プログレおすすめ:King Crimson「The ConstruKction of Light」(2000年イギリス)
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最終更新日:2015/12/12
2000年代, King Crimson(5大プログレ), イギリス Adrian Brew, king Crimson, Robert Fripp, Trey Gunn
King Crimson -「The ConstruKction of Light」
第213回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:King Crimsonが2000年に発表したアルバム「The ConstruKction of Light」をご紹介します。
リアルタイムのクリムゾン
当アルバム「The ConstruKction of Light」は、アルバム「Discipline」の制作メンバーから共にしていたTony LevinとBill Brufordのリズムセクションがバンドから離れてしまい、Robert Fripp(ギター)とAdrian Brew(ボーカル、ター)に、前作アルバム「Thrak」から加入していたPat Mastelotto(ドラム)とそのTrey Gunn(ベース・タッチ・ギター、バリトン・ギター)の4人体制で制作されています。
ダブル・トリオ(ギター、ベース、ドラム×2)なる6人編成からダブル・ギター(ギター×3)の4人編成とへ変わったことで、前作アルバム「Thrak」よりも、ギターを中心としたアンサンブルを聴かせ、アトモスフェリックさや残響さあるサイケデリック/スペース系の比重を下げた印象のアルバムです。
いっぽうで、1997年以降、メンバーを選抜し、King Crimsonは6つのプロジェクト(ProjeKct)単位でアルバム制作やライブ活動を重ねてきました。もともとKing Crimsonは、たとえば、名作アルバム「Starless And Bible Black」でのアプローチのように、ライブを重ねることで新しい楽曲を成長させてアルバムに収録するスタイルをしていましたが、現代の高度成長による情報社会の影響からか、プロジェクト(ProjeKct)にカタチを変えて発表もされてきた楽曲も含む当アルバムの楽曲には、リアルタイムのKing Crimsonのファンにとっては新鮮さが薄れた印象も受けるかもしれません。拍車をかけるように、過去のKing Crimsonの各アルバムの楽曲を延長させたかのような楽曲が収録されています。2000年と云う年号を区切りとし、往年のファンにとって心をくすぐる、
King Crimsonのバンド史を集約したかのようなギター・オリエンテッドな「メタル・クリムゾン」のアルバムです。
個人的に、当アルバム発表時にHMV試聴機でリアルタイム視聴したKing Crimsonの音楽初体験となるアルバムです。ビーで凶暴さなアンサンブルを第一印象にもってしまうことで、それが災いしてか、5大プログレバンドの中では、Yesに引き続き、しっかりと聴くまである一定期間放置してしまったのがKing Crimsonでした・・・。
楽曲について
冒頭曲1「ProzaKc Blues」は、猛々しいボーカリゼーションのAdrian Brewと荒々しいドラムのPat Mastelottoに、Robert FrippとTrey Gunnによるギターのアンサンブルが描き出す、変拍子と移調を繰り返すヘビーな楽曲です。
楽曲タイトルから連想しうるブルーズを基調とした楽曲でありながらも、いっしゅん第1期King Crimsonのアルバム「Lizard」や「Islands」の混沌とした感覚が脳裏をよぎってしまうヘビーなグルーブ・・・。フリージャズではないロックのダイナミズムを漲らせて聴かせてくれます。
HMV試聴機でリアルタイム視聴した時に、身震いとかではない、なんとも形容しがたい不安さに気持ちを煽り、その凶暴さを感じてしまった「音」を憶えてます。いっぽうで、King Crimsonの全アルバムを発表順に聴いていたら、一定期間放置することもなかっただろう、と後悔の念を感じてもしまいます。
2つのパートに分かれる2-3「The ConstruKction of Light」は、ミニマルなギターの並奏によるインストルメンタルの前半部と変拍子豊かなコーラスをもつヴァースの後半部が印象的な楽曲です。重々しいビートで幕をあげ、楽曲「Discipline」(アルバム「Discipline」収録曲)を彷彿とさせるミニマルさとダンサンブルさのあるアンサンブルの前半部から、5分50秒前後からの後半部のヴァースへ雪崩込むさまは、楽曲「Discipline」の発展系、もしくは、完成系の印象も感じます。それでもなお、仄かにアルバム「Thrak」でのサイケデリック/スペース系を醸し出すサウンド・メイキングには、「Discipline」期のリズムセクションが総入れ替えしていることで、ただ発展系という言葉で片付けられないアクティビティを感じえます。また、歌詞の一節に「Dinosaur」も聴かれることで、じっくりと歌詞を読むことがなくとも、どうしても楽曲「Dinosaur」(アルバム「Thrak」収録)との関連性も考えてしまいますね。
ノイジーなサウンド・エフェクトで幕を上げる4「Into the Frying Pan」は、どことなくThe Beatlesの1960年代中期のサイケデリック期にも、ラガー・ロック調も豊かなサウンド・メイキングや唄メロのメロディラインを彷彿とさせるヴァースが印象的な楽曲です。インストルメンタル部にて、よりヘビーなギターのアンサンブルへとシフトする2分40秒前後から、3分30秒前後にヘビーなラガー・ロック調のヴァースの一節を聴かせれば、続いて徐々に目を覚ますかのように奏でられるヒステリックなギターの旋律に、6分前後からは実験音楽的な残響さを伴うサウンド・メイキングが響き渡りクロージングします。
5「FraKctured」は、楽曲「Inner Garden」(アルバム「Thrak」収録)を彷彿とさせるギターのアルペジオ奏法で幕をあげ、名曲「Fracture」(アルバム「Starless And Bible Black」収録)を下敷きにした超絶に変則的なギターアルペジオをメインとした楽曲です。緩急を交えた前半部はまだしも、5分10分前後からのディストーンを効かせながらも、1つの1つの音をくっきりと際立つ正確無比なアプローチに、ただただ溜息をつくことさえ忘れてしまいます。クロージング瞬間まで聞き逃すことの出来ないRober Frippの名演が封じ込まれてます。
6「The World’s My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum」は、冒頭曲1と同様にヘビーなアンサンブルが聴ける楽曲です。独特なベース・タッチ・ギターによる独特なフレーズに、インストルメンタル部でのギター・シンケンサーによるキーボード的な打弦奏法は圧巻です。
7-9「 Larks’ Tongues in Aspic, Part IV」とアルバム本篇の最後の印象も強い10「Coda: I Have a Dream」は、別々の楽曲と分かっていながらも、そう簡単に分別出来ない楽曲です。
3パートに分かれる前者7-9「 Larks’ Tongues in Aspic, Part IV」は、楽曲タイトルからも想像しうるとおり、名曲「Larks’ Tongues In Aspic, Part Ⅰ(邦題:太陽と戦慄パートⅠ」の発展系とはいえ、名曲「Larks’ Tongues In Aspic, PartⅡ」(アルバム「Larks’ Tongues In Aspic」収録曲)の冒頭部のギター・リフから派生し、2000年代最先端のサウンド・クオリティで奏でるギターをメインとしたヘビーなアンサンブルには、全てを凌駕する迫力があり、2-3「The ConstruKction of Light」や5「FraKctured」とは異なるスタイルでの名演といえるでしょう。
そして、ヘビーなアンサンブルのままに繋がる後者10「Coda: I Have a Dream」は、擦り切れたメタリックさに儚くも抒情さを讃えており、ProjeKct Xでのクレジットによる次曲11「Heaven and Earth」を除けば、楽曲タイトルに「Code」を冠しているとおり、アルバムのクロージングに相応しい展開を魅せてくれます。イコライジングをかけたヴァースの唄メロのメロディラインにはただただ重苦しい夢を見たことが綴れていきます。
あたかも名曲「21st Century Schizoid Man(邦題:21世紀の精神異常者)」を辿るかのように・・・
・・・ケネディ大統領、AIDS、広島、コスボ、ワールド・トレード・センター、ボスニア、ベトナム、ナパーム、ロサンゼルス暴動などが悲劇が走馬灯のように、「I Have A Dream That One Day…(=私は夢を見た。)」と・・・
最後には、アメリカ合衆国の宇宙飛行士Neil Armstrongが語る「That’s one small step for (a) man, one giant leap for mankind.(=これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。)」の後半部「One Giant Leap For Mankind.」をもって、その夢人の重々しい世界観は終わりを遂げるのです。
アルバム全篇、2000年と云う西暦の節目を感じさせるのか、過去King Crimsonの歌詞感、サウンド・メイキング、アンサンブルを集約したかのようなアクティビティが溢れています。
[収録曲]
1. ProzaKc Blues
2. The ConstruKction of Light (Part One)
3. The ConstruKction of Light (Part Two)
4. Into the Frying Pan
5. FraKctured
6. The World’s My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum
7. Larks’ Tongues in Aspic, Part IV (Part One)
8. Larks’ Tongues in Aspic, Part IV (Part Two)
9. Larks’ Tongues in Aspic, Part IV (Part Three)
10. Coda: I Have a Dream
11. Heaven and Earth (performed by ProjeKct X)
ギターをメインとしたメタル系のプログレッシブ・ロックのアンサンブルが聴きたい方、俗に云う「メタル・クリムゾン」を体験したい方におすすめです。
第1期King Crimsonのアンサンブルの特徴であるメロトロンやフルートが醸し出す抒情さや陰鬱さはほぼ皆無です。また、「メタル・クリムゾン」としてのKing Crimsonの過去作品に目を向けてしまいがちです。しかしながら、過去のKing Crimsonを集約したかのような音楽性には、当アルバムを聴いたら、よりその音楽の流れを感じえるためにも、可能であれば、1969年発表の名盤「In The Court Of The Crimson King」から順を追って、King Crimsonのアルバムを聴くことをおすすめします。
「The ConstruKction of Light」のおすすめ曲
1曲目は5曲目の「FraKctured」
変拍子を多用し、緩急とエフェクトを使い分けたギターのアルペジオの旋律は圧巻の名演です。
2曲目は10曲目の「Coda: I Have a Dream」
遡ること、名曲「21st Century Schizoid Man(邦題:21世紀の精神異常者)」から1stアルバムをしっかり聴き、順を追って当楽曲の歌詞へ辿りついて欲しいと感じえる、King Crimsonの歴史自体が当アルバムのコンセプトと感じてしまう楽曲です。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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