プログレおすすめ:Rabih Abou-Khalil「Songs for Sad Women」(2007年レバノン)
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最終更新日:2015/12/29
2000年代, フォーク, レバノン Rabih Abou-Khalil
Rabih Abou-Khalil – 「Songs for Sad Women」
第75回目おすすめアルバムは、レバノンのミュージシャン:Rabih Abou-Khalilが1977年に発表した19thアルバム「Songs for Sad Women」をご紹介します。
レバノンのベイルート出身のウード奏者:Rabih Abou-Khalil(ラビ・ハブ・ハリル)によるリード・アルバムです。その演奏スタイルは即興能力の高さであり、全てインストルメンタルの楽曲中で他楽器を抑えソロで「弾き倒す」様はその楽器を知らずとも、演奏を面前で見ていなくとも、音源でも伝わるだけの緊張感があります。
1975年に起きた内戦を期にレバノンの地から離れ、西欧に拠点を移します。アラビア文化圏での活動で培った演奏感に、西欧のジャズが融合したイメージがあり、よくジャズの分野で紹介されることがあります。ただし、前述の緊張感やインプレゼーションなどを引き合いにだせば、ギターの先祖とも云われるウードによる演奏はプログレ・フォーク系の括りにも入るのではないかと思うんです。
室内音楽やカンタベリーからイメージするだろうジャズのエッセンスよりも、よりモヤケヤとした混沌らしさのエッセンスが強いと思われます。当アルバムは、そのウード奏者:Rabih Abou-Khalilに、これまでのアルバムでもクレジットされてきたデュデュク奏者:Gevorg Dabaghyan、ドラマーのJarrod Cagwinによるメンバーだけでなく、セルパン奏者:Michel Godard(ミッシェル・ゴダール)も加わり、よりいっそうインプロヴィゼーションが濃厚な演奏で楽曲を聴かせてくれます。
楽曲について
アルバムの中の楽曲の1曲「Para O Teu BumBum」を聴いてみましょう。
当アルバム「Songs for Sad Women」が発表された同年2007年3月28日、オーストリアのウィーンにて行われたライブ音源です。
↓↓↓↓↓↓↓
[「Para O Teu BumBum」]
見て聴いてみて、いかがですか?
オーボエのような音色のあるドゥドゥクとドラムのアンサンブルにウード奏者Rabih Abou-Khalilが絡み、当アルバムでメインとなるMichel Godardのセルパンのソロ奏法も聴けます。Michel Godardによるセルパンの演奏力も迫力がありますが、ギターよりもバンジョーのイメージに近く左手のせわしいフレージングのRabih Abou-Khalilや、4分前後のパーカッシブな演奏にも目と耳を奪われてしまいます。
「ウード」について
メインで利用されている「ウード」は、ウィキペディアによれば、中東から(アラビア、イラクなど)北アフリカのモロッコにかけてのアラブ音楽文化圏で利用されている楽器とのこと。その言葉の由来はアラビア語で「木」を意味する「アル・ウード」が語源のようで、アラブ音楽文化圏では「楽器の女王」とも呼称される代表的な楽器です。ギターや琵琶の近縁であり、より先祖に近い存在だが、フレットをもたないことが特徴で、用途により5つの弦と6つの弦があるそうです。
[収録曲]
1. Mourir Pour Ton Decollete
2. How Can We Dance if we Cannot Waltz
3. Best if you Dressed Less
4. The Sad Women of Qana
5. Para o Teu Bumbum
6. Le Train Bleu
7. A Chocolate Love Affair
レバノンの地における中東のアラブ音楽は、フランスとの繋がりがありジャズや西欧の音楽がブレンドし音楽形成されています。西欧の音楽との融合を図る姿勢にはプログレッシブさのエッセンスが伺えるんです。
個人的に、どの音色がどのフレーズでどんな演奏なのかまで判別は出来ないのですが、youtubeでRabih Abou-Khalilのウードと、Michel Godardのセルパンの各演奏を見比べ聴き比べすることで、その演奏力に圧倒されてしまいそうです。
ジャズの分野で紹介されることが多いアルバムかと思いますが、アラブ音楽文化圏でプログレ的なエッセンスが聴けるアルバムをお探しの方にもぜひおすすめです。
また、プログレにインプレゼーションを求め好む方におすすめのインストルメンタル主体のアルバムです。
アルバム「Songs for Sad Women」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲1曲目の「Mourir Pour Ton Decollete」
アルバム導入部としてだけでなく、特に4分以降6分30秒前後までの混沌としたインプレゼーションにプログレのエッセンスへ感じずにいられないんです。
2曲目は、5曲目の「Para o Teu Bumbum」
当アルバムの存在をはじめて知るきっかけで、youtubeで偶然に見つけた楽曲です。当アルバム中ではセルパンの奏法にウードが添えるよう最も起伏あるアンサンブルが聴けるので意識をして聴いてしまいます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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