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プログレおすすめ:Savina Yannatou「Is King Alexander Alive?」(1983年ギリシャ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 1980年代, ギリシャ, コンテンポラリー, 女性ボーカル


Savina Yannatou「Is King Alexander Alive?」

第57回目おすすめアルバムは、ギリシャの女性歌手:Savina Yannatouが1983年に発表した2ndアルバム「Is King Alexander Alive?」をご紹介します。
Savina Yannatou「Is King Alexander Alive?」
プログレッシブ・ロック業界の純粋なミュージシャン、演奏スタイルというわけではありませんが、発売当時からプログレッシブ・ロック観を強く感じるアルバムとして知られているようです。Savina Yannatouもクラシックやジャズに音楽の幅を拡げながらも、イタリア・プログレの地に近いバロック調を意識したり、地中海やエーゲ海のたおやかさを感じる楽曲をアルバムを聴くことで感じるんです。

アレキサンダー大王は生きている?

既にここまで読まれてた方はお気づきかと思いますが、英語表記で記載しています。
アルバムタイトルの英語表記「Is King Alexander Alive?」がとても心に留まりますよね。Savina Yannatouはギリシャ語では「ΣΑΒΙΝΑ ΓΙΑΝΝΑΤΟΥ」、アルバムタイトルは「ΣΕΙ Ο ΒΟΣΙΛΙΑΣ ΑΛΕΞΑΝΔΡΟΣ」だそうです。アルバムを一聴すると、アルバムタイトルを更に和訳した「アレキサンダー大王は生きている?」のような感覚ではなく、前述のようにバロック調だったり、地中海やエーゲ海をのぞむギリシャの地を感ずる生ギターやハープの音に身を委ねてしまいそうになるんです。実は、アルバムにはもう一つタイトルがあって、そのタイトルは「Dreams Of The Mermaid」、和訳すると「人魚の夢」でしょうか。Savina Yannatouの歌声やアルバムのサウンドを聴けば、この「人魚の夢」がしっくりくるかもしれません。

Savina Yannatouは透明感のあるソプラノによる優美さからウィスパーヴォイスによる繊細な静謐さまでボーカリゼーションが豊かと思いました。
当アルバムでは、そのボーカリゼーションにただ身を委ねてしまうのもいいかもしれませんが、クラシック、ジャズ、ギリシャの地特有の民族色?などのエッセンスが交じり合った、まごうことなくプログレッシブさ溢れた音楽が聴けます。

楽曲について

冒頭曲1「A Morn Spent in A Foreign City」の管弦楽器と思わしきフレーズに導かれ、Savina Yannatouによる歌声が聴けて、そのまま飛翔するような唄メロが聴けるかと思えば、一種独特な唄メロが聴けます。歪みのある演奏感は抑え、瞬間瞬間には透明感のある「間」が意識されたような演奏感でしょうか。2分前後からドラムやエレピの音色が流れることで、ロックっぽさのある楽曲と思った瞬間、プログレッシブ・ロック系のインストルメンタル感が漂い、楽曲はクロージングします。
通常のプログレッシブ・ロックで感じるファンタジックさ、シンフォニックさ、抒情さとは異なり、神秘性ともいう言葉が合うかもしれません。比較するべきではないけれど、イギリスのKate BushやアイルランドのEnyaといった幽玄さや神秘さを伴うアーティストにも通じるようでいて、意識し聴くことで唯一無比な音楽を感じえて欲しいと思うんです。

アルバムは、その他、2「Yellow-Blue」や3「Distance」などに代表されるように、イギリスのトラッドやプログレ・フォーク的な感触を感じながらも、Savina Yannatouの歌声やコーラス感覚、そして、民族音楽的なアンサンブルで一筋縄ではいかない感覚を憶えます。
優美な唄メロをもつ6「Suppose That You…」や4「Optical Illusion」では、各楽器の奏でるフレーズがうねる海のシークエンスさを感じさせてくれます。有機的に創造された感覚と異なり、今、ここで聴いている空間とは異なる世界へ誘われるかのような感覚さえも感じるんです。

アルバム中、楽器のアンサンブルにプログレッシブ・ロックを強く感じるのが10「With Bill Evans On The Record Player」です。透明な海の底に深く沈み込まれてしまいそうな感覚に、インスピレーションが充満した各楽器のフレーズと、独特のコーラスに心が揺さぶられてしまいます。

総じて、アルバムは冒頭曲1「A Morn Spent in A Foreign City」から最終曲13「Note」まで1曲1曲を聴くことで大きな起伏のある構成ではなく、1曲1曲のSavina Yannatouの歌声に心が吸い込まれていきそうな度合いが大きくなっていく感覚ともいうべきでしょうか。時間に余裕をもち、じっくりと聴きたいアルバムの1枚ですね。何度も何度もアルバムを聴くことで、ギリシャの地へ足を運んでみたいという衝動さえ感じさせてくれます。

[収録曲]

1. A Morn Spent in A Foreign City
2. Yellow-Blue
3. Distance
4. Optical Illusion
5. The End
6. Suppose That You…
7. Is King Alexander Alive?
8. Adolescence
9. Slow take
10. With Bill Evans On The Record Player
11. Samothrace
12. Scetches
13. Note

現在、国内盤の発売を確認することが出来ず、Yahoo!オークションや公式サイトで2、3曲のサンプルが聴ける程度ですが、輸入盤を取り扱うインターネットのECサイトを探せば見つかるはずです。現在もなお現役で歌声を聴かせるSavina_Yannatouは他にも数多くのアルバムを発表していますが、自分が入手出来たのはこのアルバムのみです。

前述で記載したイギリスのKate BushやアイルランドのEnyaといった幽玄さや神秘さという感覚でも、癒しを求める音楽でも構いません。日々の日常生活から離れた清涼さを感じて頂けたのなら・・・。
たとえば、イギリスのプログレフォークで唄うRenaissanceのように透明感のある女性のボーカルなどを好きな方にもおすすめです。

アルバム「Is King Alexander Alive?」のおすすめ曲

1曲目は、6曲目「Suppose That You…」
ほのかにポップさを感じながらも、クロージング直前の歌声と音の揺らぎを聴いてしまうと心を捉えて離れません。

2曲目は、冒頭曲「A Morn Spent in A Foreign City」
冒頭のテーマを唄うSavina Yannatouによる歌声も素敵ですが、その歌声に沿うイントロの楽器やエンディングでのソロなどに、優美なプログレッシブさを強く感じずにいられません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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