プログレおすすめ:冷酷仙境(Cold Fairyland)「地上的種子(Seeds on the Ground)」(2007年中国)
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最終更新日:2015/12/02
2000年代, ネオ・プログレ, 中国, 女性ボーカル Cold Fairyland
冷酷仙境(Cold Fairyland)-「地上的種子(Seeds on the Ground)」
第15回目おすすめアルバムは、中国の冷酷仙境(Cold Fairyland)が2007年に発表した2ndアルバム「地上的種子(Seeds on the Ground)」をご紹介します。
村上春樹の小説「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」の中国語訳の書物から命名されたと云う、冷酷仙境(Cold Fairyland)は、2001年に、林笛(ボーカル、キーボード、中国式琵琶(pipa)、阮(ruan))が、Su Yong(ベース)と2人で結成し、1stアルバム「2005 現場(Flying Over the City)」を発表したのがはじまりです。
2003年発表の2ndアルバム「Kingdom of Benevolent Strangers」を経て、当アルバムは、他にもSong Jian Feng(ギター)、Su Yong(ベース)、Zhou Shengan(チェロ)、Li Jia(ドラム)の3人を加えた5人編成で制作されています。
バンドの特徴は、シンフォニック系のエッセンスもちらほらと、東アジア特有のフォーキーな音楽が融合したアンサンブルであり、
中国式琵琶や阮の響き(ヴィブラード、はじき)も豊かな中国の地の特有のプログレ・フォークが愉しめる1枚と思います。
楽曲について
冒頭曲1「地上的種子」は、チェロの優しげな弦の響きで始まりますが、このチェロは唄メロでも中国式琵琶によるソロでも終始アンサンブルで利用され、楽曲の芯を司る重要なファクターです。そのイントロのフレーズだけなら、イギリスの5大プログレバンドのうちの1つ:King Crimsonの「Starless And Bible Black」の挿入歌「Exile」のワンフレーズを想起してしまうのですが、1曲を通じ終始奏でられていることで楽曲全体に優しげな与える印象をもたらしていると思うんです。もちろん中国の地特有のトラッドさあるフォーク寄りの感触が溢れているかと思います。例えば、1970年代に活躍したイギリスのトラッド・フォーク系のプログレッシブ・バンド:Pentagleなどに近い演奏スタイルに近しいかもしれません。また、サウンド・メイキングと合い間って、曲調はよりマイナー調でセンチメンタリズムを感じるかもしれません。
ボーカル入りの楽曲は、1「地上的種子」、6「関山月」、11「荒城夢魘」の3曲しかありませんが、唄メロを含む楽曲のメインのアンサンブルには、チェロの弦、硬質で抑え気味のカッティングが印象的なギター、ベースが中心の構成です。また、曲調は優しげなだけでなく、唄メロの合間にギターのカッティング、ベース、ドラムが裏拍子を意識したリズムでアクセントをつけています。このアクセントが楽曲を引き締め、リズムに対しクロックを高めてるような気がしました。また、その他インストルメンタルの楽曲には、チェロと中国式琵琶がメインのアンサンブルで奏でられています。
アルバム全篇、曲自体にジャズっぽさがある4「繚乱」などがアクセントに引き締めながらも、中国式琵琶(pipa)や阮(ruan)などの旋律が醸し出す雰囲気が、中国のトラッド・フォークを脳裏に駆り立て、シンフォニック系をほんのりと感じさせてくれる素敵なアルバムです。ただし、聴き手によりアルバムは異なるサウンドスケープを感じるかもしれません。
[収録曲](中国語/英語)
1. 地上的種子/Seeds on the Ground
2. 光影遊戯/Shadow Play
3. 五人同遊/Five Travellers
4. 繚乱/Puzzle
5. 粛静的旋転/Solemnly Silent Circle
6. 関山月/The Moon at the Fortified Pass
7. 蘇醒/Reawakening
8. 騰雲駕霧/Riding on a Cloud
9. 輪舞/Forest Dance
10. 冰封之国/Icy Castle
11. 荒城夢魘/Ghost Town Nightmare
なお、当レビューでは、2007年初版のアルバム・ジャケットではなく、2009年の再発版を掲載しています。
以前、中国の楽器:二胡(にこ)の演奏を聴く機会が多くあったため、はじめてアルバム全篇を通じて聴いた時には、懐かしさを感じ当アルバムを聴き入ってしまいました。
イギリスに代表されるトラッド・フォーク(pentagle、mellow candleなど)が好きな方や弦の響き(ヴィブラード、はじき)が好きな方にはおすすめです。
アルバム「地上的種子」のおすすめ曲
1曲目は6曲目の「関山月/The Moon at the Fortified Pass」
当アルバムで数少ないボーカル曲です。中国式琵琶の弦をはじく音に導かれ、チェロと琵琶の伴奏に淡麗なボーカリゼーションが聴けたり、ギターとドラムによるアクセントといい、聴きどころが多い楽曲です。
2曲目は4曲目の「騰雲駕霧」
英語名(Riding on a Cloud)を表現するかのように、中国式琵琶と阮が雲の上を縦横無尽に揺れ動くような旋律と交錯し合うアンサンブルは、パーカッシブさあるリズムも含め、プログレ・フォーク寄りのサウンドスケープを感じてしまいます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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