プログレおすすめ:Genesis「From Genesis To Revelation(邦題:創世記)」(1969年イギリス)
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最終更新日:2015/12/23
1960年代, GENESIS(5大プログレ), イギリス, メロトロン Anthony Phillips, Genesis, Mike Rutherford, Peter Gabriel, Tony Banks
Genesis -「From Genesis To Revelation(邦題:創世記)」
第78回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Genesisが1969年に発表した1stアルバム「From Genesis To Revelation(邦題:創世記)」をご紹介します。
俗に云うイギリスの5大プログレバンドのうちの1つ:GENESISの1stアルバムですが、一聴した印象では、まだプログレッシブ・ロックを意識したサウンド作りをしていなかったのではないかと思われます。デビュー当時からプログレッシブな展開を行っていたKing CrimsonやEmerson, Lake & Palmerと異なり、また、サイケデリック/スペース系の濃いPink Floydよりも、アートロック系のYesの1stアルバム制作のアプローチに近いかもしれません。
といっても、Genesisはどちらかというとヒットシングル「First of May(邦題:若葉のころ)」の代表される当時の同国のバンド:Bee Geesを意識したフォーク寄りのソフトロックを嗜好しアルバム制作をしていたと云われています。個人的には、さらに1960年代のKinksのモッズなどや英国POPSなフィーリングも感じれるのではないかと思います。
全体のサウンドから与える印象はプログレへ変貌する過程は感じられないかもしれません。
1stアルバムにして、Peter Gabriel(ボーカル)、Tony Banks(キーボード)、Anthony Phillips(ギター)、Mike Rutherford(ベース・ギター)、Jonathan Silver(ドラム)という5人により制作され、既にプログレ変貌後の重要なメンバーが連ねています。たった1日で制作してしまった事実がサウンドにも溢れています。全体的に、エコー処理がされて浮遊さ感じとれ、仄かにアートロック系のあるソフトロックのアルバムではないでしょうか。
長尺な楽曲もないからといって、プログレッシブなエッセンスがないと否定なんて出来ないんです。
1つ目は楽器利用の多彩さです。当アルバムの時点で、Peter Gabrielはフルート、アコーディオン、タンバリンという楽器群を利用し、Tony Banksはメロトロン、そのTony Banks、Anthony Phillips、Mike Rutherfordは12弦ギターを弾いてもいます。各楽器が織りなすフレーズには2ndアルバム「Trespass(邦題:侵入)」以降の楽曲で魅せる「らしさ」がちらほら垣間見せるんです。ほんの僅かですが、そのフレーズに触れた瞬間のカタルシスはGenesisファンであれば生唾ものでしょう。
2つ目は唄メロです。まだ抒情的な「The Fountain Of Salmacis」(3rdアルバム「Nursery Cryme」収録曲)や気品溢れる「Dancing With The Moonit Knight」(5thアルバム「SELLING ENGLAND BY THE POUND」収録曲)のような明確なメロディライン、心に残るようなフックはありませんが、それでもちらほらとらしさ溢れる唄メロに聴き入ってしまうんです。
楽曲について
意表をつくフィンガースナップ(指ぱっちん)とジャージなピアノのフレーズではじまる冒頭曲1「Where the Sour Turns to Sweet」には、本当にプログレッシブ・ロックは意識していないだろうと感じます。そして唄メロはピアノを主体としたアンサンブルに、ブラスセクションが彩る楽曲です。冒頭でも引用したBee Geesやフォーク寄りのサウンド感と捉えられます。なんといっても、この楽曲でGenesisの歴史がはじまったことには間違いないから、聴き手の自分にとっては、当アルバムへ導入部としては十分なんです。
2「In the Beginning」、4「The Serpent」、7「The Conqueror」などに、1960年代のモッズ系のベースラインがフックに感じれますが、ほぼどの楽曲もピアノやギターを主体です。特に、3「Fireside Song」、8「In Hiding」、10「Window」、13「A Place to Call My Own」はソフトタッチで優しげなPeter Gabrielのボーカリゼーションによる唄メロ重視を感じれます。
そして、それらの楽曲に交じり、6「In The Wilderness」の冒頭の唄メロにはシアトリカルさ、5「Am I Very Wrong?」の物憂げでマイナーな唄メロやオルガンによるリフ、2「In the Beginning」のささくれだったギターのフレーズなど、2ndアルバム「Trespass(邦題:侵入)」以降に想いを馳せてしまう楽曲が聴けます。それでも、アルバム全体ではあくまでソフトロック寄りの楽曲構成ではあるのですが・・・。
アルバム発売当時はあまり売れなかったらしいのですが、ほぼメンバーが当時18歳でこのようなアルバムを制作したことを後に気が付きました。その後に2ndアルバム以降の制作時期も考えながら、ルーツ探求だけには留まらない素晴らしいアルバムと思いましたよ。
[収録曲]
1. Where the Sour Turns to Sweet(邦題:なみだが蜜に変わるとき)
2. In the Beginning(邦題:天地創造は今)
3. Fireside Song(邦題:暖炉のそばで)
4. The Serpent(邦題:エデンの蛇)
5. Am I Very Wrong?(邦題:僕はいけないことを?)
6. In the Wilderness(邦題:荒野に呼ばわる声)
7. The Conqueror(邦題:孤独の征服者)
8. In Hiding(邦題:私一人の自由)
9. One Day(邦題:その日のために夢を持とう)
10. Window(邦題:心の窓に見えるものは)
11. In Limbo(邦題:ここは中途半端)
12. Silent Sun(邦題:死せる太陽)
13. A Place to Call My Own(邦題:安息の地)
[BONUS TRACK]
14. The Silent Sun(Single Version)(邦題:死せる太陽)
15. That’s Me(邦題:孤独の影)
16. A Winter’s Tale(邦題:冬の物語)
17. One Eyed Hound(邦題:片眼の猟犬)
当アルバムは、はじめてプログレッシブ・ロックに触れるためにアルバムを選ぶという観点ではおすすめいたしません。
プログレッシブなバンドへ変貌前のバンド黎明期に於いて、クリエイティブ性をどこへ目指していたかを感じ取るといった観点で聴ける方におすすめです。
もちろんGenesisの既にファンであり、Genesisの全アルバムを聴き、そのGenesisと云うバンドの音楽の出発点を感じたいという方にはマストアイテムと思います。
ここからはじまる
Genesisだけでなく、当レビューでも取り上げている冒頭でも触れたYes、Pink Floydやドイツのクラウトロック:Ash La TempelやKhanなど、サイケデリック/スペース系、アートロック系、フォーク系な楽曲をメインにしたアルバムを発売し、場合によってはそのイメージが先行する中で、後年プログレッシブなバンドへ変貌するバンドも多くあると思います。さらに1980年代、1990年代、2000年代、2010年代と経て、プログレッシブ・ロックのジャンルは細かく派生し、プログレッシブなバンドへ変貌する過程も様々な様相をみせています。変貌前がとっつきにくさがあり、聴き手にとって心に受け入れぬこともあるかもしれません。
それでも少なくとも「ここから」このバンドははじまったと感じ得たいんです。バンドのルーツを探求するという観点で聴くことで、素晴らしい音楽、自分しか感じ得ないエッセンスに出逢う可能性もあるからです!
そんな「プログレな気持ち」。
みなさんはいかがですか?
アルバム「From Genesis To Revelation」のおすすめ曲
1曲目は、5曲目の「Am I Very Wrong?」
物憂げな唄メロの合間に流れるTony Banksのオルガンによるリフの音色を耳をすれば、当時のサイケデリック/スペース系のサウンドが感じ取れます。個人的に、例えば元Betlesのメンバーで故George Harrisonが同名映画「Wonderwall」のサウンドトラックを発表していますが、その映画テーマ曲を想起してしまいます。ただ、その観点を抜きにしても、物憂げなヴァースからメロディラインが拡がるサビでもマイナースケールを意識しているのが印象的であり、なかなか独特と思うからです。
2曲目は、9曲目の「One Day」
ソフトロックやフォーク寄りのアルバムの中で、イントロのギターのフレーズに1980年代のネオアコブームさを先取りしたとした感覚や、当アルバムでももっともGenesisさのある気品のある唄メロなどを十分に感じるからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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