プログレおすすめ:Willowglass「The Dream Harbour」(2013年イギリス)
公開日:
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最終更新日:2015/12/02
2010年‐2013年, イギリス, ヴァイオリン, シンフォニック, フルート, メロトロン Willowglass
Willowglass -「The Dream Harbour」
第53回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレシック・ロックにアプローチをするプロジェクト:Willowglassが2013年に発表した3rdアルバム「The Dream Harbour」をご紹介します。
どことなくカンタベリー系のプログレッシブ・ロックバンド:Khanが1972年に発表した3rdアルバム「Space Shanty」の世界観に近しいアルバムジャケットで、同様に「ジャケ買い」したくなる衝動にかられます。
▼Khanが1972年に発表した3rdアルバム「Space Shanty」のジャケットはこちら
Khanはブルーズを基調としたハードロック的なアンサンブルも聴かせるため、Willowglassとは異なるサウンド感やサウンドスケープを与えるため、本当にアルバムジャケットに描かれた世界観が近しいだけなんです。
Willowglassは、エレキ、アコースティック、クラシック、12弦のギター群、キーボード、ベースなどを駆使するイギリスのマルチミュージシャンのAndrew Marshallによるプロジェクトで、2005年に1stアルバム「Willowglass」でデビューしています。当アルバム「The Dream Harbour」は、2008年発表の2ndアルバム「Book Of Hours」に続くアルバムで、1stアルバムや2ndアルバムでドラムを担当していたDave Brightmanに代わり、ドラムにHans Jorg Schmitz、ヴァイオリンとフルートにSteve Unruhが参加し、3人編成で制作されています。
イギリスの5大プログレバンドのうち、GenesisとYesや、CAMELの初期クラシカルさや抒情さが聴けた1stアルバムや2ndアルバムに対し、3人編成になったことで、
バンドらしさもあるシンフォニック系のサウンドを聴かせてくれます。
楽曲について
冒頭曲1「A House Of Cards Pt.1」は約21分にも及ぶ楽曲です。2「A Short Intermission」を挟み、3「A House Of Cards Pt.2」までの一連の流れは、「A House Of Cards」を2つのパートに分けた組曲と捉える楽曲で、サウンドを一聴すれば、従来よりもネオ・プログレ系のエッセンスやモダンなサウンド・メイキングでキーボードが奏でられると感じられます。Steve Unruhによるヴァイオリンやフルートのアンサンブルも交え、快活さや抒情さには、Genesisの元メンバーであるAnthony PhillipsやSteve Hackettのソロアルバムを、リズミカルなオルガンの音色による鍵盤のシークエンスにはYesをそれぞれ想起させてくれます。また、アンサンブルには、メロトロンの音色も聴かれますが、あくまでアクセントとして利用しているかのような印象があります。特筆するのは、リズムセクションとしてのドラムよりも、ヴァイオリン、フルート、鍵盤がリズミカルさを表現し、豊富なテーマをめくるめく素敵に響かせてくれますね。
5「The Dream Harbour」は、12弦ギターによるアルペジオのイントロがAnthony PhillipsやSteve Hackettのプレイを彷彿とさせ、ファンタジックに聴かせてくれる楽曲です。12弦ギターをアンサンブルに、メインとなるテーマをキーボードが奏でながら、フルート、ヴァイオリンがカウンターメロディで絡み合う様は、楽曲タイトルのように波打ち際をサウンドスケープさせてくれます。4分前後からは少々陰鬱なフレーズが聴かれ、アンサンブルにドラムも加わります。前曲と同様に、ヴァイオリンがリズミカルなフレーズを聴かせ、フルートがテーマを奏でるパートも聴かれます。それぞれの楽器がアンサンブルでの役割を変えながら相互に旋律を絡み合う構成力が素晴らしいですね。
フルートをメインにした穏やかな小曲6「Helleborin」を挟み、最終曲7「The Face Of Eurydice」は、King Crimsonの名曲「Epitaph」(1stアルバム「In The Court of Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」収録)を彷彿とさせる陰鬱さに抒情性さ溢れるメロトロンに、ギターとドラムがメインの冒頭部が印象的な楽曲です。ただ、その冒頭部から1分30秒を経過し、キーボードとマーチ風のドラムで躍動的にもダイナミックに響き、曲調をがらっと変えてしまいます。3分前後からメロトロンが再度アンサンブルに入る時には、冒頭部のメロトロンの旋律で楽曲に感じられた印象とはまた異なる物憂げな世界観へと移行し、4分前後には、これまたKing Crimsonの名曲「Moonchild」(1stアルバム「In The Court of Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」収録)のジャズ系のインプロヴィゼーションを想起させるパートも聴けます。引き摺るようなドラムの演奏がリードしながら、アンサンブルからは物憂げなサウンドを醸し出しながら、クロージングへ向けて2分かけて徐々にデクレッシェンドしフェードアウトします。
アルバム全篇、1970年代のクラシカルなプログレッシブ・ロックの古き良きサウンド・メイキングを感じさせつつも、あくまで2013年としてのモダンなアンサンブルで聴かせてくれます。1stアルバムや2ndアルバムのように、回顧的なアンサンブルになっていないところが当アルバムの特徴ではないでしょうか。
[収録曲]
1. A House Of Cards Pt.1
2. A Short Intermission
3. A House Of Cards Pt.2
4. Interlude No. 2
5. The Dream Harbour
6. HelleborineAnthony PhillipsやSteve Hackett
7. The Face Of Eurydice
楽曲によって時にはアクセントで、時にはメインでアンサンブルに加わるメロトロンの音色が好きで、フルートとヴァイオリンがアンサンブルをリードする楽曲が好きな方にはおすすめです。また、12弦ギターの奏でるフレーズに代表される繊細さには、Anthony PhillipsやSteve Hackettを好きな方にもおすすめです。
当アルバムを気に入った方は、ぜひ1stアルバム「Willowglass」と2ndアルバム「Book Of Hours」も聴いてみて下さい。
アルバム「The Dream Harbour」のおすすめ曲
1曲目は、5曲目「The Dream Harbour」
12弦ギター、フルート、ヴァイオリン、キーボードがテーマを入れ替わり奏でる印象的な構成力や、楽曲全体に響き渡るサウンドが醸し出すファンタジックさが素敵です。
2曲目は、ラストの7曲目「The Face Of Eurydice」
従来のアルバムにもなく、当アルバムでも異質な楽曲です。アンサンブルには、最もメロトロンが多用され、King Crimson的な世界観を見せながらも、モダンなププログレッシブ・ロックをアンサンブル化したかのような印象があります。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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