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プログレおすすめ:Barock Project「Detachment」(2017年イタリア)

公開日: : 最終更新日:2020/01/04 2017年, イタリア, イタリアン・プログレ, フルート


Barock Project -「Detachment」

第299回目おすすめアルバムは、イタリアのシンフォニックなプログレッシブバンド:Barock Projectが2017年3月20日に発表した5thアルバム「Detachment」をご紹介します。

Barock Project「Detachment」

See You Somewhere In Sometime..

2017年6月に、スウェーデンを代表するプログレッシブ・ロックバンド:Moon Safariとともにカップリングで来日し、待望の来日公演が実現しました。

2017年6月22日Barock Project来日ライブチケット

I Will Never Forget That Day.

Thank You For Coming To Japan.

And Sincerely Hope, And See You Somewhere In Sometime…

・・・個人的に、2017年6月22日と云う日を、曜日を含め忘れることはないと思います。本当に日本に来てくれてありがとう。そして、いつか出逢えることを願ってやまない・・・。

Barock Projectは、古き良き1970年代のプログレッシブ・ロックのエッセンス、特にクラシカルなバロック音楽に、ジャズ系のハーモニーが加わるアンサンブルに、ポップさのあるメロディラインが特徴です。バンドの創設者であるLuca Zabbini(ピアニスト兼コンポーザー)は、プログレ5大バンドのうちの1つ:Emerson Lale & Palmerのキーボード奏者:Keith Emersonの音楽性から影響を受け、クラシカルなロックやジャズまでの多岐にわたる音楽のエッセンスを吸収し反映さえています。

2012年に3rdアルバム「Coffee In Neukolln」、2015年に4thアルバム「Skyline」と良作を発表し、2年振りとなる当アルバム「Detachment」は、Luca Zabbini(リード・ボーカル、キーボード、ギター)と、前作からのメンバーであるMarco Mazzuoccolo(ギター)、Francesco Caliendo(ベース)、Eric Ombelli(ドラム)らは変わらず制作されています。

また、アルバムのゲストとして、Alex MariやLudovica Zanasiらがボーカルとしてクレジットする中で、近年では2016年にイギリスの著名なプログレッシブ・バンド:Camelの一員として来日を果たした盲目の英国人マルチ・ミュージシャン:Peter Jones(Tiger Moth Tales、Camel、Red Bazar、Colin Tench project)がアルバム数曲に作詞で参加するだけでなく、6「Broken」と8「Alone」のリード・ボーカルを担当してます!

月並みな言葉では言い尽くせない、古き良きプログレへのリスペクトを忘れることなく、モダンなプログレへ継承させて過去作以上に様々な表現アプローチの楽曲を魅せつつも、バンドが持つエレガントさとシリアルさを共存させて均整の取れた充実のアルバムと思います。

楽曲について

雨が降り注ぎ車が行き交うストリートを想起させるSEとともに、心弾ませるプログラミングによる1「Driving Rain」に続く2「Promises」は、アルバム冒頭部を飾るに相応しい躍動的な楽曲に仕上がってます。

個人的には、アメリカのプログレ・ハード系のバンド:Bostonが1986年に発表した楽曲「Amanda」を想起してしまいました。Barock Projectの楽曲を聴くと、開放的で躍動さあるアプローチに、いつもながらアメリカのプログレ・ハード系を彷彿とさせて、爽快な気持ちにさせてくれます。2分30秒前後からのプログレッシブ・メタル系に迫る重厚なアンサンブルなど、ここ数作のアルバムの冒頭部を飾る「Back to You」(前々作「Coffee in Neukolln」)や「Gold」(前作「Skyline」冒頭曲)とも異なるアプローチで、一気に、心を手繰り寄せられてしまいますね。

3「Happy to See You」では、流麗でリリカルなピアノのフレーズに、アコースティカルな静と、オーケストレーションを巧みに盛り込んだ動のアンサンブルが際立ち、メロウで刹那い唄メロのメロディラインが際立ちます。ナイーブなギター・ソロも含め、2「Promises」とは異なるBarock Projectのダイナミックにもロマンチックに聴かせる面を堪能出来ます。

4「One Day」では、3「Happy to See You」よりも更に前々作「Coffee in Neukolln」で濃厚に感じさせてくれた室内音楽系の音色によるサウンド・メイキング、フルートの旋律もアクセントに、アコースティカルなアンサンブルの前半部は枯れた味わいの展開に、ロマンチックさを感じさせてくれます。そして、3分40秒前後からは、アコースティカルなアンサンブルがタイトに迫ってきます。ここぞと云う時に盛り込まれる4分30秒前後からのピアノのフレーズなど、楽曲の展開力にただただ脱帽です。月並みな言葉でしか表現出来ない自分の語彙力がみじめになるぐらい、素敵な仕上がりと思います。

5「Secret Therapy」は、2「Promises」同様に開放的なサビ部の唄メロのメロディラインが印象的な楽曲ですが、楽曲のオープニングからエンディングへ向けて、ミドルテンポでスムーズに突き抜けてく感は、特に、3分10秒からのアコースティックギターの・ギターの高速ストロークがメインのアンサンブルによる2番目のサビ部、3分50秒からのアコースティック・ギターのアルペジオがメインにコーラスが絡み合いメロウになるミドル部、4分40秒前後からのヴァース部の唄メロの後半部分へと繋がっていく展開など、各パートが違和感なく繋がる構成力が素晴らしいです。

6「Broken」は、ピアノをメインとしたPeter Jonesがリードボーカルを取る4「One Day」に近しい枯れた味わいのある冒頭部から、1分55秒前後からはアコースティック・ギターのストロークとオーケストレーションに導かれ躍動さ溢れるパートへ展開していきます。随所に、室内音楽系の音色やオルガンのリフ、ボーカルの唄メロのメロディラインにシンコペーションするピアノとベースのフレーズなど、Barock Projectらしさ溢れるアンサンブルとサウンド・メイキングに聴き心地が充足しそうなところで、さらに、6分30秒前後の流麗なピアノと唄メロのメロディラインに次ぎ、女性ボーカル:Ludovica Zanasiがデュエットで加わると云う贅沢過ぎで、随所に変拍子なパートを盛り込んだシンフォニック系な展開です。

7「Old Ghosts」は、アトモスフェリックなサウンド・メイキングとピアノのアンニュイな音階をバックに、語り口調によるヴァースではじまり、50秒前後からの哀愁溢れる唄メロとともに、フランメンコ風のパートから、アコースティカルさからエレクトリック・ギターが加わり、2分20秒前後からはオーケストレーションとともに開放的なサビ部へと展開します。5「Secret Therapy」や6「Broken」以上に、多種多様な音楽ジャンルのリズムパターンが連なるシンフォニック系な展開が堪能出来ます。

8「Alone」は、6「Broken」に続きピアノをメインとしたPeter Jonesがリードボーカルをとる楽曲です。唄メロのメロディラインは、ピアノの打鍵されるアタック感の強さも印象的に、1分40秒前後からアンサンブルに加わる弦楽奏の旋律も含め、物悲しくなってしまいますね。2分45秒前後からのピアノの高音階を活かした旋律でクロージングを迎えるクリエイティビティは、この物悲しい曲調に、ふと唯一の救いに思えてなりません。

9「Rescue Me」は、変拍子を多用しつつタイトでロック感あるインストルメンタルとヴァースのアンサンブルと、アンニュイな唄メロのメロディラインが印象的な楽曲です。そして3分20秒前後からのピアノの旋律による数秒のパートは場面を一変させるほどにエレガントさを拡がるため、楽曲全体のタイトなロック感がより引き締まって聴かせてくれます。

アコースティック・ギターの流麗なアルペジオで幕を上げる10「Twenty Years」は、そのまま最初のヴァースを彩り、サビ部の伸びやかなボーカリゼーションが印象的です。その1番目のサビ部と2番目のサビ部でオーケストレーションは異なるフレーズで応えるアクテビティはより唄メロに素朴さや普遍性を感じ素晴らしいと感じてるところで、2分30秒前後からのプログラミングされたリズムをバックにヴァースのパートを挟み、ハードロック調に迫るアンサンブルへ移行します。前曲までの他楽曲でもありうる静から動へアグレッシブな展開が愉しめるシンフォニック系のアンサンブルが堪能出来ます。

11「Waiting」は、プログラミングされたリズムからアンニュイなヴァースへの展開は、ヴァースのボーカリゼーションも含め、各楽器の音色、表現するニュアンスのストレートさなど、2ndアルバム「Rebus」に収録された楽曲の路線を懐かしく聴き入ってしまいました。

マーチ風のリズムで幕を上げる12「A New Tomorrow」は、2分55秒前後までのピアノやアコースティック・ギターをメインとしたアンサンブルと大らかな唄メロのメロディラインが印象的に、4分10秒前後からアコースティック・ギターのストロークから、スティール・ギターやエレクトリック・ギターのリフも含め、当アルバムで最も地中海やエーゲ海など、イタリアを連想させてくれるので、Barock Projectがイタリアの
バンドであることを再認識させてくれます。ただ、ヴァースでの複雑な変拍子、サビ部でのダイナミックな展開など、アメリカのプログレ・ハード系を想起させるアンサンブルも聴けて、Barock Projecgtの多種多様な音楽ジャンルを吸収した懐の深さを感じてしまいます。

13「Spies」は、冒頭部から2分10秒までのイタリアの地特有か優雅でエキゾチックなリズムに変拍子を多用し、相対する哀愁溢れる唄メロのメロディラインが印象的なパート、3分20秒までのタイトに変拍子を盛り込み畳み掛けるパート、3分20秒前後からの風変わりにも、イギリスのプログレッシブ・バンド:Gentle Giantを想起させるジャージーでテクニカルなパート、3分55秒前後のハードロック調のパッセージがあるヴァース部、4分35秒前後からの当アルバムの1つのキーとなっているプログラミングされたリズムに、フルート、ピアノ、ギターが絡み合うインストルメンタルと唄メロのパート、5分45秒前後から哀愁さ溢れるオーケストレーションの旋律とピアノ旋律、その旋律に追随ずる男性の「ルルルル」のコーラス、そして、下降するメロディラインに、いよいよ終幕を迎えようとピアノが途絶えます。一呼吸を置き、6分15秒前後に再度、哀愁さ溢れるオーケストレーションとピアノの旋律がリフレインし、楽曲はクロージングします。

アルバム全篇、従来のドラマチックさとロマンチシズムに溢れた楽曲を収録しつつも、これまでになく多種多様な音楽ジャンルやリズムのバリエーションを踏まえたシンフォニック系の楽曲がアルバム中盤から後半にかけて並び、一瞬、他のバンドかとスパイスを効かせた錯覚を感じてしまう可能性もありますが、Barock Projectらしさ触れるエレガントさとシリアルさに、当アルバムで随所に魅せるプログラミングされたリズムで統制があるため、アグレッシブなバンドの姿勢が現れた高いクリエイティビティを感ずに入られません。そう、前作アルバムからほぼメンバーを変えることなく、バンドが充実した状態であることを物語る傑作と思います。

[収録曲]

1. Driving Rain
2. Promises
3. Happy to See You
4. One Day
5. Secret Therapy
6. Broken
7. Old Ghosts
8. Alone
9. Rescue Me
10. Twenty Years
11. Waiting
12. A New Tomorrow
13. Spies

オーケストレーションやバロック調のクラシカルな演奏、ピアノのバッキング、ストリングセクション、3rdアルバム「Coffee In Neukolln」や4thアルバム「Skyline」と同様に、ダイナミックな演奏のシンフォニック系が好きな方、もちろん、New Troll、GENESIS、Emerson Lake & Palmerや、もしかすると、アメリカのハードプログレ系のバンド(Kansas、Bostonなど)が好きな方にもおすすめです。

これまでになく多種多様な音楽ジャンルやリズムのバリエーションを感じるあたりは、2ndアルバム「Rebus」でのバンドのアグレッシブな冒険心も感じずにいられませんので、イタリアでいえばBanco del Mutuo Soccorso、イギリスでいえばGentle Giantなどが好きな方にもおすすめです。

アルバム「Detachment」のおすすめ曲

1曲目は、3曲目の「Happy to See You」
Barock Projectの過去アルバムの楽曲を聴けば、その音楽性の特徴がいくつか思い浮かべてしまいます。2「Promise」で感じえるアップテンポやミドルテンポから爽快なサビ部で魅了する楽曲と同時に、当楽曲もまた、Barock Projectらしさが溢れた楽曲と思います。この楽曲をきっかけに、過去アルバムへ耳を傾けて欲しいと感じ、まずはおすすめします。

2曲目は、6曲目の「Broken」
多種多様な音楽ジャンルをパートで挟んでいくシンフォニック系の展開の楽曲はアルバム中盤から後半にかけてありますが、当楽曲での女性ボーカルのデュエットのパートを楽曲後半に配置する構成はそれ以上に予測つきませんでした。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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