けます。Steve Howeではどちらかというとテクニカルなギターのフレーズを聴かせてくれるYES時代の演奏スタイルが好きでASIAでも同様なフレーズを聴かせてくれるのですが、この「Valkyrie」でのSam Coulsonのギターは大人しめに、楽曲でのバランスを重要視している印象を感じました。
2「Gravitas」はシンセによるキーボードの物憂げな出だしがバラードではなく、これから躍動的に展開する楽曲の序章のような印象を与えるイントロですが、想像通り2分前後からGeoffrey Downesの力強い鍵盤と、ギターのフレージングが聴けます。過去のASIAのサウンドを彩ったオルガンの音色が懐かしさと力強さを感じさせてくれるだけでなく、オリジナルメンバー再結成後、10thアルバムの冒頭曲1「Finger On The Trigger」に代表されるコーラスワークなどASIAのいくつものエッセンスが散りばめれているんです。後半部ではSam Coulsonによる流麗でいて素敵なギターソロが聴けます。
冒頭の2曲を聴き、ぐっと気持ちが当アルバムに入り込んでしまったんです。
アルバムには他にも、いくつものコーラスが輪唱、復唱を重ね、独特なサビメロが印象的な4「Nyctophobia」、キーボードによるオーケストレーションとギターによる躍動的なイントロから続くヴァースなど、当アルバムでは2「Gravitas」にも比肩しうるダイナミックさを感じる6「Heaven Help Me Now」、4thアルバム「Aqua」以前にJohn Wettonが2度目の脱退をし未発表曲となっていた躍動的なリズム感で聴かせる7「I Would Die For You」、昔アメリカのヤンキースで活躍したJoe DiMaggioにちなんだと思われる8「Joe DiMaggio’s Glove」、これまでの楽曲に見られなかったどことなくアメリカのハードロックなバンド:Bon Joviの初期楽曲を彷彿とさせる最終曲9「Till We Meet Again」などです。
[収録曲]
1. Valkyrie
2. Gravitas (i. Lento ii. Gravitas)
3. The Closer I Get to You
4. Nyctophobia
5. Russian Dolls
6. Heaven Help Me Now (i. Wings of Angels ii. Prelude iii.Heaven Help Me Now)
7. I Would Die For You
8. Joe DiMaggio’s Glove
9. Till We Meet Again
「プログレッシブ・ロックのエッセンスをポップスとして鏤めた3分半の楽曲」というスタイルでASIAはデビューします。
このアルバムでもコンパクトでポップスな雰囲気は健在と思いますが、正直、1stアルバム「ASIA」で抱いたイメージや、2ndアルバム「Alpha」のファンタジックさあるプログレハードな感覚は以降少しずつ薄れていき、当アルバムも同様な感触で、あの頃のコーラスや鍵盤の音色、そしてメロディアスさを堪能出来るにすぎないのかもしれません。もしくは、他の方には自分よりも「ここにASIAらしさがあるじゃないか!」と感じる方もいると思うんです。
1982年1stアルバム「Asia(詠時感~時へのロマン)」で抱いたポップだけど壮大なサウンドスケープに今でも焦がれ追い続ける方や、プログレ感のあるサウンドを漂わせていても、ポップでキャッチ―な楽曲が好きな方におすすめですね。
3分半の楽曲と真逆な楽曲と
2ndアルバムの冒頭曲「Don’t Cry」、そのB面「Daylight」などなど。
3分半で、ポップでキャッチ―でいて、表面的にはプログレ感が少ないながらも、プログレの古き良きサウンドは散りばめられています。
いっぽう2008年にオリジナルメンバーで復活以降のライブ映像やライブアルバムでは、
King Crimsonの「Starless」、「Book of Saturday」、「In The Court Of The Crimson King」
EL&Pの「Fanfare for the Common Man」
YESの「Roundabout」
Bangles「Video Killed The Radio Star」
などなど、
それぞれのメンバーのキャリアの楽曲をレパートリーしているのが聴けると嬉しいんですよね。
King Crimsonの「Starless」はオリジナルのヴォイスなのだから!
そんな「プログレな気持ち」。
アルバム「Gravitas」のおすすめ曲
1曲目は、2曲目の「Gravitas」
現在のASIAが、過去のエッセンスも含めた「懐かしさ」と、新しいギタリストを迎え「力強さ」を兼備したサウンドを聴かせてくれるからです。
2曲目は、1曲目の「Valkyrie」
淡々と進行する楽曲のAメロ展開が好きなんです。その後のサビにあたる「Valkyrie」の唄メロが際立ってると感じたから。また、アルバムの1曲目としてはおとなしいかもしれないけれど素敵な幕開けと同時に、2曲目「Gravitas」と連なって聴きたくなる衝動がおさえられないから。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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