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プログレおすすめ:The Mute Gods「Do Nothing Till You Hear from Me」(2016年イギリス)


The Mute Gods -「Do Nothing Till You Hear from Me」

君を裏切ってはいないから!

つい、1989年のアメリカ映画「The Fabulous Baker Boys(邦題:恋のゆくえ)」でThe Duke Ellington Orchestraによる挿入歌「Do Nothin’ Till You Hear from Me」を想い出してしまうアルバムタイトル・・・。女優:Michelle Pfeifferが女性シンガーとしてピアノ・デュオとの活動や恋愛に揺れる、音楽を題材にした映画を観返してしまいます。

第264回目おすすめアルバムは、イギリスのクロスオーバー系のロック・バンド:The Mute Godsが2016年1月22日に発表した1stアルバム「Do Nothing Till You Hear from Me」をご紹介します。
The Mute Gods「Do Nothing Till You Hear from Me」
The Mute Godsは、Nick Beggs(ベース、ギター、キーボード、ボーカル)、Roger King(キーボード、ギター、プログラミング)、Marco Minnemann(ドラム、ギター、プログラミング)のトリオ編成で結成されたバンドです。

それぞれがかなりのキャリアの持ち主として知られ、「Steve Hackett Band」の一員としてのNick BeggsとMarco Minnemann、Steven Wilsinの2013年発表の名作「The Raven That Refused To Sing (and other stories)」、2015年発表の「Hand. Cannot. Erase.」の制作に関わったNick BeggsとMarco Minnemannなど、その経験値やテクニカルさは折り紙付きといっていいでしょう。

個人的には、1980年代のニューウェーブを一世風靡したKajagoogooの1990年代のリユニオン・メンバーだったNick Beggs、イタリアのプログレッシブ・バンド:Syndoneの2014年発表のアルバム「Odysseas」にゲスト参加していたMarco Minnemannというのが嬉しいところですね。

当アルバム「Do Nothing Till You Hear from Me」のゲスト・ミュージシャンとして、Nick Beggsの若干16歳の愛娘:Lula Beggs(ボーカル)をはじめとし、ギリシャ人のFrank van Bogaert(キーボード、ボーカル)、ポップシンガー:Kim Wildeの兄弟として知られるRick Wilde(ボーカル、キーボード)、Steve Hackett BandのGary O’Toole(ドラム)、Miles DavisやGrover Washington Jr.などジャズ系のミュージシャンのアルバム制作に参加し、Steven Wilsinの近年のアルバムにゲスト参加もしているAdam Holzman(キーボード)や、ここ数年の英国プログレで名を馳せるMagentaのRob Reed(ギター、キーボード)、Big Big TrainのNick D’Virgilio(ドラム)など、錚々たるメンバーが制作に参加しています。

その制作メンバーらが織りなす音楽は、ダークな様相を描き出すシンフォニック系なアンサンブルから、驚くほどまでにポップでメロディアスな楽曲など、ここ2010年以降のジャンルの垣根を括ることが出来ないプログレッシブ・ロックの幅広さを見受けられ、とりわけ、Steve HackettやSteve Wilsonとのクリエイティブな音楽の影響が濃厚に表現されているのではないかと思われます。

モダンでロマンチシズム溢れるプログレッシブなサウンドに溢れたアルバムです。

楽曲について

テレビのノイジーな放送をイメージさせるSEからプログラミングされたミニマルなサウンドで幕を上げる冒頭曲1「Do Nothing Till You Hear From Me」は、インストルメンタル部でのキーボードとプログラミングによるサウンド・メイキングがスペーシ―さを感じさせるために、タイトなリズムとエッジが効いたギターのリフがロッキング・ドライビングするヴァースから、メロディアスなサビ部へと雪崩込むも含め、アルバムのオープニングに相応しい華やかさを強く感じずにいられません。

2「Praying To a Mute God」は、1「Do Nothing Till You Hear From Me」よりもエッジの効いたギターを抑え、キーボドをメインにしたサウンドですが、サビ部直前のギターのオブリガードによるリフがアクセントに、展開される口ずさんでしまいたくなるサビ部が印象的な楽曲です。ギター・ソロ前後での、約2分35秒前後と約3分前後のミドル部の2箇所による楽曲の構成にも耳を奪われがちですが、3分15秒前後からのパーカッシブさ、ギターのエッジが効いたリフ、サウンド・アブストラクトと交錯するギターのフレーズなど、プログレッシブな展開が堪能出来ます。そして、楽曲のオープニングとヴァース、そして、クロージングを包み込むようなキーボードの旋律のロマンチシズムさが、静と動と異なり、穏やかさと不穏さをコントラストに描いていると思えてなりません。

3「Nightschool For Idiots」は、Kajagoogooに代表される1980年代のニューウェーブの唄メロのメロディラインがオープニングからクロージングまで溢れています。当アルバムの中でもNick Beggsのピースフルなボーカリゼーションが最も発揮され、コマーシャリズムさも溢れ、リラクゼーション・アルバムのコンピに入ってもおかしくなく、プログレッシブ・ロックと云うことは忘れてしまいそうになります。1「Do Nothing Till You Hear From Me」と2「Praying To a Mute God」と続いて、当楽曲に辿りつくと、何故か安堵し聴き入ってしまいますし。

一転し、ギターとキーボードがドライビングする4「Feed The Troll」は、同国プログレッシブ・バンドのPorcupine Treeのハードな面とサウンド・オブストラクトを彷彿とさせる楽曲です。さらに、King Crimsonのヘビィでダークな面を彷彿とさせるギターとパーカッシブで強烈なドラム、ループするシンセサイザーやオルガンの旋律などが印象的な5「Your Dark Ideas」、エッジの効いたギターとキーボードのアンサンブルがオリエンタルなムードを讃え、ヘビーに迫るインストルメンタルな楽曲6「In The Crosshairs」など、立て続けにヘビーな楽曲が続きます。

7「Strange Relationship」は、楽曲タイトルの「Strange」を表現するかのように、ジャージなリズムで幕を上げ、アトモスフェリックさを際立ち、シリアスな展開の楽曲です。Gary O’Tooleのシンバルワークと、Frank van Bogaertのピアノの旋律があまりにも強烈にも耳に残り、ミステリアスさを醸し出すアトモスフェリックさに包まれ、メランコリックなメロディラインの唄メロにも、不思議と哀しみさが滲み出てきそうなアウトロのハーモニーが涙ぐみそうになります。

8「Swimming Horses」は、7「Strange Relationship」に続きミステリアスなオープニングですが、1分前後やクロージング直前での高フレットまで幅広いフレージングをこなすランニングするベースライン、絶望にあてがうように唄い上げるNick Beggsのボーカリゼーションなどとともに、特に、Rob Reed、Belgian van Bogaert、Nick Beggsのそれぞれの個性を活かしたような様々な音色とフレーズのキーボード・プレイが壮絶に聴きどころが多い、プログレッシブな展開を魅せる約7分にも及ぶ大作です。

最終曲9「Father Daughter」は、アルバム中盤のエッジが効いたギターやヘビーなサウンドよりも、プログラミングされたエレクトロニクスで浮遊感に包まれたバラードの楽曲です。Nick Beggsが愛娘:Lula Beggsとのデュエットが聴かれる微笑ましさがあるのと、どことなく懐かしきDuran Duran、Naked Eyes、Roxetteなど、1980年代のニューウェーブやロマンチックムーブメントのスローバラードで感じさせるメランコリックさやロマンチシズムさに溢れています。

アルバム全篇、特に、プログレッシブ・ロックとしてだけで語られるには埋もれて欲しくない3「Nightschool For Idiots」のピースフルさや、つい口ずさみなくなるような唄メロのメロディラインを持つ楽曲に代表される素晴らしきソングライティングを感じるだけでなく、ハードさやヘビーさを伴うアンサンブルに、エレクトロを活かしたミステリアスさを漂わすアトモスフェリックなサウンド・メイキング、プログレッシブ・ロックな展開が全開の楽曲まで、幅広くクリエイティブが聴ける素敵なアルバムです。

[収録曲]

1. Do Nothing Till You Hear From Me
2. Praying To a Mute God
3. Nightschool For Idiots
4. Feed The Troll
5. Your Dark Ideas
6. In The Crosshairs
7. Strange Relationship
8. Swimming Horses
9. Father Daughter

プログレッシブ・ロックとしては、サウンドではSteve HackettやSteve Wilsonを聴く方に、唄メロのメロディラインとしては、1980年代のニューウェーブ系を聴く方におすすめです。特に、近年のSteven Wilsinの2013年発表の名作「The Raven That Refused To Sing (and other stories)」、2015年発表の「Hand. Cannot. Erase.」を聴く方にはぜひ聴いて欲しいアルバムと思います。

アルバム「Do Nothing Till You Hear from Me」のおすすめ曲

1曲目は、8「Swimming Horses」
ベース・ライン、楽曲の展開など、聴きどころが多いのですが、とりわけ、当アルバムに参加するキーボード・プレイヤーによる様々な音色のキーボード・プレイは、楽曲の随所に旋律として散りばめられており、いずれもテクニカルさやスキルフルさに溢れ、流麗でいて耳に残ってしまいます。

2曲目は、「Strange Relationship」
唄メロのなかで、アウトロで聴かれるハーモニーが効いたコーラスワークは、楽曲のメロディラインでは一部にしかすぎませんが、それまでのミステリアスな展開の世界観で感じる心地と比べ、ふと涙ぐましくなってしまう展開が印象過ぎてなりません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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