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プログレおすすめ:Sourdeline「La Reine Blanche」(1976年フランス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 1970年代, ヴァイオリン, トラッド, フランス, フルート, 女性ボーカル


Sourdeline -「La Reine Blanche」

第136回目おすすめアルバムは、フランスのフォーク系の:Sourdelineが1976年に発表した1stアルバム「La Reine Blanche」をご紹介します。
Sourdeline「La Reine Blanche」
Sourdelineは、1972年に北フランス出身の女性のCatherine Burban、男性のJean-Pierre DanielsenとJean-Pierre Dalongevilleがメインで結成した基本男女3人デュオです。

その音楽性は、同1970年代にイギリスで活躍したプログレ・フォーク系のPentangleの影響を受け、フランスのトラディショナル・フォークを、彼ら特有のバロック・タッチに聴かせてくれます。音楽を表現するクリエイティブの一端を担っているのは、それぞれのメンバーが特徴的な楽器を利用している点かと思います。たとえば、Catherine Burbanは、プサルタ(Psalter)、ダルシマー(dulcimer)、スピネット(spinet)を、Jean-Pierre Danielsenは、ギター、ダルシマー(dulcimer)、フルート、クロムホルン(crumhorn)を、Jean-Pierre Dalongeville (ボーカル、ギター、マンドリン、シタール、クロムホルン)を駆使し、他にも、同アルバムで参加したPascale Piatによるヴァイオリンなどが各楽曲に色を添えています。

バウロン(Bodhran)などを利用した一定のシークエンスでパターン化されたリズムと、ダルシマーやプサルタなどの古楽器が奏でるアンサンブルには、フランスや隣国のゲルマンなど特有のネイティブさを感じさせてくれますが、洗練さとは無縁に剥き出しの情感さを醸し出しています。それがまるで、フォーク系でも純然たるフォークではなく、イギリスのアンダーグラウンドのフォークかプログレ・フォーク寄りと思わせてくれます。

いっぽうで、フランス語で謳われる楽曲には、特に、Catherine Burbanによる物憂げさがありつつも優美なボーカリゼーションから、フランス吟遊詩人音楽のような趣きも感じさせてくれます。

トラディッショナルや中世音楽を基調としたアンサンブルには、洗練さよりもポスト・フォークともいうべきプログレ・フォークへ近づいたアルバムとして、素の感触が漂い心へ訴えかけてくれる気がします。

楽曲について

冒頭曲「Le Chateau De Chantelle」をはじめとし、Catherine Burbanをメインに、Jean-Pierre DanielsenとJean-Pierre Dalongevilleがガイドで寄り添うように展開する楽曲は、唄メロだけを聴いていれば、心を穏やかなにリラックスし聴けるフォーク系の音楽ともいえます。ただ、ダルシマー、プサルタ、シタールの弦1つ1つをつばみあうアンサンブルが重なり合う音の交錯さには、本来のトラディッショナルさ溢れたフォーク系を十分に感じさせてくれます。そして、軽快な小曲2「La Dent Du Loup」に続く3「La Belle Est Au Jardin D’Amour」を辿れば、中世音楽を想起させるトラッド・フォークさもだけでなく、一種独特なラガー系やサイケデリックさも感じえるんです。

Pentangleに影響を受けたとしても、
日本でよりも海外でプログレ・フォーク系と語られることがある所以でしょうか。

アルバムの楽曲は、軽快な2「La Dent Du Loup」、ギターとヴァイオリンが主旋律を分かち合い、スピネット(spinet)の音色が印象的な7「La Reine Blanche」、ヴァイオリンが主旋律となる10「Le Chaudron」などのインストルメンタルを主体とした楽曲や、バザールを讃えたかのような陽気さ溢れる6「Mon Petit Frere」、クロムホルンの旋律が印象的な5「C’Est A’ Ville」や8「J’Ai Vu Le Loup, Le Renard, Le Lievre」などのJean-Pierre DanielsenとJean-Pierre Dalongevilleの男性ボーカルをメインとする楽曲が散りばめられています。

それでもなお、聴きどころは、女性のCatherine Burbanがボーカルをメインの印象となる楽曲でしょうか。フルートの旋律がリードする4「M’En Vas A’ La Fontaine」をはじめとし、特に、弦楽のつばみにカントリー系のタッチも感じさせてくれるアンサンブルが印象的な9「Princesse De
Rien」には、プログレ・フォークともいうべき演奏感が愉します。

最終曲11「L’Eglantine Est Eclose / L3ve-Toi Donc Belle / Quand Mon Pere Il M’A Mariee」は、前半部のインストルメンタルなパート、中間部の3人によるヴァース、ヴァイオリンの旋律など、当アルバムの楽曲を集約した音楽感で聴かせてくれます。

[収録曲]

1.Le Chateau De Chantelle
2.La Dent Du Loup
3.La Belle Est Au Jardin D’Amour
4.M’En Vas A’ La Fontaine
5.C’Est A’ Ville
6.Mon Petit Frere
7.La Reine Blanche
8.J’Ai Vu Le Loup, Le Renard, Le Lievre
9.Princesse De Rien
10.Le Chaudron
11.L’Eglantine Est Eclose / L3ve-Toi Donc Belle / Quand Mon Pere Il M’A Mariee

同フランスで1975年発表のアルバム「De L’autre Cote De La Foret」に代表されるTangerineで感じえるアンサンブルの洗練さよりも、イギリスでいえば華麗さもあるRenaissanceよりも、アンサンブルの妙に輪郭がくっきりはとしたPentangleを聴く方におすすめです。

Pentangleも後期にはより純然たるトラディッショナルなフォーク系の4thアルバム「Cruel Sister」を発表し、5thアルバムでは初期のトラディッショナルさに立ち戻っていることも印象的です。

純然たるプログレ・フォーク系よりも、中世音楽のバロックさも想起させるトラディッショナルさが溢れた音楽は、普段、シンフォニック系、テクニカル系、アヴァンギャルド系、ハード系を聴く方には聴き慣れず、とっつきにくいかもしれません。ただ、Souderlineの音楽性には、現代の北欧やイギリスをはじめとするトラディッショナル・シーンで多くの歌姫のバックヤードで奏でるアンサンブルの一端を感じずにはいられません。プログレ・フォーク系のエッセンスの原点とも捉えられる音楽が、このアルバムには溢れています。

アルバム「La Reine Blanche」のおすすめ曲

1曲目は冒頭曲の「Jean-Pierre Danielsen」
1967年に公開された007映画のパロディ映画「Casino Royale(邦題:カジノロワイヤル)」などのサウンドトラックを彷彿とさせる中世音楽的なユーモラスさもある旋律、アイリッシュさとも取れるトラディッショナルな音楽感を聴いたことで、当アルバムを聴くには十分すぎるぐらいの導入となったからです。

2曲目は7曲目の「La Reine Blanche」
当アルバムの楽曲の中では最もブリティッシュさもあるプログレ・フォーク系を感じさせてくれる楽曲です。他楽曲とは印象の異なる弦楽器の奏法が印象的です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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