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プログレおすすめ:IOEarth「New World」(2015年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/30 2015年, イギリス, ヴァイオリン, シンフォニック, 女性ボーカル


IOEarth -「New World」

第145回目おすすめアルバムは、イギリスのクロスオーヴァー系のプログレッシブ・のバンド:IOEarthが2015年5月に発表した3rdアルバム「New World」をご紹介します。
IOEarth「New World」
IOEarthは、イギリスはバーミンガム出身のDave CuretonとAdam Goughを中心とするプロジェクト・バンドです。幼少の頃から二人は仲が良く、Frank Zappaの音楽にも影響を受けたのをはじめ、カンタベリー系、ポップス、クラシック、ジャズなど、様々なジャンルに触れてます。バンド初期では、たとえばSteve VaiやJoe Satrianiのようにギターをメインにロックの演奏スタイルをしながらも、彼ら独自のサウンド・メイキングを模索していきます。そして、2004年に最初のアルバム制作に取り掛かり、2009年に同名1stアルバム「IOEarth」を発表します。

当アルバムは、2012年発表の2ndアルバム「Moments」に続く3枚目のアルバムで、Dave Cureton(ギター兼ボーカル)、Adam Gough(ギター、キーボード、テルミン)をはじめとし、Christian Nokes(ベース)、Christian Jerromes(ドラム)の基本構成に、Luke Shingler(ソプラノ・サックス、テナー・サックス)とJez King(ヴァイオリン、ギター)の管弦楽器奏者と、女性ボーカル:Linda Odinsenによる7人編成で制作されています。また、Frank ZappaグループのEd Mannがパーカッションでゲスト参加しています。

IOEarthの音楽の特徴は、楽曲1つ1つが恋愛映画のサウンドトラックやリラクゼーションを彷彿する音を構築する点です。聴き手は、その音に脳裏に映像を思い浮かべるか如くサウンドスケープをし、まるでストーリー性を感じることがあるかもしれません。時に穏やかでメロウに、時に激しくエッジを効かせるサウンド・メイキングも合い間って、プログレッシブ・ロック的な解釈にクロスオーヴァーしたサウンドのクリエイティビティととらえます。

優美さを感じさせる女性ボーカルや管弦楽器が色を添える各楽曲は力強さも兼ね備え、華やかにドラマチックな展開に魅了させてくれる2枚組アルバムです。

楽曲について

ディスク1枚目の冒頭曲「Move As One」は嵐を想起させるSEから、徐々に声量をあげていくLinda Odinsenのアカペラで幕を上げる印象的な楽曲です。Linda Odinsenの凛とした伸びやかなボーカリゼーションは、同国イギリスのプログレッシブ・バンド:Magendaの女性ボーカル:Christinaとは異なるトーンを感じさせてくれます。1分10分前後からのヴァースに合わせて、リリカルなピアノ、ヴァイオリンが続けざまに加わり、クラシカルさあるアンサンブルに、しっとりと楽曲は展開していきます。

冒頭曲「Move As One」のようにしっとりした楽曲は、5「Morning」ぐらいであり、インストルメンタルのディスク1枚目の2「Redemption」と6「Collision」、ディスク2枚目の3「The Rising」や、ロック然としてリフのディスク1枚目の2「Redemption
」、2枚目の5「Colours」と男性ボーカルによるスクリーム的な14「Follow」など、アルバムの中ではアクセントとして位置付けと捉えて聴けば、他楽曲は、Linda Odinsenのボーカリゼーションを活かしながらも、SEやコーラスワーク、管弦楽器を交え、幻想さ、ミステリアルさ、アンニュイさなど、多種多様なアプローチで、映像美を感じさせてくれるドラマチックな楽曲構成で聴かせてくれます。

ディスク1枚目では、特に、アンニュイさ溢れるメロディラインに、ヴァイオリンが花を添えるか如く展開し、サックスのパートも交える4「Trance」のロマンチシズムさに、ディスク2枚目では、オペラチックな展開のパートを含む1「Insomnia」、フランジングされたギターのリフのパートが「煙」を想起させる2「Red Smoke」、優雅に奏でられるサックスのパートを含む3「The Rising」などが印象的です。

そう、最終曲「New World」がアルバムのクロージングに位置する楽曲にも関わらず、アルバムの1楽曲にしか過ぎない印象を与えるかのように、アルバム全篇16曲とも、ハイライトと呼ぶべき、聴き応えある素敵なアルバムと思いました。

[収録曲]

[Disc 1]
1. Move As One
2. Redemption
3. Journey To discovery
4. Trance
5. Morning
6. Collision
7. Fade To Grey
8. New World Suite

[Disc 2]
1. Insomnia
2. Red Smoke
3. The Rising
4. Body And Soul
5. Colours
6. Follow
7. Dreams
8. New World

同国イギリスのプログレッシブ・バンド:Magentaに代表される女性ボーカルをメインとしたプログレッシブ・ロックを聴きたい方におすすめです。

声質的にも憂いよりも優美さや凛としたトーンが活きており、サックスやヴァイオリンを交え、ドラマチックな楽曲の展開となるシンフォニック系のプログレッシブ・ロックを聴く方にもおすすめです。

アルバム「New World」のおすすめ曲

1曲目は、ディスク1枚目の「Fade To Grey」
アコースティック・ギターのストロークとリリカルなピアノによるアンサンブルに、オーケストラ・ヒットのようにアクセントを刻むギター、ベース、ドラムによる演奏と、Linda Odinsenのスキャットを多用したボーカリゼーション、テナー・サックスとギターのソロ・フレーズが織りなす「音像」には、楽曲タイトルの「Grey(=灰)」へと次第に染まっていく喪失さをサウンド・スケープさせてくれるからです。Linda Odinsenによる「fading to grey, paving the way(=灰色にかすみかけ、染まりはじめるように)」とも取れる、どことなく淡さ溢れるモチーフに刹那さを感じずにいられません。次曲「New World Suite」がタイトルから想起させるポジティブさとは相反する想いを感じずにいられません。

2曲目は、ディスク1枚目の冒頭曲の「Move As One」
アカペラで唄われる前半部と、ピアノとヴァイオリンがメインによるアンサンブルのヴァースの後半部は、当アルバムの導入部にして、素敵に聴かせてくれるからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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