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プログレおすすめ:YES「Yesshows」(1980年イギリス)


YES -「Yesshows」

第281回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESが1980年に発表したライブ・アルバム「Yesshows」をご紹介します。
YES「Yesshows」
YESは、1980年11月に当ライブ・アルバム「Yesshows」を発売していますが、遡ること3か月前の8月に、スタジオ・アルバム「Drama」を発表しています。このアルバム「Drama」制作前には、Jon AndersonとRick Wakemanがバンドから脱退しているため、おそらくChris Squireを中心に監修し発売されたと云われています。

正規のライブアルバムとしては、1973年に発表されたライブ・アルバム「Yessongs(イエスソングス)」以来、2作目にあたります。ライブ・アルバム「Yessongs(イエスソングス)」が1970年代YES黄金期の3枚のアルバム(「The Yes Album」、「Fragile(邦題:こわれもの)」、「Close To The Edge(邦題:危機)」)から選曲されていました。

その「Yessongs(イエスソングス)」の続編といえるのか、YESファンにとっては嬉しいことなのか、ライブ音源は1976年から1978年にかけてのライブ・ツアーから選曲されており、「Yesshows(イエスショウズ)」は、ライブのオープニングに利用された「火の鳥」以外に「Yessongs(イエスソングス)」と重複する楽曲、および、収録されたスタジオ・アルバムがありません。そして、この時期(1976年から1978年にかけて)と云えば、バンドに参加していたPatrick Moraz(キーボード、シンセサイザー)の演奏が聴けるところも嬉しいところですね。

あらためて整理すると・・・

Jon Anderson(ボーカル)、Chris Squire(ベース)、Alan White(ドラム)、Steve Howe(ギター)の4人に、楽曲「The Gates Of Delirium(邦題:錯乱の扉)」と楽曲「Ritual (Nous Sommes Du Soleil)(邦題:儀式)」の2曲では、Patrick Moraz(キーボード)が、その他楽曲では、Rick Wakeman(キーボード)がステージをともにしたライブ音源が収録されているわけです。

ライブ音源の編集と云う点で、2曲目「Time And A Word 」がから3曲目「Going For The One」の繋ぎ目が唐突しすぎるくらいはあるものの、「Yessongs(イエスソングス)」でもそうでしたが、スタジオ・アルバムでの緻密さ、テクニックさ、スキルフルさが発揮されていることと、ライブならではのドライブ感とラフさが共存している点が素晴らしいです。

楽曲について

オープニングは、イーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲した「火の鳥」の約80秒前後の演奏に、シンセサイザーのピッチペンドを効かせた旋律を織り交ぜ、ハモンド・オルガンの音色で冒頭曲1「Parallels」へ繋げています。Chris Squireのリードベースとも取れるプレイに、Alan WhiteとともにタイトなリズムセクションとSteve Howeらしさ溢れる水を得た魚が如くオブリガード気味のギター・プレイが聴けます。そして、クロージング直前のSteve Howeのギター・ソロも素晴らしいのですが、そのギター・ソロ以上に、4分50秒前後から5分30秒前後までのRick Wakemanのキーボード・ソロと、Chris Squireのベース・プレイは、当音源でも圧巻ですね。

「火の鳥」から「Parallels」へ移行するタイミングとクロージングでの歓声に、音源を聴いている自分のテンションも上がる。

2「Time And a Word」は、楽曲本来の良さを活かすかのように、聴き心地良い仕上がりです。Chris Squireのベースラインは、1「Parallels」と比べても、ライブならではのドライブ感は抑えられ、オブリガード気味なプレイの印象です。Jon Andersonのアコースティック・ギターのストロークに、スタジオ音源では参加していないRick Wakemanによるエレクトリック・ピアノの旋律が活かされた優しげな曲調です。

3「Going For The One」は、Chris Squireのトレブルを効かせたベースラインがあってこそで、オープニングからSteve Howeのペダルスティールを効かせたロッキングなギター・プレイが映える楽曲です。そのギター・プレイは、スタジオ・アルバムな忠実さと、ライブならではのフリーキーなプレイさもあり、たまらないですね。

4「The Gates Of Delirium」は、アルバム「Relayer」のみでバンドを離れてしまうPatrick Morazのキーボード・プレイが、ライブ音源としても正規版で聴ける数少ないものであるため、聴き手にも感慨深いのではないでしょうか。個人的にキーボード奏者としてのRick Wakemanのファンなので、Rick Wakemanのプレイが聴けるのが嬉しいのですが、当ライブアルバムでも尺の長さでもハイライトと云える出来栄えです。そのPatrick Morazのキーボード・プレイに力点を置いて耳を傾けようとも、それにひけを取らないぐらいに、Steve Howeの切迫感に満ちささくれだったギター・プレイも凄まじいの一言です。徐々にヒートアップし、8分30秒前後からのキーボード、ギター、ベース、ドラムの4人一体感のあるアンサンブルは、スタジオ音源で楽曲の骨子は分かっているとしても、ただただ聴き入ってしまいますね。そしてそして、11分45秒前後から12分50秒前後までのアンサンブルには、もうピンと張った糸がプチっと切れてしまう寸前をサウンドスケープをしてしまうぐらいに危うさに満ちています。かえって、Patrick Morazのコスミックさ溢れるサウンド・メイキングとJon Andersonのボーカリゼーションをメインとした後半部「Soon」のパートでは、切迫感を過ぎた安らぎよりも、ほんの束の間の仮初な安らぎを求めてしまう「危うさ」を感じてしまいます。

5「Don’t Kill The Whale」は、やはりギターのささくれだった旋律がライブならではの楽曲ですが、原曲のもつキーボードのおぼろげなミスティックさが薄れた印象です。当楽曲終了後に、ジャムセッション風のアンサンブルが展開し、Jon Andersonのアドリブかかったボーカリゼーションが聴けます。「この」アンサンブルが、次曲6「Ritual」にうまく繋がりを魅せるクリエティビティだと、次曲を聴き終えると思うのです。

6「Ritual」は、スタジオ音源と同様に、YESならではのファンタジックさからハードなアンサンブルのパートへと徐々に盛り上がりを魅せ、パーカッシブなパートを挟み、牧歌的なパートから、たゆまないメロトロンをアンサンブルにSteve Howeのギター・ソロが繰り広げられクロージングを迎える起承転結な構成が素晴らしい仕上がりの楽曲です。

また、スタジオ音源よりも、ハードなアンサンブルのパートと、パーカッシブなパートは尺が拡張されているため、より聴き応えのある楽曲中盤を堪能出来ます。特に、18分前後からのパーカッシブさとスピリッチュアルな経典を唱えているかのようなサイケデリックさもあるパートは、スタジオ音源での無機質さが、ライブとしての本質を捉え、まさに地球のどこかで「儀式」しているかのようなサウンドスケープを感じさせてくれます。と同時に、当パートを聴くたびに、Vangelisが1972年に発表した名盤「Aphrodite’s Child」で感じえる世界観を想起してしまいます。

なお、当時のレコードや初CD化の際に、2枚組であったため、2分割されていましたが、以降、1つの楽曲に編集されてます。

最終曲7「Wonderous Stories」は、当アルバムに素敵な余韻を残すクロージング・ナンバーの趣きです。原曲の持つファンタジックさ、その良さをあらためて再認識させてくれもします。

アルバム全篇、シングル楽曲の5「「Don’t Kill The Whale」と7「Wonderous Stories」の要所をおさえつつ、Patrick MorazとRick Wakemanがそれぞれのキーボード・プレイをする楽曲を交え、1970年代中盤から後半期のYESのライブを堪能出来ます。

[収録曲]

1. Parallels(邦題:パラレルは宝)
2. Time And A Word(邦題:時間と言葉)
3. Going For The One(邦題:究極)
4. The Gates Of Delirium(邦題:錯乱の扉)
5. Don’t Kill The Whale(邦題:クジラに愛を)
6. Ritual (Nous Sommes Du Soleil)(邦題:儀式)
7. Wonderous Stories(邦題:不思議なお話を)

ライブ・アルバムであれ、「Yessongs」が1970年代YES黄金期の3枚のアルバム(「The Yes Album」、「Fragile(邦題:こわれもの)」、「Close To The Edge(邦題:危機)」)からほぼ万遍なく、かつ代表曲を抑えていることで、YESをはじめて聴く音楽ファンにとっては「YESをはじめて知る入門編」にも適したアルバムと思っています。

いっぽうで、当「Yesshows」は、「Yessongs」と選曲は被らないものの、当時のレコード2枚組のボリュームに、「Yessongs」のレコード3枚組のボリュームと比べて物足りなさを感じてしまうかもしれません。また、ライブ・アルバムの名盤とも認知はされていません。ただ、それを差し引いても、Patrick MorazとRick Wakemanのそれぞれのキーボード・プレイが聴ける正規のライブ・アルバムとして、おすすめしたいです。

このライブアルバム「Yesshows」の各収録曲のスタジオアルバムは下記のとおりです。

2ndアルバム「Time And A Word(邦題:時間と言葉)」の収録曲
2. Time And A Word(邦題:時間と言葉)

6thアルバム「Tales from Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」の収録曲
6. Ritual (Nous Sommes Du Soleil)(邦題:儀式)

7thアルバム「Relayer」の収録曲
4. The Gates Of Delirium(邦題:錯乱の扉)

8thアルバム「Going For The One(邦題:究極)」の収録曲
3. Going For The One(邦題:究極)
1. Parallels(邦題:パラレルは宝)
7. Wonderous Stories(邦題:不思議なお話を)

アルバム「Going For The One」からの選曲が多いですね。個人的には、同時期に、楽曲「Awaken」(アルバム「Going For The One」収録)や楽曲「Sound Chaser」(アルバム「Relayer」収録)を聴いてみたかったです。

このアルバムを聴き、YESのサウンド・メイキングを好きになった方は、ぜひスタジオ・アルバムや、ライブ・アルバムとして前作にあたる「Yessongs」を聴くこともおすすめします。

また、筆者と同様に、楽曲「Awaken」と楽曲「Sound Chaser」のライブ音源を聴きたい!、また、1stアルバムや2ndアルバムの楽曲のライブ音源も聴きたい!と云うお気持ちのある方は、後年、2005年発表のアライブ・アーカイブ集「The Word Is Live」をおすすめいたします。YESがデビュー当初の1970年前後から1988年前後までの幅広い時期にわたる未発表ライブ音源が公式発売されていますので、おすすめです。

ただ、楽曲「Awaken」はスタジオ音源発表当時のライブ音源を・・・聴いてみたい。

そんな、プログレな気持ち。みなさんはいかがですか?

アルバム「Yesshows」のおすすめ曲

1曲目は、6曲目「Ritual (Nous Sommes Du Soleil)」
長尺の楽曲が多いアルバムとのイメージに、冗長過ぎる、緊張感が不足と云われ、それでも十分に名作のアルバム「Tales from Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」の楽曲が、まだメンバーの若かりし頃のアンサンブルで、Patrick Morazのプレイも聴ける点が素敵です。

2曲目は、4曲目「The Gates Of Delirium」
当初、Patrick Morazのキーボードのプレイを聴きたいことをきっかけに当アルバムを購入したのですが、そのPatrick Morazのプレイも然ることながら、各メンバーのテクニカルさ、スキルフルさが十分に伝わるアンサンブルに舌を巻かずにいられません。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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