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プログレおすすめ:Asia「Phoenix」(2008年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/30 2000年代, イギリス, メロディック・ハード , , , ,


Asia -「Phoenix」

第158回目おすすめアルバムは、イギリスのバンド:Asiaが2008年に発表した9thアルバム「Phoenix」をご紹介します。
Asia「Phoenix」
1982年に、アメリカのビルボードチャート1位を9週連続で獲得した1stアルバム「Asia(邦題:詠時感~時へのロマン~」と続く1983年の2ndアルバム「alpha」を制作した4人(Geoffrey Downes、Steve Howe、Carl Palmer、John Wetton)が、25年ぶりに集い制作したアルバムです。

2001年以降のGeoffrey DownesとJohn Payneによる第2期Asiaをリアルタイムで聴きつつ、比較しようにも比較しえない第1期Asiaの「奥行きのあるサウンドのパノラマ」のような楽曲を聴いては続きを聴いてみたいとの気持ちはたえず抱いていました。第1期も第2期も、Geoffrey Downesが残り、メンバー間の葛藤、分裂などもあり、紆余曲折を経て少しずつメンバーチェンジを重ねていた。John WettonがGeoffrey DownesとIconとして活動し始めてから、復活の期待は感じえたのではなかろうか。そして、たとえば、アメリカのロック・バンド:Eaglesは、解散後にメンバーの1人であるDon Henleyが「Eaglesの再結成は地獄が凍りつかない限りあり得ない(=Hell Freezes Over)」とインタビューで応えてたにも関わらず、復活を果たしてた事実があります。

当アルバム「Phoenix」では、1stアルバムや2ndアルバムよりも、ボーカルが入るヴァースでのリズムセクションのバランスが抑え気味な感じもしますが、Asiaの特徴である1ヴァース単位や1テーマ単位で様々なアプローチを盛り込み、同じアプローチは繰り返さないアンサンブルを感じさせてくれる1枚と思います。さすがに時を経てサウンドへのアプローチの変化もあります。

過去の名作アルバムを知りながら、25年振りとなるアルバムには、「プログレッシブ・ロックのエッセンスを3分半にコンパクトに纏めた楽曲」とはいかないまでも、当時は触れなかったプログレッシブ・ロック的な長尺のアプローチも含み、

奥行きのあるサウンドのパノラマとメロディアスでファンタジックさに回帰した1枚として、まさに「不死鳥(=Pheonix)」のように復活したアルバムと思いました。

楽曲について

冒頭曲1「Never Again」は、ギターのリフ一閃に空間処理されたシンバルを含むイントロ部のパートは、名曲「Heat Of The Moment」のイントロ部の「あの」感覚を彷彿とさせてくれます。ヴァースに入るや、ボーカルの定位置の問題なのか、ギターやキーボード、リズムセクションが抑え気味になってしまいますが、それでもなお、John Wettonの伸びやかなボーカリゼーション、2分50秒前後からのAsiaらしさ溢れるブリッジ、クロージング直前にリフレインされる「Never Again」の一節にSteve Howeの縦横無尽に弾くギター・ソロなど、Asia復活を高らかに掲げるには十分過ぎるオープニングにして、Asiaのファンにとっては嬉しい瞬間でもあるし、当楽曲に感じえるサウンドのパノラマ的な感覚に出逢ったはじめての方には、過去の名作を感じえて欲しいと思いました。

2「Nothing’s Forever」は、アカペラに、シンセによるブラス・サウンドが高らかにこだまするパートをオープニングに持ちますが、ヴァースで展開する唄メロは、2ndアルバムのA面のミドルテンポの楽曲や、Icon(Geoffrey DownesとJohn Wettonのプロジェクト)の楽曲を想起させるメロディアスな楽曲です。それでもなお、オープニングのパートでのCarl Palmerのドラムさばき、第1ヴァースと第2ヴァースで異なるギターのアプローチ、ハモンドオルガンの音色など、テクニカルさの比重を抑えらつつも、第1期Asiaを彷彿とさせるサウンド・メイキングが素晴らしい仕上がりと思います。

3「Heroine」は、第1期Asiaには見受けられなかった洗練され、メロディアスなスローテンポのバラード楽曲です。当アルバム以降にも増えていく当楽曲の感覚は、味わい深い2008年以降のAsiaのカタチなのかなと思いました。Steve howeによるスティール・ギターのソロもアクセントに、じっくりと唄メロを聴かせてくれます。

4「Sleeping Giant – No Way Back – Reprise」もまた、第1期Asiaには見受けらなかった、どちらかというと、現代的なプログレッシブ・ロックなアプローチで聴かせてくれる、アルバム中では間奏曲の印象すら受けます。「No Way Back」の冒頭部やフックで聴かれる名曲「After The War」(アルバム「Astra」収録)のサウンド・メイキングに、にんまりしたAsiaファンも多かったのではないかと思います。その感覚を抜きにしても、第1期Asiaを彷彿とさせるコーラスワーク、サウンド・コラージュのようなSteve Howeによるオーケストラ的に縦横無尽なギターのフレーズなど、自然と心躍らせられるに違いありません。

5「Alibis」や7「Shadow Of A Doubt」は、8ビートが心身良く、コーラスワークなど、突き抜けるファンタジックさのあるポップさが愉しめる楽曲です。特に前者5「Alibis」は、メンバー4人が合作した楽曲で、名曲「Don’t Cry」までとはいかないまでも、8ビートが心身良く、コーラスワークなど、突き抜けるファンタジックさのあるポップさが愉しめる楽曲です。第1期Asiaでもポップさのある楽曲「Hard On Me」にCarl Palmerが共作で加わっていたことも頷けるような、どこまでがCarl Palmerの作風なのかと思いだしたら止まらなくなります。

6「I Will Remember You」は、3「Heroine」同様に洗練されたスローバラードでありながらも、Carl Palmerのサビ部の力強くドラマチックさを生み出すタムさばき、3分30秒前後からのギター・ソロでのマーチ風のドラムなど、印象的に聴けます。

8「Parallel Worlds – Vortex – Deya」は、哀愁を帯びた唄メロのパート「Parallel Worlds」、マイナー調のテーマに変拍子で繰り広げられるパーカッシブさ溢れ、Carl Palmerの土壇場とも云えるドラムのソロ・パートも含む「Vortex」、最初の唄メロのパートをスパニッシュ風のギターが綴る「Deya」など、どこまでも憂いを帯びた世界観で聴かせるムードたっぷりなプログレッシブな楽曲構成は、第2期AsiaのGeoffrey Downesのクリエイティビティや、同国のハード・プログレ・バンド:Uriah Heepを彷彿とさせるサウンドスケープで魅せてくれます。

9「Wish I’d Known All Along」は、Steve Howe単独で作曲した楽曲であり、まるで全曲8「Parallel Worlds – Vortex – Deya」が当楽曲の序曲かのように、2分5秒前後から突如転調したヴァースがほんのりと救いでもあるかのように、第1ヴァースやサビ部で繰り広げられる終末さを感じさせるマイナー調の唄メロが心に切なく響き渡ります。エンディング直前の荒れぶるSteve Howeのギター・ソロも聴きどころです。

10「Orchard Of Mines」は、前曲9「Wish I’d Known All Along」の曲調をひきずるように、スローな展開が聴ける楽曲です。外部のライター(Jeffrey FaymanとDann Pursey)による楽曲であり、違和感なく収録されていることが現Asiaの音楽の幅を拡げていると感じました。

ブリティッシュ・ロックの起伏ある豊かなアンサンブルが愉しめる11「Over And Over」に続き、最終曲「An Extraordinary Life」は、サビ部の唄メロがどことなく2「Nothing’s Forever」をリプライズさせるかのように聴こえるのが印象的な楽曲です。最後に「Yes I Can Change My World」と唄われるポジティブな一節まで、「不死鳥」のように復活したAsiaとだぶらせながら、John Wettonの並々ならぬ決意を感じさせる力強い楽曲と感じました。

5「Alibis」と7「Shadow Of A Doubt」のファンタジックさあるポップなメロディアスな楽曲に耳を奪われがちになりつつも、6「I Will Remember You」以降、前曲から次曲へと繋がりをみせるかのようなアルバム後半部の楽曲たちが、個人的に1つの組曲のように思えてなりません。個人的な見解を抜きにしても、第1期Asiaを彷彿とさせるサウンド・メイキングやアンサンブルの妙を堪能出来ると同時に、現Asiaのカタチともいうべきスローテンポな楽曲や、第1期Asiaよりもプログレッシブ・ロック寄りのアプローチの長尺なスタジオ楽曲が聴ける素晴らしいアルバムと思います。

[収録曲]

1. Never Again
2. Nothing’s Forever
3. Heroine
4. Sleeping Giant – No Way Back – Reprise
5. Alibis
6. I Will Remember You
7. Shadow Of A Doubt
8. Parallel Worlds – Vortex – Deya
9. Wish I’d Known All Along
10. Orchard Of Mines
11. Over And Over
12. An Extraordinary Life

25年の月日をかけた「復活」に老化や退化としても表現されるケース、もちろん、当アルバムを聴き感じる方もいらっしゃるかもしれません。楽曲によっては、Steve HoweとCarl Palmerによるプログレッシブなエッセンスと第2期Asiaとして持続させたGeoffrey Downesの音楽性に、John Wettonがメロディアスに唄うことで、Asiaらしさを更に飛躍させてもくれていると思います。

メロディアスな唄メロという観点からは、日英混合バンド:ForeignerやアメリカのStyx、REO Speedwagonに代表される産業ロックなどを聴いてきた方や、メロディ重視の楽曲を好み、はじめてAsiaに触れる方にもおすすめです。Asiaの持つコンパクトさ、キャッチーさ、ポップさをキーワードにぜひ聴いて欲しい1枚です。

2008年に復活したAsiaは、2015年現在もなお、Steve HoweがYesの活動に専念するために脱退したことがあるものの、着実にアルバムを発表し続けています。当アルバムを聴いて現Asiaを好きになった方は、以降のアルバム(「Omega」、「xxx」、「gravitas」)にも耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

アルバム「Phoenix」のおすすめ曲

1曲目は、8曲目の「Parallel Worlds – Vortex – Deya」
Steve HoweとCarl Palmerの2人の土壇場とも云えるテクニカルさと、哀愁を帯びた唄メロが聴ける楽曲は、Asiaの楽曲として捉えるだけでなく、拡くプログレッシブ・ロックを聴く方に触れて欲しいと感じさせてくれるクリエイティブに溢れています。

2曲目は、冒頭曲の「Never Again」
それまでの4人の音楽遍歴を十分に音楽で辿らず、リアルタイムで聴くことはなく、文字による予備知識のみで出逢った1stアルバムや2ndアルバムの音に出逢った衝撃に懐かしさを感じさせてくれたからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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