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プログレおすすめ:A Secret River「Colours Of Solitude」(2014年スウェーデン)

公開日: : 最終更新日:2015/12/30 2014年, スウェーデン, メロディック・ロック


A Secret River -「Colours Of Solitude」

第193回目おすすめアルバムは、スウェーデンのプログレッシブ・ロックにクロスオーヴァーしたバンド:A Secret Riverが2014年に発表した1stアルバム「Colours Of Solitude」をご紹介します。
A Secret River「Colours Of Solitude」

A Secret Riverは、1995年に、スウェーデンのヨーテンボリ出身のJohn Bergstrand(ドラム、パーカッション)とAndreas Alov(ベース、ボーカル)が出逢い、プログレッシブ・ロックに影響を受けた音楽活動をはじめたのがきっかけです。その後、スモーランド出身のMikael Grafstrom(ギター)とBjorn Sandberg(キーボード)が加わり、現在のバンド構成となり、2014年に当アルバム「Colours Of Solitude」でデビューを飾っています。

バンドの音楽の特徴は、公式Webサイト上で「Music for your heart and soul(君たちの心と魂の音楽)」と好評しているように、「ハートフルな清涼さ」と云う言葉が似つかわしいサウンドが第一印象です。そのメロディックさや豊かなハーモニーには、同国スウェーデンの著名なバンド:Moon Safariが引き合いに出されるぐらいです。と云っても、強いて言えば、Moon Safariでは傑作アルバム2ndアルバム「Lover’s End」よりもシンフォニックさやメロウさの低い1stアルバム「Blomljud」に近しいイメージかもしれません。確かにメロディックでハートフルなメロディラインは、唄メロだけでなくアンサンブルにも溢れていますが、明確な違いはコーラスワークの比重が低いことと、フュージュン系のサウンド・メイキングもちらほらと見せ、ポスト・ロック系のフックとなるエッセンスやテクニカルなリズムセクションではないでしょうか。

他バンドを引き合いに出して紹介することも重要ですが、引き合いに出すことで損なイメージを与えたくない清涼さとメランコリックさ溢れるメロディを、しっかりとメロディアスさと適度なテクニカルさで聴かせるアルバムと思います。

楽曲について

煌びやかさ溢れたピアノの音色とギターのリフで始まる冒頭曲1「Blinding Light」は、その冒頭部のクリーンなトーンのアンサンブルを聴いているだけで、澄み渡った空へ拡がっていくようなサウンドスケープが観えてきそうです。少しばかりにセンチメンタルさもあるヴァースの唄メロのメロディックさ、唄メロを際立たせるかのようにじりじりとしたピアノとギターのリフとシンバルをメインとしたアンサンブルから、1分25秒前後から伸びやかな唄メロによるサビのハーモニウムに場面が変われば、一気に心が惹き込まれてしまいますね。続くギター・ソロもメロディックに高らかに唄い上げられたり、印象的にも伸びやかな唄メロのサビも繰り返され、楽曲はクロージングします。

ギターとベースのユニゾン・プレイやハモンド・オルガンやムーグ・シンセサイザーのソロのパートが聴ける2「No Way To Say Goodbye」、メランコリックなギターのイントロ部とギターのリフがダイナミックにリードし躍動的なアンサンブルで聴かせる3「Starbomb」にも共通しているのは、1「Blinding Light」のように伸びやかな唄メロによるサビが聴けることです。どれだけ、テクニカルさやスキルフルでプログレッシブな展開をみせても、その唄メロのメロディラインが印象的過ぎて、

ただただハートフルに穏やかな気持ちになる。

表題曲4「Colours Of Solitude」は、哀愁さもあるメランコリックなメロディラインが印象的なインストルメンタルの楽曲です。エレクトリック・ピアノがリリカルな旋律を奏ではじまり、途中からユニゾンで応えるギターのフレーズからメロディラインは拡がりをもたせつつもメランコリックに綴られていきます。3分前後からのエレクトリック・ピアノとリズムセクションによるアンニュイなパートもアクセントに、4分30秒前後からのエレクトリック・ピアノの音色も印象的に下降するベースラインを辿るアンサンブルは抑制を効かせつつも抑えきれない感情を忍ぶかのよに楽曲をクロージングさせます。

5「Are You Coming With Me」も4「Colours Of Solitude」の世界観を踏襲するかのように、またセンチメンタルなメロディラインをベースとしながらも、2分20秒前後からは、ギターが高らかに奏でられ、ベースとスキャットがユニゾンするアンサンブルに、2分50秒前後からはジャズ系のお洒落なピアノのリリカルさな旋律に、ユニゾンするギターが聴けます。切迫さではなくともどこまでも繊細に、穏やかでなくても物憂げに、思いの丈をぶつけるようにヴァースの唄メロはクロージング直前まで続き、次曲6「A Place To Start」へと繋がります。

もしも、Moon Safariを彷彿とさせるものがあるとしたら、この6「A Place To Start」の冒頭部のパートを含めた唄メロやソロ・パートのインスト部分ではないかと思います。1分15秒前後からの唄メロのヴァースでは、前曲5「Are You Coming With Me」に続きメランコリックさが溢れており、そのメロディセンスは、当バンドのユニークさが溢れているからです。4分50秒前後からのフュージュン系の音色を活かしたエレガントなギター・ソロも印象的に、アルバム前半部の楽曲にもある伸びやかな唄メロのサビが聴けます。

7「Passing Grace」は、当アルバムでは最もパワフルでダイナミックな楽曲です。と云っても、アンニュイな唄メロのメロディラインに、きりっとしたギターのリフやフレキシブルなハモンド・オルガンの旋律とともに、抑制されたファンキーな感覚も含めてアメリカン・プログレ・ハードなエッセンスを仄かに感じてしまいました。

ベルの音がリードし幕を上げる最終曲8「On The Line」は、一定のシークエンスで奏でられるギターのアルペジオをアンサンブルに、最初のヴァースははじまり、続いてギターのアルペジオに呼応するかのように奏でられるピアノの旋律による2番目のヴァースへと繋がっていく様は、アルバムの最終曲に相応しいピースフルさに溢れています。2分50秒前後からメランコリックにもメロディックに奏でられるギター・ソロから、さらにも盛り上がりをみせる3番目のヴァースも、クロージング直前に突如消え入ります。緩やかなフェードアウトではないため、それはピースフルさに溢れた前半部からすれば、ためらいがちな想いを抱えたかのようなサウンドスケープをみてしまうかもしれません。

アルバム全篇、ポスト・ロックやオルタナティブ・ロックにも通じるアンサンブルをベースにしてる印象が強く、適度にスキルフルなプログレッシブな展開をしたり、伸びやかな唄メロのメロディラインのサビがある楽曲があることで、清涼さも感じえますが、アルバムタイトル「Colours Of Solitude」の和訳「孤独の色彩」にもあるとおり、メランコリックさの比重が高いアルバムです。「Music for your heart and soul(君たちの心と魂の音楽)」で云う「心」と「魂」は、いつでも決して清涼さだけでなく寂しさや哀愁もある音楽と伝えたかったのではないかと思います。

アルバムのテーマと、バンドが表現したかったことを十二分に感じさせてくれる素敵なサウンド・メイキングとアンサンブルではないでしょうか。2ndアルバムを期待せずに入られませんね。

[収録曲]

1. Blinding Light
2. No Way To Say Goodbye
3. Starbomb
4. Colours Of Solitude
5. Are You Coming With Me
6. A Place To Start
7. Passing Grace
8. On The Line

当バンドの独特の唄メロのメロディラインの印象が強いため、ヴァースまではメランコリックさがあり、サビでは伸びやかなで大らかなメロディックさが好きな方、簡単に言えば、メロディアスが好きな方におすすめです。

アンサンブルと云う点では、ギター、ベース、ハモンド・オルガン、ムーグ・シンセサイザー、エレクトリック・ピアノが醸し出す感覚は、5大プログレバンドでいえば、Genesisの幻想さもあるメロディックなシンフォニック系から、メロディックさだけを残した感覚をキーワードに気になった方は、ぜひおすすめです。ポンプ・ロックやネオ・プログレと云われれば異なり、どちからというと、ポスト・ロックやオルタナティブ・ロックにも通じる楽曲の骨子を意識したサウンド・メイキングや構成と感じたからです。

また、引き合いによくでてしまいますから、あまり先入観をもたずに聴いて欲しいのですが、Moon Safariが好きな方におすすめです。

アルバム・ジャケットと、楽曲「A Place To Start」に想う。

楽曲タイトルの和訳「はじまりの場所」といえば、日本の茨城県にある鹿島神宮からみて太平洋に面した明石浜にある「東一の鳥居」を連想してしまいます。鹿島神宮は、皇居から明治神宮、富士山、伊勢神宮、吉野山、高野山、剣山、高千穂などを一直線に連なる最も東に位置し、「東一の鳥居」は「神々の通り道の東門」と云われ、「すべての始まりの地」と云われてます。

だからこそ、アルバム・ジャケットに映る、そよ風が吹く暖かな午後に、日の入りとともに連なる薄雲を見上げるかのように独りベンチに座る人の姿は、そんな「はじまりの場所」、「すべての始まりの地」へと孤独に何かしら想い馳せる想いを表しているのかと思えてなりません。

「Colours Of Solitude」のおすすめ曲

1曲目は6曲目の「On The Line」
アルバムの最終曲にして、その楽曲前半部から醸し出す感覚と、唄メロの終わり方によって、どのように物語は続いていくのか(どのように次のアルバムは飛躍するのか)期待せずにいられないからです。

2曲目は冒頭曲1の「Blinding Light」
当楽曲だけを聴いてしまうと、清涼さ溢れ、Moon Safariを引き合いに出してしまいますが、そのMoon Safariの名盤2ndアルバム「Lover’s End」では、メランコリックさやマイナー調の楽曲よりも甘酸っぱさ溢れた印象が強いんです。それでもなお、アルバムの1曲目として、A Secret Riverの奏でる音楽に、一気に心惹かれるには十分過ぎるぐらいにハートフルさを感じて素敵です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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