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プログレおすすめ:Eivor Palsdottir「Room」(2012年フェロー諸島)

公開日: : 最終更新日:2016/01/02 2010年‐2013年, コンテンポラリー, フェロー諸島, 女性ボーカル


Eivor Palsdottir -「Room」

第253回目おすすめアルバムは、フェロー諸島出身でアイスランドを拠点に活動するシンガー・ソングライター:Eivor Palsdottir(以下、Eivor略)が2012年に発表した7thアルバム「Room」をご紹介します。
Eivor「Room」
Eivor Palsdottirは、アイルライド出身ではなく、デンマークの統治領であるフェロー諸島の出身の女性歌手です。

1999年に音楽活動をはじめ、2000年に1stアルバム「Eivor Palsdottir」でデビューを飾るものの、クラシックとジャズを勉強するなど音楽的な飛躍を考え、フェロー諸島からアイスランドの地へ足を運び、活動を重ね、2015年現在は、フェロー諸島を拠点に活動をしてます。

その音楽の特徴は、古来、フェロー諸島付近はバイキングの地として知られており、チェーンダンスや民謡の伝承があることから、民謡を唄っていた時の独特な感性とともに、フォーク寄りにも、さまざまな音楽ジャンル(ロック、ジャズ系、フォーク系、ポップスなど)への深い造詣をもち、エレクトロやプログラミングを絡めたアンサンブルを背景としたクリアな高音から奥いきある迫力あるボーカリゼーションで、フェロー語、アイスランド語、英語などによる歌唱です。

当アルバム「Room」ではエレクトロのシークエンスさが融合することで、
ファンタジックでアンビエントさもあるプログレッシブな雰囲気あるサウンドをバックに唄うEivorの素敵な歌唱が聴けるアルバムです。

楽曲について

冒頭曲1「Green Garden」や10「Falling Free」のように音数の少ない伴奏では繊細な透明さ、8「Night’s Body」や9「Room」ではロック的なアプローチによる力強さが、Eivorの声質に持ち合わせた特徴ではないかと思うんです。

力強さのある楽曲では、バイキング時代以降、フェロー諸島でのみ伝承するチェーンダンスのイメージに想いを馳せてしまいます。足を踏み鳴らしながら民謡を大合唱するイメージが、楽曲の骨子に活き活かされているのではないかと感じてしまうんです。

女性アーティストの楽曲を聴く時には、例えば、アイルランドのEnyaやイギリスのKate Bushの女性アーティストが持つ一種神秘さを引き合いにし、聴いてしまうことがあります。たぶんに含まれず、Eivorもまた同様にですが、民謡的な唄メロの1「Green Garden」を聴けば、アイリッシュ民謡や英国トラディッショナルとは異なる感じえます。1分30秒前後からのサビ部で声を張り上げる際には、微かにヴィブラードがかかる独特な響きや「Bring Back」と唄われる一節がとても印象的で、また、エレクトロをメインとしたアンサンブルに溶け込みながら、ゆったりと時間が過ぎていくような、まるでドリーミーな感覚さえ感じてしまいます。

シングルにもなった2「Rain」でもエレクトロによる無機質なアンサンブルに、独特なボーカリゼーションによる唄メロと楽曲後半部のエスニックさあるコーラスなど、癒しと云うよりも、トラディッショナルな民謡の延長線上にあるメロディラインと思います。

それでなお、POPさがある3「True Love」や6「Far Away」、讃美歌風の5「Wake Me UP」やトラッドフォーク調の7「I Know」は、よりイギリスのトラディッショナルさやポップスさも感じます。

いっぽうで、最終曲10「Falling Free」の後半でのEivorの歌唱を聴いてしまうと、それまで聴いていた印象はいったんリセットしてしまい、個人的には、1「Green Garden」も含め、当楽曲をもっと多く聴きたくて、過去の他のCDを購入したい衝動に駆られてしまいます。

アルバム全篇、ヴァイオリン、オルガン、ギター、ハープ、シンセ、ピアノをまじえ、豊富なトーンの楽曲が散りばめられ、聴き心地良いドリーミングな感覚へと誘ってくれるでしょう。

[収録曲]

1. Green Garden
2. Rain
3. True Love
4. Boxes
5. Wake Me UP
6. Far Away
7. I Know
8. Night’s Body
9. Room
10. Falling Free

エスニックさやロックテイストな楽曲なども含まれますが、独特の歌唱が聴けるとともに、根底にトラッドや民謡による培ったボーカリゼーションですが、この素晴らしい歌声をぜひ聴きいて欲しいとおすすめしたいです。

その歌声に聴き入り、その後、各楽曲に奏でられるエレクトロなアンサンブルを感じ入ることで、後からプログレッシブさの感じてみても良いかもしれません。

当アルバムを聴き、Eivorを好きになった方は、2007年発表のアルバム「Human Child」、2010年発表のアルバム「Larva」、2015年発表のアルバム「Bridges」と「Slor」を聴くことをおすすめします。

アルバム「Room」のおすすめ曲

1曲目は、5「Wake Me UP」
イントロから拡がるエレクトロのアンサンブルに、繊細でいて力強さを感じるトーンのボーカリゼーションが印象的なんです。また、その唄メロには、イギリスの所謂ブリティッシュ・ポップさ、もしくは、映画の序曲のようなイメージを想起してしまいます。

2曲目は、冒頭曲1「Green Garden」
何も先入観なく、民謡からの影響からなのかと思考めぐらしていると、ただただエレクトロをメインとしたアンサンブルに、Eivorの歌声が耳に入っていた感覚に陥りました。そして、ただそう感じているだけで良いと思えるぐらいに身を委ねて聴いてしまってたんです。癒しという感覚ではないのですが、独特な歌声を聴き入ってしまっています。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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