プログレおすすめ:Carol Of Harvest「1st Album」(1978年ドイツ)
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最終更新日:2015/12/29
1970年代, ドイツ, フォーク, 女性ボーカル Carol Of Harvest
Carol Of Harvest – 1st Album
第131回目おすすめアルバムは、ドイツのプログレ・フォーク系のバンド:Carol Of Harvestが1978年に発表した1stアルバム「Carol Of Harvest」をご紹介します。
Carol of Harvestは、1976年に、アルバム発売当時16歳(!)の女性ボーカル:Beate Krauseに、Axel Schmierer(ギター)、Heinz Reinschlussel(ベース・ギター)、Robert Hogn(ドラム)、Jurgen Kolb(キーボード)を含めた5人編成で結成されたバンドです。
当アルバムは、1978年当時、ドイツで200枚限定で出回ったバンドのアルバムです。2009年に発売された2ndアルバム「Ty I Ja」ま
では唯一のアルバムで、当アルバムが200枚限定ということは入手が困難なことは察しがつき、プレミアム盤として数十年を経ちました。その間、プログレ・フォーク系の音楽をドイツで演奏するミュージシャンがいれば、必ずと言っていいほどリストアップされてきたのではないかと思います。自分もプログレ・フォーク系のミュージシャンを調べ、CDを探しては、同様な想いを抱いていました。そして、昨年2014年に新規リマスタリングされて、
2013年まで文字情報だけしか得られなかったアルバムが入手できたのです!
その音楽性は、イギリスで云えば、Mellow Candle、Pentangle、Renaissanceなどと比較されるプログレッシブ・ロックとフォークが融合した夢見るようなアンサンブルが特徴です。また、ムーグ・シンセとアシッドなスタイルのギターによるサウンド・メイキングがあることで、ドイツのミュージシャンで想起させるクラウトロック系のエッセンスはあまり印象がありません。ハスキーな声質のBeate Krauseが全篇英語で、時にスキャットを交え唄い上げる様相は、アシッド・フォークとシンフォニック系とも取れるプログレ・フォークのくぐもった音の壁に揺れる蜉蝣のように聴こえてなりません。
楽曲について
冒頭曲「Put On Your Nightcap」はシンセの音に、オブリガードもなく哀愁溢れるギターのアルペジオで幕を上げる楽曲です。ギターのアルペジオはそのままヴァースでもメインとなり、まるでアルバムジャケットの印象のように、くぐもった音処理のシンセが飛び交い、Beate Krauseが唄い上げていきます。3分30秒前後から「lu lu」や「la la」などのスキャットに郷愁ささえ憶えます。この前後に、リズムセクションが入り込み、クラウトロックも想起させる音処理も交えながら、不安定なベットでキーボードによるソロ・フレーズが展開されていきます。6分前後からはビート感の効いたミドルテンポへと移行し、最初のヴァースを再度聴けたかと思えば、リズム・チェンジが入り、歌詞ともアドリブとも取れるBeate Krauseの歌声とエレクトリック・ギターによるソロに、楽曲はドラマチックな盛り上がりを魅せます。10分前後でいったん楽曲が小休止しても、終始鳴り響くくぐもった音処理のシンセに導かれ、一定の電子音と同時に、最初のヴァースへと立ち戻ります。
何度も繰り返される刹那さ溢れる唄メロのメロディラインは、都度変わるアンサンブルにより、さまざまな表情へと変わっていく印象です。12分前後にから再度ビートアップし、フライジングされた処理によりサイケデリックさも醸し出しながら、アコースティックギターのストロークとシンセのフレーズはクロージングへ向けて、ただただ駆け抜けていき、再々度、ヴァースが聴けて、スローテンポにギターのストロークと電子音に最後の一音までヴァースは続き、途絶えます。
変拍子ではなく、リズムチェンジによる激しさと優しさのジェットコースターのような約15分の楽曲展開にただただ身を委ねてしまう。
2「You And Me」は、2台のアコースティック・ギターによるアンサンブルで唄い上げる約2分の小曲です。一定のリフやストローク
を奏でるギターとボーカルにオブリガードで重なるハンマリングを多用したギターの各音色には、1970年代の時代を感じる純然たるフォークの楽曲と思いました。
3「Somewhere At The End Of The Rainbo」も前曲2「You And Me」と同様に、アコースティック・ギターによるアンサンブルで幕を上げ、リズム・セクションとシンセがアンサンブルに加わり、アシッドらしさを醸し出しつつも、中間部のギターのソロも含め、どことなく泥臭さも感じ得るブリティッシュらしさを感じてしまうのは自分だけでしょうか。ドラマチックな展開にも、終始鳴り響くシンセの音の影響なのか洗練された印象ではないんですよね。5分前後からクロージングにかけてフェードアウトしていくシンセによるソロや、落ち着いて唄い上げるBeate Krauseの歌声が印象的な楽曲です。
4「Treary Eyes」は、2「You And Me」と同様な小曲ですが、よりギターの一音一音に強弱をつけた印象も取られ、ヴァースでのアンサンブルでは、その印象はより強くなり、伸びやかな印象の唄メロのメロディラインに痛々しく刹那さや儚さを讃えてるかのようです。「la la」のスキャットさが聴けることが、このアルバム全篇でもハイライトととも感じてしまうんです。
5「Try A Little Bit」は、シンバルのきめ細やかな音と、ギターのリフに導かれヴァースがはじまり、2分前後のディスト―ションを効かせたノイジーなギター・ソロ、3分40秒前後の電子音の早急でかつ乱雑なフレーズ、6分20秒前後の揺れ揺れ感が充満したシンセ・ソロ、7分前後のBeate Krauseのスキャット、8分前後のクリーントーンによるリフを活かしたギター・ソロ、8分30秒前後にそのギター・ソロに並奏するかのような電子音などを楽曲に散りばめながらも、冒頭曲1「Put On Your Nightcap」とは異なり、ヴァースでのアンサンブルを変えることなく展開するのが印象的でした。約10分もの長尺は、各楽器が畳み掛けてブレイクしクロージングを迎えます。
アルバム全篇、2台のアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターによるアンサンブル、ハスキーなBeate Krauseの堂々たるボーカリゼーションやシンセのソロも含め特徴はあるものの、何よりも、終始、仄かに鳴り響くシンセの音が、アルバム・ジャケットのイメージを彷彿とさせる何処となく浮世離れしそうな幻想感(=アシッド感)を醸し出してもくれるアルバムと思いました。
[収録曲]
1. Put On Your Nightcap
2. You And Me
3. Somewhere At The End Of The Rainbo
4. Treary Eyes
5. Try A Little Bit
なお、CDにはボーナストラックとして、1978年当時にライブで演奏した3つの楽曲(「River」、「Sweet Heroin」、「Brickstone」)が収録されています。
終始鳴り響くシンセやクラウトロックを想起させる電子音によるミステリアスでいて幻想的な感覚にアシッド・フォーク寄りの感触を感じるかもしれませんが、前述したイギリスのプログレ・フォーク系のバンド:Mellow Candle、Pentangle、Renaissanceや、フランスのTangerineなどを好きな方におすすめです。
2009年に2ndアルバム「Ty I Ja」に発売されるまで、1978年から30数年もバンド唯一のアルバムとなっていた貴重な1枚であり、2014年になってようやく入手しやすくもなった流通事情もとらえ、感慨深く聴いてしまうアルバムですね。
そんなプログレな気持ち・・・。
みなさんはいかがですか?
アルバム「Carol Of Harvest」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲目の「Put On Your Nightcap」
インストルメンタルのパートやヴァースのパートでの楽曲の展開にただただ圧倒されるだけでなく、他楽曲も同様なサウンド・メイキングで貫き通して欲しかったと思えるぐらいに、クオリティの良さを感じるからです。
2曲目は、4曲目の「Treary Eyes」
プログレ・フォークなのだから、アンサンブルのテクニカルさやメロウさに目を向けたがりがちですが、楽曲中間部で音数が少ない状況でのBeate Krauseの「la la」のスキャットは目の前で聴いているような特筆すべき感覚を憶えたからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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