プログレおすすめ:After…「Hideout」(2009年ポーランド)
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2000年代, ポーランド, メロディック・ロック After...
After… -「Hideout」
第284回目おすすめアルバムは、ポーランドのプログレッシブ・ロックにクロス・オーヴァーしたバンド:After…が2008年に発表した2ndアルバム「Hideout」をご紹介します。
After…は、2002年に、Czarek Bregier(ギター)とWojtek Tyminski(ギター)のギター奏者2名に、Sylwia Wojciechowska(ボーカル)、Mariusz Ziolkowski(ベース)、Radek Wieckowski(ドラム)らによって結成されたバンドです。さらにTomek Wisniewski(キーボード)が加わることで、Afterはリハーサルを重ね、楽曲の制作に着手します。
2005年に、ポーランドのOSKARレーベルと契約したことをきっかけに、ボーカリストがSylwia Wojciechowskaから新たにKrzysiek Drogowskiへと変わります。その後は、1stアルバムの発表に向けて急ピッチで制作が進行し、イギリスのプログレッシブ・バンド:Camelの1979年以降の中心人物の1人でもあるColin Bassがベースで、同国のSBBのJosef Skrzekがキーボードで、QuidamのJacek Zasadaがフルートで、ゲスト参加し、同年に、1stアルバム「Lunatic Endless」として発表しています。
After…の音楽の特徴は、時としてエッジを効かせ、時としてメランコリックに響かせるギター奏者によるギター・サウンドの印象が強くも、1980年代前後のポーランドを一世風靡したネオ・プログレ系(Collage、Satellite、Milleniumなど)に近いほの暗くメランコリックなサウンド・メイキングやメロディアスなメロディラインがイメージしやすいかもしれません。また、1stアルバムでのゲスト・ミュージシャンからイメージするサウンド・メイキングにアトモスフェリックさに同国のプログレッシブ・ロックバンドの初期Quidamを感じさせてくれます。
当アルバム「Hideout」は、1stアルバムから3年の月日が経ち、バンドのフル・メンバーのみで制作し2008年に発表されてます。楽曲「Between Shadows」(1stアルバム収録)などで魅せたようなAfterならではのギターのフレーズやボーカルの唄メロのメロディラインは活きつつも、
薄暗くも1stアルバムをよりスケールアップしたヘビィさやメロウなアンサンブルが際立つドラマチックなアルバムです。
楽曲について
ヘビーなドラムに、ディスト―ションの効いたギターのリフレインされるフレーズとディレイの効いたギターのフレーズがメリハリを効かせつつも浮遊さを醸し出し、追尾するベース・プレイにも導かれ幕を上げる冒頭曲1「Hillside of Dreams」は、55秒前後からのディスト―ション・ギターのリフが印象的なミディアム楽曲です。このギターのリフがクロージングまで終始印象的な顔を出し、ミステリアスな唄メロのメロディラインと交錯し合いヘビィなアンサンブルを聴かせてくれます。2分前後からはうねるベース・ラインに、キーボードが程良くアトモスフェリックさで重ね、徐々にギターがアンサンブルに加わり、再度サビが繰り替えされます。余韻を残すバンド・サウンドにキーボードの特徴的なフレーズがこだましクロージングを迎えます。
確かに1stアルバムからヘビィでドラマチックさ溢れる。
2「Fingers」は、パーカッションのように浮遊さも感じさせるピアノではじまり、クリーン・トーンによるギターとともアトモスフェリックさあるサウンド・メイキングでアンサンブルが進行します。徐々に力強くも盛り上がるを魅せるアンサンブルとメランコリックな唄メロのメロディラインによる印象的なサビは、3分45秒前後からヘビィなギターのリフとともに曲調は一転していきます。ボーカリゼーションもやや硬質にもスクリーム寸前の情感こもったボーカリゼーションへと変貌し、そのまま次曲へと繋がります。
3「Senses Confuse Reality」は、特にドラムのキックが強く、ギター、ベース、ドラムによる力強いアンサンブルがマイナーなトーンを押し殺すかのような印象の楽曲です。1分前後からの唄メロの合間を埋め尽くす印象的にうねるベース・ライン、ヴァースでほのかに醸し出すキーボードのプレイの妙、そして、前曲2「Fingers」後半で魅せた情感こもったボーカリゼーションのパートなど、1stアルバムよりも薄暗くもメランコリックで、それでいてヘビィなドラスティックさとドラマチックさがあるAfter…らしさが溢れてます。
4「Waiting For」もまた、野太い音色のベース・ラインにクリーン・トーンからディスト―ションへ繋げるギターとのメランコリックな前半部のアンサンブルとヘビーな中間部のアンサンブルが聴けます。特に、2分15秒から3分前後までの一定のフレーズを繰り返すギターのフレーズのパートに心は安堵させられ、そのまま、3分前後からのボーカル・パートへとつながるクリエイティブさ、5分30秒前後からの前半部のアンサンブルに戻るさまなどが印象的です。
アルバムタイトル曲5「Hideout」は、拡声器を通じたボーカリゼーションからヘビーなギターで幕を上げ、やはりうねるベース・ラインに、変拍子のドラムによるキック、浮遊さを醸し出すクリーン・トーンによるアンサンブルのヴァースとヘビーなギターと拡声器を通じたボーカリゼーションによるアンサンブルのパートがコントラストを成してます。短いながらも2分35秒前後からの哀愁を帯びたギター・ソロのフレーズは、After…らしさが溢れ、そのままアコースティック・ギターをメインとしたメランコリックなボーカルによるアンサンブルへと繋がる展開がたまりません。4分16秒前後からは、ギターの厚みのあるリフがメインのアンサンブルに、5分前後からのアタックの強いベース・ライン、ワウを効かせたギターのフレーズも交え、シンセがギター・ソロからバトンタッチしたかのように長めのソロを続けクロージングを迎えます。
6「Healing Our Sorrows」は、クリーン・トーンのギターのフレーズ、ピアノの流麗なタッチ、うねるベース・ラインが醸し出す浮遊さやアトモスフェリックなパートで幕を上げます。ギターのリフでブレイクし、オープニングのアンサンブルによるヴァースは、楽曲タイトルの和訳「悲しみを癒す」かのようなイメージです。前曲までに垣間見たヘビーなアンサンブルは、3分15秒前後からのシンセ・ソロも、3分35秒前後からのギター・ソロも含め、当楽曲6では、このオープニングのアンサンブルを活かすかのようにアンサンブルに溶け込ませているかのように思えてなりません。
ディレイを効かせたギターのフレーズに、ディスト―ションかかったギターが伸びやかにソロを奏でる変拍子楽曲7「Fly On」は、徐々に情感を発散させるかのようにクロージングまで迎えるインストメンタル楽曲です。当アルバムが同国ポーランドのQuidamと同じプロデューサーによる制作された事実がオープニングとクロージングで感じられれば、東欧系のプログレッシブ・ロックを好きな方にはニンマリしてしまうかもしれません。
一転して8「Reflecting Me」は、変拍子が織りなしながらも3「Senses Confuse Reality」と同様にハードさとミステリアスさが共存した印象の楽曲です。個人的には、前曲7「Fly On」の冒頭部のギターのエッジさが脳裏を離れぬまま、カタチをかえてヘビーなボーカル楽曲へと変貌したかのようなクリエイティブさを感じてしまいます。2分30秒前後からのベース・ライン、フレーズを行き交う摩擦ささえ溢れんばかりにアトモスフェリックさを漂わせ、そのベース・ラインに導かれたギターはヘビーなリフをリフを繰り返します。そして、3分50秒前後からはトーンを変えた哀愁さも感じさせるギター・リフ、そして、キーボード・ソロが続きます。クロージングは、リフレインされるギターのフレーズに、ディスト―ション・ギター、ドラム、キーボードが交錯し合いフェードアウトしていきます。
9「Looking for Each Other」は、当楽曲だけを聴いてしまえば、アンサンブルが力強さや静と動のメリハリよりもドラマチックさを感じさせてくれる楽曲です。6「Healing Our Sorrows」での流麗でリリカルなピアノ・プレイと同様に、楽曲「Between Shadows」(1stアルバム収録)を彷彿とさせるメランコリックな唄メロのメロディラインが素敵な楽曲です。冒頭部から50秒前後までのドラムのクローズとピアノ、音数を落としたベース・ラインのアンサンブルによるヴァース、1分前後からのクリーン・トーンによるギター・ストロークも加わり、より拡がりを魅せるアンサンブルを聴かせてくれます。2分前後からのリリックなフレーズのピアノ・プレイ、2分50秒前後のサティスーンを効かせたギター・ソロ、3分20秒前後のボーカルとコーラスが織りなす「Looking for Each Other」のパート、4分前後のシンセ・ソロ、5分前後のハーモニーによるコーラスなど、各楽器やコーラスに聞かせどころが満載です。
最終曲10「The End」は、約11分40秒にも及ぶ長尺曲です。野太くもゴリゴリとしたうねるベース・ラインに、ヘビーなギターのリフのパートとクリーン・トーンのギターのパートによるアンサンブルは、ギター・ソロに続く5分40秒前後からのシンセ・ソロ、7分20秒前後からの無機質なサウンドに導かれアコースティック・ギターのフレーズとともにナレーションなどをアクセントに、前曲9「Looking for Each Other」を忘れるか如く、当アルバムを埋め尽くす薄暗くも儚さにも満ちたサウンド・メイキングに満ちています。ナレーションが途絶えるとともに、アンサンブルから解き放たれるかのようにこだまするシンセのフレーズに導かれ、アルバムの最後に相応しくもギター・ソロが響き渡り、最後はアコースティックなギターの一定のフレーズと無機質なシンセのフレーズとともにクロージングを迎えます。
アルバム全篇、前後する前作1stアルバム「Lunatic Endless」や2011年発表の次作3rdアルバム「No Attachiment」に挟まれ、前作よりもスケールアップしたクリエイティブさと、個人的には次作で薄れてしまうクリエイティブさと云う点で、薄暗さ、メランコリックさ、メロディアスさ、ミステリアスさに、ヘビーなサウンドがダイナミックにも彩るアルバムと思います。
[収録曲]
1. Hillside of Dreams
2. Fingers
3. Senses Confuse Reality
4. Waiting For
5. Hideout
6. Healing Our Sorrows
7. Fly On
8. Reflecting Me
9. Looking for Each Other
10. The End
薄暗さ、メランコリックさ、メロディアスさ、ミステリアスさに、ギター、ベース、ドラムによるヘビーさを加え、そして、浮遊さやアトモスフェリックも醸し出すアンサンブルなどをキーワードに、プログレッシブ・ロックを聴いてみたい方におすすめです。
また、1980年代から1990年代にかけての男性ボーカルでポーランドのネオ・プログレ系のプログレッシブ・バンドやクロスオーヴァー系のバンド(Collage、Believe、Satellite、Millenium、Moonriseなど)が好きな方や、2010年以降でも、The AdekaemやArlonなど、ポーランド系のプログレッシブ・ロックバンドを好きな方にはいちど耳にして欲しいバンドですね。
アルバム「Hideout」のおすすめ曲
1曲目は9曲目「Looking For Each Other」
歌詞など知らずに、アルバムに耳を傾ければ、当アルバムで唯一開けた明瞭ささえ感じてしまいます。それは、いちどアルバムを聴き終えて、次曲10「The End」で立ちかえる薄暗さを知りながらも、より一層感じてしまうんです。
2曲目は5曲目「Healing Our Sorrows」
ヘビーなギターによるサウンド・メイキングがありながらも、明瞭さや救いよりも、インストルメンタル部だけでなく、楽曲を通じて大半で聴かれる流麗でリリカルなピアノのプレイが印象的な楽曲です。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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